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日本人犠牲者名、実名公表に賛否 アルジェリア人質事件

 アルジェリアでの人質事件で、日本政府はこれまで伏せてきた日本人犠牲者の氏名を、遺体が帰国する25日に公表する。一方、社員ら10人の死亡が確認されたプラント建設大手「日揮」は、非公表の姿勢を崩していない。識者の間には「事件の検証のためにも公表すべきだ」という声と「非公表」を支持する声がある。

 菅義偉官房長官は24日の記者会見で「政府専用機でご遺体が帰国した後、政府の責任のもとに(犠牲者の氏名を)公表したい」と明らかにした。

 21日夜、「7人死亡」を確認した時点では、日揮が被害者側の意向を考慮して「発表しないでほしい」と強く求めたため、政府は氏名の公表を見送った。

 ただ、政権内では事件の重大性や国民への説明責任を考慮し、氏名を発表すべきだという声が強く、公表の可能性を探ってきた。無事だった7人と、犠牲者の遺体が帰国し、家族や遺族と対面できたタイミングで犠牲者の氏名を公表することにした。

 政府の方針について、日揮広報・IR部の遠藤毅部長は24日の記者会見で「理解している」としつつ、「犠牲者の遺族、関係者に相当数の取材が行われている。これ以上のストレスやプレッシャーをかけたくないという姿勢はまったく変わっていない」と話した。

 日揮本社で取材をしているマスコミ17社はこれまでに、氏名の公表を申し入れているが、同社からの公表はない。遠藤部長は、政府が公表した時点で「何らかのコメントを出す」と言うにとどめた。

 日揮の社員のなかにも「現地社員の安否について社員にも知らされない。知っている社員がどうなっているのか」「会社の説明を聞きたい」と話す人が複数いる。

 ●事件検証のため必要 関係者は報道望まぬ

 今回の事件での氏名公表について、報道と人権などに詳しい梓澤和幸弁護士は「治安の悪い現場で会社側が十分な安全対策を取っていたか検証するために、報道を通じて被害者や遺族の声が公になることが大切」と指摘。政府や会社が被害者らの氏名を公表すべきだと主張する。

 報道機関に過熱取材への自制を求めたうえで、「海外展開する企業の従業員の現状を国民が知り、政府も含めてどう対応すべきか議論する土台の情報を提供してほしい」と求める。

 一方で、ネットでの言説に詳しい瀧本哲史・京都大客員准教授は22日、ツイッターに「実名とか、遺族の悲しみとか、関係者は、報道されたくないだろうし、視聴者も報道して欲しくない」と書いた。取材にも「報道してほしい人は自ら名乗り出ればいい。報道機関が『接触したいので名前を教えてくれ』と求めるのは筋違いではないか」と指摘した。

 田島泰彦・上智大文学部教授(メディア法)は、日揮が氏名の非公表を望む背景に「世間の深いメディア不信がある」と指摘する。遺族の悲嘆や、テロへの批判などを伝えるだけではなく、「アフリカ開発と企業の関係、利益配分の仕組みや格差問題など、事件の構造的な問題を明らかにするには現地で働いていた人たちの情報が大事。そのためにも氏名の公表が必要だ、と世間を納得させる報道が求められる」と注文をつける。

 朝日新聞社は「実名を報じることで人としての尊厳や存在感が伝わり、報道に真実性を担保する重要な手がかりになる」として、事件報道では容疑者、被害者ともに実名での報道を原則にしている。

 ただ、実際に記事にする際には、報じられる人が被る不利益や事件の重大性なども考慮して、最終的に実名にするかを決めている。今回の事件で死亡が確認された10人については、独自取材で判明した氏名を報じることにした。

 朝日新聞東京本社の山中季広社会部長は「今回の事件でも実名報道を原則としつつ、現場では遺族や関係者へ配慮して取材を重ねている。読者からの意見や批判にも耳を傾け、『何が起きていたのか』を掘り起こす作業を悩みながら進めている」と話す。

 ●米・仏は死亡者名のみ公表

 今回の事件では米英仏などの外国人人質も死亡した。犠牲者の氏名は各国でどう扱われているのか。

 米政府は21日、国務省報道官名の声明で、殺害された3人の米国人の氏名のみを公表。声明は犠牲者の家族や友人への深い弔意を示したうえで「家族のプライバシーを尊重し、これ以上のコメントはしない」とし、犠牲者に関する氏名以外の情報は明らかにしなかった。声明は米国人7人が無事だったことも確認したが、「プライバシーを考慮し、情報提供は差し控える」とした。

 6人が死亡したとみられる英国では、外務省の報道担当部署が24日までに4人の氏名と写真を遺族に代わってメールでマスコミに公表した。「悲しみに打ちのめされている。取材は受けたくない」という遺族のメッセージや、「家族思いだった」などとした故人の人となりが書かれている。英国では、大衆紙による強引な取材手法がしばしば問題化。一定の情報を公開することで、遺族に取材が殺到するのを避ける狙いがありそうだ。

 ノルウェーのエネルギー大手スタトイルは20日、消息不明となっている社員5人の氏名、年齢、出身地をウェブサイトで公表した。「家族と当局に相談した結果、公表するのが適切と結論づけた」という。

 一方、仏政府は、人質事件などに自国民が巻き込まれた場合、警察などの治安当局が事実を家族に伝える前に、氏名などを報道機関に公表することはない。今回、ファビウス外相が18日に声明を出し、死亡した1人に限って氏名を公表。解放された3人については「本人や家族の意向を尊重する」(仏外務省)として、今も氏名は伏せたままだ。

 仏外務省の担当者は朝日新聞に対し、「人質の安全や家族の生活に悪影響があると判断した場合は公表しない」と述べた。

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