東証:「金融相場」の様相 今年の最高値更新
毎日新聞 2012年12月27日 20時54分(最終更新 12月28日 00時48分)
27日の東京株式市場は、日経平均株価の終値が1万300円を突破し、今年の最高値を更新した。投資家が安全資産とされる円や日本国債を売って、リスクの高い株式に資金を振り向けているためだ。現状ではデフレ脱却の期待先行で買われている側面が強く、企業業績の改善を伴った株価上昇に移行できるかが次の焦点となる。
この日の東京株式市場は、26日に発足した第2次安倍内閣が本格的なデフレ脱却に取り組むとの期待感から、買いが先行。日経平均株価は1万322円98銭と、東日本大震災当日の終値(1万254円43銭)を上回って取引を終えた。自動車など輸出関連銘柄のほか、金融緩和でマネー流入が期待される不動産株の上昇が目立つ。外国為替市場の円相場も、日銀が金融緩和を進めるとの思惑から円が売られ、27日のニューヨーク市場で一時、1ドル=86円台前半と約2年4カ月ぶりの円安水準となった。
国債を売って株式を買う動きが広がったほか、安倍内閣が積極財政で国債を増発するとの警戒感も加わり、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは前日比0.015ポイント上昇(価格は下落)し、約3カ月ぶりに0.8%台に乗せた。
景気低迷期に中央銀行が金融緩和を行い、あふれたお金が株式市場に流入し、株高につながる現象は「金融相場」と呼ばれる。調達金利が下がり業績改善が期待できるノンバンク株や、保有資産の価値向上が見込める不動産、保険などの銘柄に買い注文が集まりやすいのが特徴だ。11月中旬以降の株高について、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「ジャブジャブのマネーが、企業業績の良しあしに関わらず株式市場に流れ込んでおり、まさに金融相場」と指摘する。
今後は金融相場から、企業業績の改善を伴った「業績相場」へ移行できるのか否かが市場で注目されそうだ。来年1月下旬から2月上旬ごろにかけて、企業の12年4〜12月期決算発表が相次ぐ。野村証券の木下智夫チーフエコノミストは「業績が低迷する電機セクターなどで通期決算の見通しが期待に届かなければ、市場心理が冷え込む可能性もある」と話している。【葛西大博、浜中慎哉】