アルジェリア事件:犠牲者氏名公表 政府、日揮押し切る
毎日新聞 2013年01月24日 22時25分(最終更新 01月24日 22時42分)
政府は24日、アルジェリアの人質事件で死亡が確認された日本人10人の氏名を公表する方針を決めた。菅義偉官房長官は21日に「7人死亡」を発表して以来、被害者家族や日揮の意向を踏まえて公表を控えてきたが、今後始める事件の検証作業などへの影響を考え、「遺体の帰国後」を落としどころに政府が日揮を押し切った。
安否不明者の確認作業にあたって、政府は日揮と緊密に連絡を取り合ってきた。
複数の日揮関係者によると、同社は事件について社内でかん口令を敷き、巻き込まれた関係者の氏名を秘匿。幹部社員すら報道で初めて知る状況だったという。
こうした中、菅氏は21日の記者会見で「(7人の)名前の公表は、ご家族や会社との関係もあるので控えさせていただく」と宣言。基本姿勢はその後も変わらなかったが、23日の計3回の記者会見では「現時点では」と公表に含みを持たせるようになり、日揮側と調整していることをうかがわせた。
そして、24日午前の会見では一転して「私の定例記者会見で、政府の責任のもとに公表したい。(日揮から)公表に理解をいただいた」と表明。23日夜の時点で、報道各社からの公表要請に対し、「遺族など関係者に取材が殺到しており、さらに拍車がかかる」と拒否回答していた日揮も、遠藤毅広報・IR部長が24日午後の会見で「政府が犠牲者や遺族に配慮しつつ、公表することについては理解している」と政府方針を追認した。
政府内では菅氏を中心に公表の是非の検討を続けたが、意見は分かれていた。01年9月の米同時多発テロの際には、被害者家族の同意が得られた場合のみ政府が氏名を公表した前例があり、公表反対論が優勢だったという。
しかし、報道陣の取材に応じる被害者家族が出てきたうえ、有識者を含めた事件の検証時には氏名を明らかにする必要があった。政府関係者は「国民の関心も高く、これ以上、情報を抑えるのは困難だった」とぎりぎりの判断を強調した。【鈴木美穂、山下俊輔】