「絶対にお前を潰してやる」。一連の個人情報漏えい事件の端緒となった愛知県警警部(48)への脅迫事件で、逮捕された風俗グループの実質経営者、佐藤義徳容疑者(55)らは電話でこう「宣戦布告」したという。佐藤容疑者は当時、県警の捜査などで指定暴力団山口組弘道会との関係が取りざたされて自宅の新築計画が中止に追い込まれており、県警は警部への逆恨みも動機につながったとみて、詳しい経緯を調べている。
佐藤容疑者は08年8月、名古屋市名東区に自宅新築の名目で土地を購入した。だが、近隣住民が「暴力団事務所になる恐れがある」などと反対運動を展開したため、建設会社は10年5月に同容疑者に建設契約の解除を申し入れ、新築計画は中止に追い込まれた。
県警によると、佐藤容疑者は騒動の中で、今回脅迫した警部が建設会社の事情聴取などをしていたことを知り、自身と弘道会との関係の捜査から手を引かせる目的もあり、事件を計画したとみている。警部の弱みを握るため、当時、風俗グループの会社役員で探偵業もしていた青木公司容疑者(42)に個人情報の入手を指示したという。
青木容疑者は同年6月に同市北区の探偵会社を介して、警部の携帯電話の契約情報から住所などを不正に入手し、さらに別の探偵会社に依頼して、住所から住民票を不正取得し家族構成などを割り出していたとされる。
県警によると、佐藤容疑者は不動産業などを経て、92年ごろから風俗業を展開し、グループは全国約20店に上る。11年には暴力団員の利用が禁止されている長野県のゴルフ場で、知人の弘道会ナンバー2の幹部(52)を暴力団とは無関係と偽ってプレーさせたとして、詐欺などの容疑で愛知県警に逮捕され、12年3月に懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を受けた。
当時の公判では「反社会的勢力とは決別する」と風俗業から手を引くと述べていた。しかし県警は現在も佐藤容疑者がグループを実質的に仕切っており、売り上げの一部は弘道会の資金源になっているとみて調べている。
2013年01月06日 09時56分