ペンギン目線カメラで生態解明1月22日 6時14分
地球温暖化が南極の生き物の生態にどのような影響を及ぼしているか、解明する手がかりにしようと、野生のペンギンの背中に小型カメラを取り付けて、その行動をペンギンの目線で撮影するという世界でも例のない調査に日本の研究チームが成功しました。
調査を行ったのは、国立極地研究所の渡辺佑基助教の研究チームで、調査結果をまとめた論文が科学雑誌の「アメリカ科学アカデミー紀要」に22日、掲載されました。
研究チームは、3年前からおととしにかけて南極に滞在し、アデリーペンギンと呼ばれる野生のペンギン14羽の背中に直径2センチの超小型カメラを取り付けて、その行動をペンギンの目線で撮影しました。
そしてカメラを回収して映像を確認したところ、ペンギンが時速10キロ前後のスピードで南極の氷の下の海域を泳ぎ回り、俊敏な動きで餌をとる様子が写っていました。
この映像によって、アデリーペンギンが、南極の氷のすぐ下の海域に生息する魚とオキアミを主な餌としていることが改めて確認できたということです。
研究チームでは、地球温暖化などの影響で南極の氷がとけて失われると餌の魚が少なくなり、ペンギンが生息できる範囲が狭まってしまうおそれがあることが分かったとしています。
野生のペンギンにカメラを取り付けての撮影に成功したのは世界で初めてだということで、研究チームではこの手法をほかの生物にも応用したいとしています。
渡辺助教“ものすごいスピードで驚いた”
研究を行った国立極地研究所の渡辺佑基助教は、「私たちが陸で見ているのはペンギンの世界のごく一部にすぎず、実際には水の中でものすごいスピードで泳ぎ回り、餌を食べていることが分かって驚いた。まさに水の中を飛んでいるかのようだ。今後はこの手法をほかの動物にも応用して、地球温暖化が生物に与える影響について調べてみたい」と話しています。
“海洋動物研究のお手本となる成果”
アメリカ西海岸などに生息するゾウアザラシの研究を行い、海洋動物の研究では世界的に知られるアメリカ、カリフォルニア大学のダニエル・コスタ教授は「今回の研究は、これまで私たちがデータから推測していたものを、映像という目に見える形で明らかにしたことに大きな意義がある。今後の海洋動物研究のお手本となるような成果で、今後はこの研究分野を日本がリードしていくことになるのではないか」と話しています。
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