大谷、糸井電撃放出で右翼起用！遊撃案消滅…日本ハム

フリー打撃で鋭い打球を飛ばす大谷

　日本ハムの糸井嘉男外野手（３１）、八木智哉投手（２９）と、オリックスの木佐貫洋投手（３２）、大引啓次内野手（２８）、赤田将吾外野手（３２）の２対３の交換トレードが２３日、発表された。ＷＢＣ日本代表候補で、今シーズン後にポスティングシステム（入札制度）でのメジャー挑戦を示唆した糸井の電撃放出。背景には、ドラフト１位・大谷翔平投手（１８）＝花巻東＝を「ポスト糸井」として、右翼で起用するプランがあった。

　侍ジャパンの中軸候補が、電撃放出された。引き金は、糸井が今季後のポスティングによるメジャー挑戦の意向を球団に伝えたこと、とみられる。球団は容認しない方針だった。今季契約は１０００万円増の年俸２億円プラス出来高を保留し、チームで唯一未更改。それでも２１日に代理人交渉で大筋合意。栗山監督からは今季の新主将に任命されていた。この日は千葉・鎌ケ谷の２軍施設で練習予定を、急きょ取りやめ。会談した島田利正球団代表、山田正雄ＧＭから突然の通告を受けた。

　山田ＧＭは「チーム戦略上、大きな意義があるトレードと判断した。安定感のある先発投手と、実績ある野手２名を獲得でき、中長期に戦力バランスを整えていく上でも価値がある」と意図を説明した。だが昨季、史上４人目となる４年連続の打率３割、２０盗塁以上をマークした糸井の流出は痛恨の極み。ある球団幹部は「短期的な戦力ダウンは否めない」と、お家事情での大出血を示唆した。

　糸井は「今はさびしい気持ちでいっぱいですが、この世界では当たり前のことととらえています。入団から９年間、ここまでやって来られたのも、チームやファンの皆さんのお陰だと思っています」とコメント。新天地と３月のＷＢＣで、うっぷんを晴らすつもりだ。

　糸井放出の背景には、黄金ルーキーの存在もあった。球団幹部は「現実的に大谷が早く１軍に出場するなら、右翼」と説明。別の球団関係者は「遊撃は可能性だけの話で、実際には無理と考えている。キャンプでは投手を中心に、遊撃を守らせず、右翼の練習をさせる」と大谷をポスト糸井に指名。遊撃は新たに加わる大引を筆頭候補とした。

　鎌ケ谷で新人合同自主トレ中の大谷は、驚きを隠せなかった。糸井とは鎌ケ谷でロッカーが１人挟んで並び、一緒にノックも受けた。「走って、打って、投げてもすごい。あいさつを返してくれ、気軽に接してくれた。聞きたい、見て学びたいことがあった」と別れを惜しんだ。

　また、「糸井さんは他球団に必要とされているから、そうなったんだと思う。僕が言われたら、動揺すると思うけど、気持ちを切り替えてやっていくしかない」とプロの現実を痛感。その上で、「自分も必要とされる選手になれば、（右翼争いに）絡んでくると思う」と後釜に名乗りを上げた。高校では投手と外野手で、寮に外野用グラブを持参。「軟らかくなっているので使ってみたい」と語った。「右翼・大谷」のお披露目も近いかもしれない。

　◆大谷、２４日ブルペン入り　大谷は２４日に千葉・鎌ケ谷の新人合同自主トレで、プロ初のブルペン投球を行う。立ち投げで直球を中心にカーブを交えて３０球の予定。この日はキャッチボール、インターバル走、フリー打撃で調整。母校・花巻東で７日に行って以来のブルペン入りに向け「１８・４４メートルで投げるのは、こっちで初めて。傾斜は久々なので、前に流れないように。スピードだけじゃなく、球の回転を意識したい」と課題を挙げた。

　◆ダルは驚き「ありえん」　レンジャーズ・ダルビッシュが、１１年まで在籍した日本ハムの大型トレードに驚いた。この日午後、自身のツイッターに「糸井さんトレードとか、ありえん」と投稿。主軸を放出した古巣に、さびしさを感じたようだ。糸井について一部のファンから「でも現実、天狗（てんぐ）になっていたんだね」などとつぶやかれ、「糸井さんの何を知ってますか？」と反論する一幕もあった。

　◆日本ハム・栗山英樹監督「昨季のリーグ優勝に貢献してくれた八木、糸井の両選手がチームを離れることになり、ファンの皆様と同様、監督としてこれほど悲しいことはない、というのが偽らざる思いです。一方で木佐貫、大引、赤田という３選手とも人間性やリーダーシップの面でも素晴らしいと聞いていますし、新しい風を吹き込んでくれることに期待します」

　◆過去の主な大型トレード
  ▽６３年　山内一弘（大毎）⇔小山正明（阪神）
  ▽７６年　江夏豊、望月充（阪神）⇔江本孟紀、長谷川勉、池内豊、島野育夫（南海）
  ▽７８年　田淵幸一、古沢憲司（阪神）⇔真弓明信、若菜嘉晴、竹之内雅史、竹田和史（クラウン）
  ▽８７年　落合博満（ロッテ）⇔牛島和彦、上川誠二、平沼定晴、桑田茂（中日）
  ▽９３年　秋山幸二、渡辺智男、内山智之（西武）⇔佐々木誠、村田勝喜、橋本武広（ダイエー）
  ▽０８年　二岡智宏、林昌範（巨人）⇔マイケル中村、工藤隆人（日本ハム）

　◆糸井　嘉男（いとい・よしお）１９８１年７月３１日、京都府生まれ。３１歳。京都・宮津高から近大を経て、０３年ドラフト自由獲得枠で投手として日本ハム入団。３シーズン１軍出場なしで、０６年に野手転向。０９年から４年連続で打率３割超をマークし、ゴールデン・グラブ賞も受賞。第３回ＷＢＣ日本代表候補。通算６１０試合出場、打率３割２厘、５５本塁打、２４５打点。１８７センチ、８８キロ。右投左打。