伊勢型紙:ブラジルへ 日系人のニーズ、標的に 鈴鹿のNPO、販路開拓担う /三重
毎日新聞 2013年01月23日 地方版
鈴鹿市のNPO法人が、地元の伝統工芸「伊勢型紙」を、地球の反対側のブラジルで売り込むことになった。ターゲットは、リーマン・ショック以降の不況で帰国した日系人たちで、インテリアとしてのニーズを当て込む。伊勢型紙は、友禅や小紋など着物の柄を染めるのに用いられるが、着物需要の減少で、業界は先細りしているのが現状。関係者は新たなビジネスチャンスに期待する。【岡正勝】
販路開拓を担うのは、日系定住外国人の生活を支援する「愛伝舎」(同市)。日本酒やお茶などの県産品をブラジルで売り、その収益の一部を外国人の教育支援や人材育成に活用しようと昨年末にスタートさせたプロジェクト「MIEBRAS(ミエブラス)」の枠組みで販売する。
22日、ブラジルに渡った坂本久海子理事長(51)は「多くの日系人が日本製品を求めており、商機はある」と自信をのぞかせる。8月には三重県とサンパウロ州の姉妹提携40周年式典も予定されており、職人実演会の開催も検討している。
坂本さんに同行する日系3世のブラジル人、丹野セルジオ・タケシさん(42)は伊勢型紙について「非常に細かい仕事で素晴らしい。日本人の技術力の高さが分かり、現地でも喜んでもらえるのではないか」と話した。
一方、生産者の「伊勢形紙協同組合」は、愛伝舎の動きを知って、海外販路拡大への期待を込めて、作品1点を寄贈した。さまざまな菊の花をあしらった伊勢型紙の代表的な文様。伝統工芸士で昨年亡くなった中島嗣雄さんが手掛けた作品で、縦30センチ、横40センチの大きさだ。2人は、この作品を持ってサンパウロ市の有名ホテルやレストランを回り、伊勢型紙をアピールする。
林庸生(つねお)理事長は「言葉の壁もあって業界としては海外に打って出るのはハードルが高かった。ありがたい話で、新たな販路に結びつけば」と期待している。
〔三重版〕