記者の目:民主党の戦後補償=栗原俊雄(東京学芸部)

毎日新聞 2013年01月24日 01時04分

 昨年末の衆議院議員選挙で民主党は大敗し、政権を失った。国民の期待を大きく裏切った以上、当然の結果だと思う。だが戦争にまつわる諸問題への取り組みに関する限り、民主党政権が画期的な成果を残したことも事実だ。この問題を取材し続ける記者として正当に評価しつつ、新しい政権にも、変わらぬ取り組みを続けるよう注文したい。

 ◇抑留経験者に特措法で給付金

 まず挙げるべきは、シベリア抑留経験者の名誉回復と事実上の補償を行ったことだ。第二次世界大戦終結後、ソ連は日本人兵士らおよそ60万人をソ連やモンゴル国内に抑留し、強制労働に就かせた。最長11年に及ぶ抑留でおよそ6万人が亡くなった。ソ連は国際法違反のこの行為に、補償はおろか労働賃金さえまともに支払わなかった。1956年の日ソ共同宣言で抑留は終わった。両国は相互に、戦争にまつわる補償請求権を放棄した。このため元抑留者たちは日本政府に補償を求めた。だが自民党を中心とする歴代の政権は十分に応えず、国に対する訴訟が相次いだ。司法は、こうした訴訟をことごとく退ける一方、立法による救済をうながした。

 民主党は野党時代から鳩山由紀夫元首相らが中心となり立法救済を目指していた。政権獲得後、菅直人氏が首相だった2010年6月には、民主党議員を中心とした議員立法で「シベリア特措法」が成立した。その柱の一つが、抑留期間に応じ国が25万〜150万円の特別給付金を支給することだった。「金額の問題じゃない。無賃で働くのは奴隷。奴隷のまま死ぬわけにはいかない」。30年近く補償問題に取り組んだ平塚光雄・全国抑留者補償協議会元会長はそう話した。昨年12月、85歳で亡くなったが、同法成立をことのほか喜んでいた。

 平塚さんの葬儀に出席した鳩山氏が特措法について「もっと早くすべきだった。(給付金の)金額も低い」と話したように、同法には不十分な点が確かにある。それでも、財源を心配する国側の抵抗は強かった。「国は自分たちが死ぬのを待っている」。抑留経験者はしばしばそう語る。当事者がいなくなったら、国は戦争にまつわる戦後処理をサボタージュするかもしれない。同法が、不明な点が多い抑留の実態調査と遺骨帰還の推進などを国に課した意味も大きい。

 ◇硫黄島からの遺骨帰還推進

 もう一つの大きな成果は、硫黄島(東京都小笠原村)からの戦没者遺骨の帰還だ。太平洋戦争末期、米軍との戦いで日本人兵士およそ2万2000人が亡くなった。68年以降ほぼ毎年遺骨の収容が行われているが1万柱以上が帰っていない。さらに09年度までの10年間に帰還した遺骨は64柱にとどまっていた。

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