乳幼児心理学(’12)

主任講師: 山口 真美、金沢 創

視覚と聴覚という基礎的なメカニズムの発達から、社会性の萌芽や言語の発現へと続く、乳幼児の心理の発達段階について、最新の知識を踏まえながら、学んでいく。実際の実験場面を検討しながら、子ども達の持つ意外な潜在能力について理解を深めつつ、発達にはなにが必要なのかを理解し、最後にはこれらの心理学の知識を生かした、発達健診について学習する。 検討中リストに追加

各回のテーマと放送内容

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第1回 乳幼児心理学の方法の概要
乳幼児の認知能力を計測する実験の方法について解説する。乳幼児は大人のように、言葉を駆使して自らの意思を表現することができない。こうした乳幼児を対象に、言語を使用せずに実験する方法が考えられてきた。
担当講師: 山口真美 (中央大学・教授) 金沢創 (日本女子大学・准教授)
第2回 視力の発達
視覚にかかわる脳の発達に伴い、発達していく基礎的な視覚能力について解説していく。縞視力に代表される視力などはその典型であるが、視力以外にも、コントラスト感度の発達やチラツキに対する感度の発達など、脳の発達と直接リンクした視覚発達は物体の認知や社会性の認知の制約となる重要な能力である。
担当講師: 金沢創 (日本女子大学・准教授)
第3回 形と動き
動きを見ることから発達は始まり、形を見る能力を促進する効果がある。にもかかわらず、発達障害では動きを見ることに障害が見られることが多い。運動視の能力をささえる頭頂葉へと至る背側系と、形態視をささえる側頭葉へと至る腹側系の関係を解説する。
担当講師: 金沢創 (日本女子大学・准教授)
第4回 色がわかること
色を見る能力とそのメカニズム、そしてその発達について解説する。色を見ることは、単純に網膜レベルで成立するものではなく、照明と物体表面を分離し、面が持つ物理的な質感を推定するいわゆる色恒常性や明るさの恒常性の能力とかかわる。ここでは、主に色恒常性の能力を中心に解説を行う。
担当講師: 山口真美 (中央大学・教授)
第5回 空間にかかわることの発達
運動発達に伴う、空間を見る能力の発達について解説する。網膜の2次元に限定された情報から、3次元に広がる世界を認知することは、自由に物をつかんで世界の中で動き回るために、不可欠な能力である。この発達過程を、脳の発達ともあわせて解説する。
担当講師: 山口真美 (中央大学・教授)
第6回 顔をみること
顔の認知は、プリミティブなものであれば新生児にも可能といわれる。一方、目鼻の顔部分の詳細な配置に基づく人物同定は、人見知りの始まる7ヶ月ごろにようやく可能となる。近年発展してきた乳児の脳科学研究の成果も含め、社会性の基礎となる顔認知について解説する。
担当講師: 市川寛子 (中央大学・助教)
第7回 音声知覚の発達
言語獲得は、生後わずか1年程度の間に音声知覚能力が大きく変化することに始まる。本講義では、乳児が母語の学習に適した音声知覚様式を獲得し、入力される音の流れの中から単語を抜き出し、さらにその意味を学習できるようになる一連の音声知覚発達過程について解説する。
担当講師: 麦谷綾子 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所・ 主任研究員)
第8回 乳児の音楽認知
子どもたちは非常に早い時期から音楽に注意を向け、音楽的表現を楽しむ。こうした音楽と乳児との親和性に焦点をあて、乳児が音楽をどのように認知しているのかを科学的知見を引用しながら解説する。また、対乳児歌唱や未熟児に対する音楽療法を例に、音楽と発達の関わりについて概観する。
担当講師: 麦谷綾子 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所・ 主任研究員)
第9回 知識の発達
近年の種々の研究から、乳児が、物体の基本的な性質や運動などの物理の領域、人間らしいふるまいや意図・目的の理解などの心の領域、数量の区別や初歩的な計算といった数の領域について、素朴な知識の集合を持っていることが示されている。乳児期におけるこれらの知識発達について、実証的な研究を交えながら解説する。
担当講師: 麦谷綾子 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所・ 主任研究員)
第10回 社会性の発達(1)乳児期からの発達
乳児は他者の目や視線を敏感に検出し、情報を読み取る能力をもっている。他者が何を見ているか、いま何に注意を向けるべきかを理解する能力は、その後のコミュニケーション能力の発達の基盤となる。実験的研究を紹介しながら、その発達過程を解説する。
担当講師: 市川寛子 (中央大学・助教)
第11回 社会性の発達(2)乳児期から幼児期へ
対人関係における社会的相互作用は、他者の認知、思考の制御、場面の推論能力、ふりなどの想像力など、多くの機能が複合することにより可能となる、総合的な発達にかかわる。自己像認知や抑制機能など、具体的な能力を検討した研究を紹介しながら、その発達を解説していく。
担当講師: 市川寛子 (中央大学・助教)
第12回 言語発達
言語獲得は、乳児期から幼児期にかけて生起する最も重要な精神発達である。子どもの初期の語彙獲得過程について自然発話データと親の質問紙による研究から概観する。さらに、いろいろな語の種類に対応する概念、特に名詞―動詞を子どもがどのようなメカニズムで推論しているかについての理論的背景と実験的研究を紹介する。
担当講師: 小椋たみ子 (帝塚山大学・教授)
第13回 言語発達の遅れと言語発達の評価
言語発達が遅れた子どもの診断、支援においては、子どもの状態を正しく評価することが重要である。言語獲得の基盤となる能力についての基礎的知識とその測定方法を概説する。
担当講師: 小椋たみ子 (帝塚山大学・教授)
第14回 発達と障害
これまで学習してきた発達についての知見を乳児期の健診項目として導入することにより、より早期に障害を発見することが可能であること、また、知覚領域の障害がその後のコミュニケーション・言語の障害につながることを解説する。その際の尺度として注意の発達が重要であること、さらに基礎的な研究の成果を実際の発達健診の場で活用することについて紹介する。
担当講師: 金沢創 (日本女子大学・准教授) 小椋たみ子 (帝塚山大学・教授)
第15回 まとめ:乳幼児心理学の現在と未来
従来の発達心理学の枠組みを超えて、脳科学、認知科学、工学などを総合した新しい乳幼児心理学を解説する。医療や教育に対し、実験室で得られた結果を展開する発達健診などを参考に、乳幼児心理学の展望を解説していく。
担当講師: 山口真美 (中央大学・教授) 金沢創 (日本女子大学・准教授)

放送メディア:

テレビ

放送時間:


2013年度 [第1学期] (水曜)
22時15分〜23時00分

単位認定試験 試験日・時限:

2013年度 [第1学期]
2013年8月3日 (土曜)
8時限 (17時55分〜18時45分)

開設年度:

2012年度

科目区分:

専門科目

科目コード:

1528882

単位数:

2単位
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