病的嗜癖・依存症に効くサプリ?〜Nアセチルシステインの謎
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ブログ本編では、『病的嗜癖・依存症』編はもうちょっとずいぶんしてから治療の話に入ろうと思っていますが、そこでは心理社会的介入の話を中心にしようと思っていて、薬物療法のことはあまりとりあげないつもりでいます。(単純に、あまり面白くないからです。)
が、ちょっとだけとりあげたい話題がありました。 サプリメントとして普通に(でもないですが)売られているNアセチルシステインが、動物実験や人間での実験で、いくつもの病的嗜癖・依存症に効く可能性を示唆されているという話です。
ためしに近くの薬局にいってみると「システイン」は置いていましたが、「Nアセチルシステイン」は置いていませんでした。 これはいけません。 システインもグルタチオンも消化吸収のプロセスや肝臓を通るときにすっかり無力化されてしまって、大部分はほとんど役に立たなくなるためです。 この点、Nアセチルシステインは肝臓を通って「システイン」になるので、無駄なく身体の中にシステインを増やせるというわけです。
で、この「Nアセチルシステイン」ですが、まずはネズミなどの動物実験で、麻薬、アルコール、ニコチン、などの自己摂取を減らす傾向があることが知られていました。
じゃあ、人間ならどうなのだろうと、LaRowe先生たちは、コカイン中毒で入院してきた患者さんに使ってみたところ、コカインを渇望する気持ちがだいぶ減ったことを報告しています。
また、Gray先生たちは大麻依存の思春期・青年期の患者に使って見たところ、やはり大麻の使用が減り、大麻断ちが成功する確率が上がりました。
さらに、Grant先生たちは、病的嗜癖の一種ともとれる抜毛症trichotillomaniaの患者に使ってみたところ、抜毛症の症状が減る傾向がありました。
(もっとも、以上の研究で使われたNアセチルシステインは1日量1200mg〜2400mgとかなり大目に使っています。)
いわば、「ただのサプリメント」なので、副作用はろくにありません。 そしてこの効果です。 これは一体???
興味深いのは、では他の病的嗜癖・依存症はどうなのか? タバコは? 過食症などの摂食障害は? 過食による肥満は? ギャンブル依存は?
残念ながら、まだそこまではちゃんとした研究がなされていないようでした。
参考書:
(1) LaRowe SD, et al. Is cocaine desire reduced by N-acetylcysteine? Am J Psychiatry, 2007; 164: 1115-1117.
(2) Grant JE, et al. N-acetylcysteine, a glutamate modulator, in the treatment og trichotillomania. Arch Gen Psychiatry, 2009; 66: 756-763.
(3) Gray KM, et al. A double-blind randomized controlled trial of N-acetylcysteine in cannabis-dependent adolescents. Am J Psychiatry, 2012; 169: 805-812.
(4) Dean O, et al. N-acetylcysteine in psychiatry : current therapeutic evidence and potential mechanisms of action. J Psychiatry Neurosci, 2011; 36: 78-86.
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