アルジェリア事件:仮設で息子訃報 「私も死にそう」

毎日新聞 2013年01月22日 22時10分(最終更新 01月22日 23時49分)

 アルジェリアの人質事件で死亡が確認された日本人7人に、プラント大手「日揮」社員の伊藤文博さん(59)が含まれていた。宮城県南三陸町出身で、母フクコさん(82)は東日本大震災で自宅を津波に流され、県内の仮設住宅で1人暮らしをしている。最愛の息子の訃報を聞き、悲しみに沈んだ。

 フクコさんによると、訃報は日揮から連絡を受けたとみられる伊藤さんの妻から聞かされたという。「自分の子供がこんなことになって、どうにもならない。私も死にそうです」と声を絞り出した。

 伊藤さんは1953年生まれ。一関工業高等専門学校(岩手県一関市)から東京工業大に進学し、日揮に入社した直後からアルジェリアなどの天然ガスプラント建設に携わった。

 同僚によると、震災直後、伊藤さんは「実家が津波にやられた」と実家に駆け付けた。「幸い命は無事でした」と聞いて、みんなで安心したという。

 「久しぶりに再会するのを楽しみにしていたのに」。伊藤さんと小中学校時代に同級生だった南三陸町の横山孝明さん(59)は悲報を「まだ信じられない」と話す。還暦祝いの集まりが来月地元で開かれる予定で、幹事の横山さんの携帯電話に、伊藤さんから年明けに出席の連絡があった。「幹事ご苦労さん。同窓会に出た後は、仮設住宅で暮らす母を訪ねる」と話していたという。

 伊藤さんは日本野鳥の会の会員で、鳥をこよなく愛していた。

 小学校時代から趣味の野鳥観察を通じて交流を続けてきた南三陸町の環境調査業、三浦孝夫さん(64)は「お袋さんを気遣ってマメに帰省していた。帰省して杯を交わした時、アルジェリアの砂漠の鳥について語ってくれた」と思い出を語った。「真面目で誠実で、品行方正という言葉は彼のためにあるようなもの」

 伊藤さんを指導した元一関高専教員、千葉陽一さん(70)も、鳥の数え方をみんなの前で得意そうに話す伊藤さんを覚えている。「いつも前向きで、先見の明もあった」と惜しんだ。伊藤さんは10年、母校の同窓会で、同社のアルジェリア開発プロジェクト部長として、天然ガスプロジェクトについて講演した。

 千葉さんは「事件のニュースを見てどうしているか心配していた。むなしい」と声を落とした。【久野華代、宇多川はるか、山中章子】

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