台湾の世界的大企業「鴻海精密工業」って?

 


急速に拡大 日本企業も続々委託


経営危機のシャープと提携交渉に乗り出した台湾の会社がありました。鴻海精密工業(ホンハイ)です。日本では名前が知られていませんでしたが、実は売り上げが10兆円に達する超巨大企業。創業者の郭台銘会長は「台湾のチンギス・ハーン」と呼ばれる個性的な経営者です。

 

台湾の台北近郊にあるホンハイの本社 ©朝日新聞社

 

ホンハイの郭台銘会長 ©朝日新聞社

 



 

  鴻海精密工業という会社、こんな大きな会社なのに知名度が低かったのはなぜですか。
 大手企業から依頼された電子機器製品の下請け製造を行っているのがホンハイです。自社ブランドは持っていません。私たちは身の回りにホンハイの製品があふれているのに、知らないで使っているのです。

 

  例えば、どんな製品がありますか。
 世界に名だたる企業がホンハイの顧客です。アイフォンやアイパッドなどのアップルの製品は50%以上をホンハイに委託しています。日本企業ではソニーのプレイステーション、任天堂のWiiなどもホンハイが製造しています。アメリカのデルやヒューレット・パッカードのパソコンもホンハイ製です。


  なぜ世界の一流企業が軒並み、ホンハイに仕事を依頼するのですか。
 ホンハイの強みは中国の安くて勤勉な労働者を大量に抱えていることです。1990年代から中国に積極的に進出し、巨大工場を各地に造りました。現在、同社の従業員は中国だけで100万人います。技術も高く、受注への対応も敏速です。アップルのように大量の製品を一度に販売する企業にとってありがたい存在なのです。
もともと電子製品の下請けは日本の中小企業の独壇場でしたが、現在はホンハイなどの台湾勢に完全に後れをとっています。


  ホンハイのトップの郭台銘さんは個性的な経営者らしいですね。
 台湾では子どもまで名前を知っているカリスマ経営者ですね。日本でいえばソフトバンクの孫正義さんやユニクロの柳井正さんのような存在かもしれません。
貧しい家庭の出身で大学も出ていません。母親から資金を借りて小さな部品工場を立ち上げ、約40年で10兆円企業に育て上げました。特にこの10年の成長ぶりは著しく、モンゴル帝国のような急速な拡大から郭さんは「チンギス・ハーン」と呼ばれています。


  郭さんはどんな性格の人なのですか。
 とにかく仕事の鬼で一日16時間は働くと言われています。部下にも厳しく、トイレで社員の尿をチェックして黄色い色だと「よく働いている」と満足し、黄色くないと「働きが甘い」としかるという話は有名です。その代わり、頑張った部下には気前よく高い待遇を与えます。
2008年には24歳年下のダンスインストラクターの女性と結婚して大きな話題となりました。台湾で「芸能人以上にニュースになる経営者」と言われています。


  でもシャープとの提携は難航しているとか。
 昨年3月に提携が発表されたときシャープの株価は550円でした。その後、シャープの巨額赤字などが問題視されて株価が急落しました。ホンハイとしては550円で買ってしまうと大損になるので値段の引き下げをシャープに求めましたが、シャープも安くは売りたくありません。そのへんから両社の間にヒビが入ったようです。
でも、ホンハイにとってはシャープとの提携が実現しなくても経営に大きな影響はありません。一方、シャープはホンハイとの提携がうまくいかなければ資金不足に陥って最悪倒産の恐れがあり、シャープの方が深刻な状況にあるのは間違いありません。

 

 シャープ 創業100年の電機メーカー。液晶テレビ販売の不振などで、2013年3月期の純損益4500億円の赤字見通し。株価などが下がり、銀行支援なしに資金繰りが立ちゆかなくなり、経営再建のため賃金や人員を減らすなどしている。
12年3月、ホンハイとの資本業務提携を発表。7月、大型テレビ用の液晶パネルを生産する堺工場(大阪府堺市)を共同運営に移行した。
EMS Electronics Manufacturing Service。自社のオリジナル製品を持たず、他社の電子機器の製造を受託する会社。ホンハイはEMSの世界トップ企業。

 

 

朝日新聞国際編集部 野嶋剛

1968年生まれ。92年に朝日新聞入社。シ ンガポール支局長、政治部、台北支局長な どを経て、現在、国際編集部次長。著書に 「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)「ふた つの故宮博物院」(新潮社)など。

 

2013年1月13日

 

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