コラム:米財政赤字削減を強迫観念にすべきではない=サマーズ氏
ローレンス・H・サマーズ(2013年1月22日)
米政府の政策をめぐる議論は選挙以降、今後の財政赤字とその削減策に焦点が当てられてきた。こうした懸念の背景には、歳入の伸びと返済能力を超えていつまでも借金が増え続けることは許されないとの認識がある。
子孫に不当な負担をかけないという道徳的な側面や、国際的な側面、安全保障上の問題なども懸念の背景にある。
債務が過剰に増加すれば、米国は海外の債権者に対するぜい弱性が増し、国際的な緊急事態に対応する柔軟性も失われる。
景気先行きが不透明感な中、2011年の予算で取られた措置や2012年末に「財政の崖」回避に向けて合意した内容以上の措置が講じられなければ、今後15年間に債務が持続不可能なペースで増える可能性は大きい。
したがって、債務不履行や政府機関の閉鎖など自業自得の悲惨な事態を招くリスクがないとしても、赤字削減に政策の焦点を当てることは完全に理にかなっている。
赤字削減にこれ以上焦点を当てるべきでないと主張する向きは、リセッション(景気後退)がないと想定する予測に基づき、債務の対国内総生産(GDP)比率が向こう10年間に安定化する可能性があると、無責任に助言する。しかし、あらゆる不透明感と現在の債務水準を踏まえると、今後10年間の経済状況が良好であるなら、われわれは債務比率の押し下げを目指すべきだ。
今後の赤字削減は優先課題であるべきだが、強迫観念となり経済政策を支配してはならない。そうなれば、見せ掛けだけの一時的な減税措置などを実施して表面的な財政状況の改善を演出し、さらなる不透明感と長期にわたる財政負担をもたらすリスクがある。一方で、インフラや予防医学など高いリターンを生み出し、長期的な財政状況の改善につながる分野への投資を妨げる恐れもある。 続く...