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01:ファクスホンのサウンド 〜音階が歯抜けの発音デバイス〜
当時、ファクスホンは競合他社にシェアで大きく負けていました。出荷台数が伸びないため開発費も大きくなく、開発は特許侵害(ライセンス契約)を避けたアイデアを模索中でした。時代は携帯の着メロが市民権を得た頃、他社機からは和音も発音できるものもありました。しかしハードのコストに直結するため自社では見送る方向となり、既存の部品で発せられる音仕様で報知音や機能音をデザインしてみてほしいと相談が入りました。その音仕様は以下の当時のメモにも残っていますが西洋音階でいう12音階に合致しない周波数ステップであることがわかり、単にメロディを制作しても音抜けになるものでした。そこで発音可能な周波数を12音階に照らしあわせニアな周波数のみをピックアップしサンプラー内蔵タイプのシーケンスソフトウエア”PlayerPro”にそれらの周波数データを登録してその状態でメロディを制作しました。意外とそれなりにはまるメロディがあったのでそれを開発に提出し作業は完了しました。
faxphon.MP3
Pizzicato.mp3
Flute01.mp3
- 当時のメモ
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検討依頼のあったファクスフォンの音声ガイダンス合図音について
検討結果とたたき台サウンドのデザイン仕様を以下にまとめます。
検討概要:
- 現状使用されているサウンドをサウンド編集ソフトでシュミレーション。
- 設計条件の説明を得る。
- 上記をデザイン内のサウンドデザイン資料とかさね、デザイン領域を決める。
- 結果、音楽理論を活用して周波数と長さの組み合わせでたたき台を作成。
検討内容報告:
- 現在使用されているサウンドを通産省が提唱するサウンド設計カイドラインに照らし合わせた時、外れたサウンドは、キータッチサウンドの高周波数、サウンド長と着信音オフ確認音のサウンド長のみであり、最近の製品の中ではかなり良い仕様であるといえる。
- 今回は合図音のみということと設計条件から現状の正弦波音源を踏襲せざるをえない。そこで音楽理論を少し活用し周波数変化をコントロールすることにより音声ガイダンスの始まりに適した機能性のあるサウンドデザインにトライしてみた。
- いくつかの中から作成者の音感的にはこれが一番なじみを感じた。 G4:392.0Hz*120msec-493.9Hz*120msec-587.4Hz*120msec 残りのたたき台は末尾に記載する。このサウンドは音楽理論では、Gメジャーコードと 呼ばれるものである。終止音で終わらないこととある程度一般的なコードであることから 選んでみた。マイナーコードも参考に末尾に記載しておく、その違いを 聴き比べてほしい。ちなみにこの音階に対する人間の感覚は民族/文化によって 大きな違いが見られないことが確認されている。対して音色はある。
- 上記のコードサウンドを十分に活かすためには、他のサウンドも調音しておくことが 望ましいが、今後の課題としておいても問題はないと考える。
- 最後に、今回は発音デバイスが実機とは異なる環境で作業を行った。 ゆえにデバイス特性によっては発振できない周波数が含まれる可能性も0ではないと 考える。今回は高齢者を強く考慮し、低めに作成している。 もし、問題があれば、1オクターブあげると良いかもしれない。 1KHz付近までであれば音量さえ十分あれば高齢者にはほぼ問題ないと考える。
ファクスホンにおける発音可能な周波数リスト_ToneGeneList 呼び出しコード、基音周波数 Count Frequency 01 7812Hz(7812.5) 02 5208Hz(5208.333333) 03 3906Hz(3906.25) 04 3125Hz(3125) 05 2604Hz(2604.166667) 06 2232Hz(2232.142857) 07 1953Hz(1953.125) 08 1736Hz(1736.111111) 09 1562Hz(1562.5) 10 1420Hz(1420.454545) 11 1302Hz(1302.083333) 12 1201Hz(1201.923077) 13 1116Hz(1116.071429) 14 1041Hz(1041.666667) 15 976Hz(976.5625) 16 919Hz(919.117647) 17 868Hz(868.055556) 18 822Hz(822.368421) 19 781Hz(781.25) 20 744Hz(744.047619) 21 710Hz(710.227273) 22 679Hz(679.347826) 23 651Hz(651.041667) 24 625Hz(625) 25 600Hz(600.961538) 26 578Hz(578.703704) 27 558Hz(558.035714) 28 538Hz(538.793103) 29 520Hz(520.833333) 30 504Hz(504.032258) 31 488Hz(488.28125) 32 473Hz(473.484848) 33 459Hz(459.558824) 34 446Hz(446.428571) 35 434Hz(434.027778) 36 422Hz(422.297297) 37 411Hz(411.184211) 38 400Hz(400.641026) 39 390Hz(390.625) 40 381Hz(381.097561) 41 372Hz(372.02381) 42 363Hz(363.372093) 43 355Hz(355.113636) 44 347Hz(347.222222) 45 339Hz(339.673913) 46 332Hz(332.446809) 47 325Hz(325.520833) 48 318Hz(318.877551) 49 312Hz(312.5) 50 306Hz(306.372549) Code Count Frequency Count Frequency Count Frequency B 26 0600Hz 39 1201Hz A# 24 0558Hz 38 1116Hz 45 2232Hz A 22 0520Hz 37 1041Hz G# 20 0488Hz 36 0976Hz 44 1953Hz G 18 0459Hz 35 0919Hz F# 16 0434Hz 34 0868Hz 43 1736Hz F 14 0411Hz 33 0822Hz E 12 0390Hz 32 0781Hz 42 1562Hz D# 10 0372Hz 31 0744Hz D 08 0355Hz 30 0710Hz 41 1420Hz C# 06 0339Hz 29 0679Hz C 04 0325Hz 28 0651Hz 40 1302Hz
02:デジカメのサウンド 〜電子ブザーへの挑戦〜
Date of Update : 2006/09/08
デジカメ本格参入の頃、デジタル化という技術課題にばかり目を奪われ、道具としての観点が希薄になりかけてしまっていた。なんと初期のあるモデルでシャッター音がなかったため「撮れたかどうかわからへん。あかんはこれ。」とタレントS氏にテレビで発言されたことを私は今でも鮮明に覚えています。しかし、開発計画として、すぐさまシャッター音に最適な発音デバイスを導入することは難しく。ひとまず、AF用やタイマー撮影用に搭載されていた発音デバイスでシャッター音(らしい)ものを作れないかと相談が舞い込みました。いわゆる圧電ブザーと呼ばれる部品でどこまで表現が可能なのか。技術制約を理解するところから、手法およびツールの選定、設計への出図方法など、作成したサウンドの確認、ゼロからの活動でした。
DC_S1.mp3
DC_S2.mp3
DC_S3.mp3
- 当時のメモ
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- 制約:
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- 1bit contorol:エンベローブデザインは不可
- 22khz sampling:11khz以上は、表現できない
- 6khz peek:高音帯域に高効率、低音はでない
- <電子音のスペック>現状の仕様:
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- af完了:3.675[khz] 30[msec] 発音→ 30[msec]消音→30[msec]発音
- 露光完了:<未定>
- セルフタイマー:3.675[khz]2ヘルツ発音(400[msec]発音100[msec]消音)を8秒→3.675[khz]8ヘルツ発音2秒以上
- 2秒セルフタイマー:3.675[khz]8ヘルツ発音を2秒以上
- イレース終了:2.205[khz] 55[msec]発音 → 2.75625[khz] 55[msec]発音
- 概念図:
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soundedit16v2jを用いたサウンドデザイン単純に波形を作成すると以下のようなものが得られる。
この波形をベースに音階と音色にパターンを持たせる
ちなみに上図のように矩形波は、基音の他に3倍音以降の奇数倍音を含む。この倍音構成をある程度意識して音を作成する方が良いのではないかと考える。
これは、作成したデータのスペクトルである。単純な矩形波をレタッチし、周期は変えず波形に表情を与えてみた。音の長さは、200msec以上になるように作成した。なぜなら、200msec以下では、音に表情を与えてもすべての一般人において聞き分けることが出来ないからである。また、自然界の音の構成は、アタック/ディケイ/サスティーン/リリースという4つの部位分けられる。これを簡素化したのが、ヘッド・ボディ/テールという2つの構成でヘッドにはテールで出したい音にスムーズにつながる音とし、テールは十分な長さを与えることとした。
03:デジタル複合機+MIDI音源
Date of Update : 2006/09/08