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集団的過熱取材に関する日本新聞協会編集委員会の見解

2001年12月6日
第609回編集委員会

 事件や事故の際に見られる集中豪雨型の集団的過熱取材(メディア・スクラム)に、昨今、批判が高まっている。この問題にメディアが自ら取り組み自主的に解決していくことが、報道の自由を守り、国民の「知る権利」に応えることにつながると考える。こうした認識に立って、日本新聞協会編集委員会は、集団的過熱取材にどう対処すべきかを検討し、見解をまとめた。

 集団的過熱取材とは、「大きな事件、事故の当事者やその関係者のもとへ多数のメディアが殺到することで、当事者や関係者のプライバシーを不当に侵害し、社会生活を妨げ、あるいは多大な苦痛を与える状況を作り出してしまう取材」を言う。このような状況から保護されるべき対象は、被害者、容疑者、被告人と、その家族や、周辺住民を含む関係者である。中でも被害者に対しては、集団的取材により一層の苦痛をもたらすことがないよう、特段の配慮がなされなければならない。

 集団的過熱取材は、少数のメディアによる取材である限り逸脱した取材でないにもかかわらず、多数のメディアが集合することにより不適切な取材方法となってしまうものだ。また、事件・事故の発生直後にとくに起きやすく、そのような初期段階での規制は必ずしも容易ではない。このため、取材現場を必要以上に委縮させないということにも留意しつつ、次のような対応策をまとめた。

 すべての取材者は、最低限、以下の諸点を順守しなければならない。

  1. いやがる当事者や関係者を集団で強引に包囲した状態での取材は行うべきではない。相手が小学生や幼児の場合は、取材方法に特段の配慮を要する。
  2. 通夜葬儀、遺体搬送などを取材する場合、遺族や関係者の心情を踏みにじらないよう十分配慮するとともに、服装や態度などにも留意する。
  3. 住宅街や学校、病院など、静穏が求められる場所における取材では、取材車の駐車方法も含め、近隣の交通や静穏を阻害しないよう留意する。

 不幸にも集団的過熱取材の状態が発生してしまった場合、報道機関は知恵を出し合って解決の道を探るべきであり、そのためには、解決策を合同で協議する調整機能を備えた組織をメディア内部に持っておく必要がある。調整は一義的には現場レベルで行い、各現場の記者らで組織している記者クラブや、各社のその地域における取材責任者で構成する支局長会などが、その役割を担うものとする。解決策としては、社ごとの取材者数の抑制、取材場所・時間の限定、質問者を限った共同取材、さらには代表取材など、状況に応じ様々な方法が考えられる。

 また、現場レベルで解決策が見いだせない場合に備え、中央レベルでも、調整機能や一定の裁定権限を持った各社の横断的組織を、新聞協会編集委員会の下部機関として設けることとする。

 集団的過熱取材の被害防止は、各種メディアの一致した行動なしには十分な効果は期待できない。このため新聞協会としては、放送・雑誌など新聞以外のメディアの団体に対しても、問題解決のための働きかけを行うことを考えたい。

 なお、集団的取材であっても対象が公人もしくは公共性の高い人物で、取材テーマに公共性がある場合は、一般私人の場合と区別して考えることとする。

 われわれは今後も、必要に応じ見解を見直し、集団的過熱取材問題に適切に対応していきたいと考えている。各取材現場においても、記者一人ひとりが見解の趣旨を正しく理解し、この問題の解決に取り組んでほしい。

以上

「集団的過熱取材対策小委員会」の設置要領

2002年4月18日
第613回編集委員会

編集委員会は、集団的過熱取材問題が発生し、現場で調整・解決できない場合に備え、下部組織として標記小委員会を設置する。

(1)組織の位置づけ

新聞協会編集委員会の下部機関とする。

(2)組織の構成

  1. 全国紙5社(朝日東京、毎日東京、読売、日経、産経東京)、ブロック紙3社(北海道、中日・東京、西日本)、地方紙4社(火曜会、土曜会から各2社)、通信社2社(共同、時事)、NHKの計15社の編集・報道局次長ないし部長クラスで構成する。1社1人とし、代理出席を認める。
  2. 地方で問題が起きた場合は、当該の新聞協会加盟の地元紙にオブザーバーとしての参加を求める。

(3)幹事

編集委員会代表幹事社、次期代表幹事社の委員とする。

(4)委員の任期

特に定めない。

(5)小委員会の機能・性格

現場レベルで調整・解決できない問題を協議する裁定権限を持った機関とする。

(6)申し立て手続き

  1. 当該クラブ、支局長会などから対策小委員会に、現場解決が困難である旨の申し立てがあった場合、小委員会幹事が小委員会を招集し、協議に当たる。小委員会を開催するかどうかは幹事団で協議のうえ判断する。
  2. 集団的過熱取材の被害者・関係者から、直接、小委員会に苦情の申し立てがあった場合は、速やかに当該の支局長会などに連絡し、調整に当たらせる。
  3. 被害当事者・関係者や弁護士などから、新聞協会事務局に直接連絡・申し立てがあった場合は、その旨を協会事務局から速やかに小委員会幹事ならびに小委員会委員に連絡し、小委員会幹事を通じて当該支局長会などに伝える。
  4. 公人もしくは公共性の高い人物からの申し立ては、基本的には受けない。

(7)裁定の内容、決め方、公表、解除

  1. 裁定の内容は、その都度対策小委員会で協議し決定する。裁定の内容と裁定違反等に罰則は設けない。
  2. 裁定の決定は、大方の合意を得るという観点から、小委員会委員の3分の2以上の賛成とする。委員が欠席の場合には、その社の代理者かまたは小委員会幹事に委任できることとする。
  3. 小委員会は裁定結果を速やかに当該現場に通知し、必要に応じて編集委員会としての見解を公表する。
  4. 解除はケース・バイ・ケースで現場の判断に任せる。解除のために小委員会を招集することはしないが、解除した場合は、小委員会に必ず連絡するよう現場に徹底させる。

(8)他のメディアとの連携

  1. 小委員会幹事と民放連側の対応組織の担当幹事が緊密に連絡を取るなど、日ごろから新聞と民放で連携を密にし、問題が発生した場合には、速やかに対応する。
  2. 雑誌協会に対しては、新聞側の姿勢を示す意味から小委員会の決定を伝える。また、現場での調整で解決した場合も、調整結果を小委員会を通じて直ちに雑誌協会、民放連に伝える。
  3. 新聞協会非加盟のローカル紙に対しては、基本的には、現場のクラブが決めたことに従ってもらうよう現場から要請する。

(9)地方レベルの周知

現場の支局長会、記者クラブに当小委員会設置についての編集委員会の決定を伝え、徹底する。

以上

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