社説

邦人の安全確保/情報収集能力を培うべきだ

 アルジェリアの天然ガスプラントで起きた人質事件で、現地で働いていた日本人7人の死亡が確認された。残念極まりない結果になってしまった。
 何ら関わりのない日本人が卑劣なテロの犠牲になるのは、やるせなく痛ましい。日本企業が海外の資源開発などに協力することは、これからも避けられない。社員や家族がより安全に生活できるよう、政府も企業も事件を検証して真剣に知恵を絞るべきだ。
 事件が起きたのは遠いアフリカの砂漠の中であり、犯行グループは国際テロ組織アルカイダとの関連も疑われるイスラム武装勢力だった。
 地理的にも歴史的にも日本と懸け離れ、救出のために独自にできたことがかなり限られていたのは間違いない。
 だが、それにしても手をこまぬいてはいられない。反省点は多々ある。
 民間人のテロ対策を考える場合、鍵となるのは事前情報の収集・分析能力になるはずだが、外務省がしっかりと機能していたとは思えない。
 天然ガスプラントのあるアルジェリア東部のイナメナス付近は事件前、外務省の海外危険情報で危険度が最も低い「十分注意」にすぎなかった。
 事件の直前、隣国マリへのフランスの武力介入によって、イスラム武装勢力が態度を硬化させていたことは分かっていた。
 そのために外務省は「欧米権益をテロの標的にする可能性に注意」とホームページで呼び掛けていたが、アフリカに駐在している企業との情報交換は行ったのだろうか。
 通り一遍の漠然とした注意喚起に終わらせず、個々の地域、個々の企業に着目して、対策を組み立てていかなければならない。危険性を決して過小評価せず、状況によっては決然と現地社員らの撤退や縮小を働き掛ける姿勢が必要だ。
 今回の人質事件の特異性は、事件発生後の情報が極めて乏しかったことだ。犯行グループの制圧作戦に当たって、アルジェリアが厳しく情報を制限したためだった。テロ事件の場合はこれからも、情報不足は避けられないだろう。
 いざという時、大使館などが現地で、どれだけ情報を収集できるかは危機管理に直結する。企業側が自衛することはもちろん必要だが、当然限界はある。国としてもっと日常的に企業側に情報を提供できるよう、質量共にスタッフを充実させていくべきだ。
 緊急事態が起きた場合、自衛隊による日本人搬送などができるよう法律を改正する議論も出始めているが、せっかち過ぎるのではないか。
 海外で起きた事件では、必要な情報を得るにせよ、救援活動を行うにせよ、当事国の了解がなければ何もできない。
 一朝一夕には難しいことだが、各国と連携しながら情報の収集・分析能力を磨き、危機の際の即応態勢を決めておくのが最善の備えになるはずだ。

2013年01月24日木曜日

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