トップページ > 日高春秋>

世界のオオシマ、サカモト

2013年1月25日

 映画監督の大島渚が亡くなった。『愛のコリーダ』『戦場のメリークリスマス』などが代表作で、『戦場のメリークリスマス』の音楽を担当した坂本龍一もニューヨークから葬儀に駆けつけ、「もう社会を厳しく叱る人がいなくなり、日本はつまらない国になったかもしれません」と故人を偲んだ。


 『戦場の...』は坂本龍一、ビートたけし、トム・コンティ、デヴィッド・ボウイの4人が主演を務め、南方の戦場の島を舞台に、捕虜の虐待や差別、いじめなどを絡めながら、4人の男の奇妙な友情と愛情を描いた。ラストの戦犯としての処刑を翌日に控えたハラ軍曹(たけし)とロレンス中佐(トム)の別れ、美しく哀しい旋律が胸にしみる。


 坂本龍一の演技はともかく、本業ではその後も『ラストエンペラー』 『シェルタリング・スカイ』『バベル』など多くの映画音楽を担当、名曲をものして他のアーティストに影響を与えている。活躍は映画だけにとどまらず、俳優、映像作家、写真家としても精力的に活動を続け、ダウンタウンのコントにも出演するなど、キャリアを築いては壊し、また新たな分野に挑戦する。よくも悪くも、クリエーターと呼ばれる人間の性分なのだろう。


 ネット時代に音楽作家の著作権は守りようがなく、坂本はあえて無料で高品質の音楽を提供していくのが、これからのビジネスのあり方だという。無料で音源を取り込まれまいと、音質を悪くするなど必死に壁をつくっても、そんなものは簡単に突き崩されてしまう。


 CDなりBDなり書籍なり、「人は本当に身近に置いておきたいものは金を出して買う」。けだし、天才にしか口にできない言葉ではないか。  (静)


関連記事

by weblio


 PR情報