ページの先頭です。

2011/12/05 15:21

インタビュー

近江商人の「三方よし」は中国ビジネスにも通じる
――古川 章さん(富士通マーケティング代表取締役社長)(2/2)

  • twitterでつぶやく

中国ビジネスでも頼りになる会社に

 奥田 今、中国という言葉が出てきましたが、中国の市場とはどんな関わりをもっておられますか。

 古川 最初はオフショア開発から始めました。次のステップとして、SI(システムインテグレーション)を向こうでやりたいと考えていますが、課題がたくさんあります。

 奥田 ということは、SI以外のビジネスで?

 古川 まず始めたのは中国での人材紹介ですね。中国に日本の企業が進出するにあたって必要となるのは、何といっても人材です。ですから、富士通マーケティング・エージェントを通して人材紹介ビジネスというのを立ち上げました。すでに何社かの実績があります。北京大学や上海の華東師範大学、復旦大学などと提携してやっています。中国の学生にも日本の企業で働きたい人がいっぱいいるんですよ。そういった方を中国に進出する日本企業に紹介するというビジネスです。さらに、昨年11月、現地法人の上海富錦企業管理諮詢有限公司を上海に設立して、現地でのビジネスを本格的に展開しました。

 奥田 今後、ますます需要がありそうですね。

 古川 そのほか、複雑なSIみたいなものは富士通につなぎますが、パソコンを導入して、ネットワークを張りたいというようなインフラ提供は私どものビジネスとして手がけています。これらは、中国に進出したいと考えておられる国内のパートナー企業にも紹介しています。あともう一つは、6億人の中国人がもっている銀聯カードのビジネスです。これはまったく新しいビジネスモデルです。今までは、銀座や秋葉原までやって来て買い物をしていた中国の人たちが、中国にいながらにして日本の商品が買えるという、そういう銀聯カードを使ったECサイトビジネスです。もちろん銀座や秋葉原だけではなく、日本の各地のものが手に入るわけです。

 奥田 ほう!? 銀聯カードのECサイトというのは有望株ですね。

 古川 今回の震災で東北の企業は大きなダメージを受けましたが、復旧・復興しなくてはいけない。だけど、東北だけでものを売っていたのでは、ビジネスになりません。

 奥田 そういうことですね。

 古川 だから、地方銀行や信用金庫とビジネスマッチング契約というのを結んで、すぐれた製品をもっている地域の中小企業の手助けをして、地域をなんとか活性化したいと動いているところです。その売り先が中国というわけです。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の思想です。富士通マーケティングという会社は、地域活性化の面でも頼りになって、ちゃんと貢献しているんだと世間に認められるような、そういう会社になりたいと私は常々思っています。

 奥田 素晴らしい! 中国をも巻き込んだ「世間よし」ですね。

中国ビジネスに対する会社の本気度を見せる

 古川 実は、5月21日に、役員を筆頭とした中国ビジネス推進室というのを立ち上げました。そういう体制をつくって、やがてわれわれは、中国ビジネスでも頼りになると思われる会社になりたいという強い意思を、自分として出したんです。

 奥田 企業の姿勢ですね。

 古川 みんなこれは本気だなと思いますね。そうすると、今まで、会社の中で細々とやっていた中国ビジネスが注目されてくるわけですよ。

 奥田 何人くらいで立ち上げられたのですか。

 古川 今、役員を含めて全部で18名です。

 奥田 それはすごいですね。

 古川 オフショア開発の部隊はいっぱいいますけど、それは別です。

 奥田 どんなミッションを与えられたんですか。

 古川 一つは銀聯ビジネスの立ち上げです。登録店舗を増やすということと、取引量を増やすということです。それから、先ほども言いました中国に進出したいという国内の中堅企業に対する、人材紹介やインフラ提供をきちっと国内の営業部隊と共有しながらやれと。今、部門部門でバラバラにやっている中国に関連するビジネスはすべて、中国ビジネス推進室が情報を集約して、そこに聞けばなんでもわかるという形にしてもらいたいと言っています。

 奥田 大きく動き出したわけですね。

 古川 われわれみたいな会社が、今まで海外に進出するってことはなかなか考えられなかったと思うんです。

 奥田 そうかもしれませんね。

 古川 だけど、中国の伸び盛りの市場を無視していては、富士通マーケティングとして将来の絵が描けないということを、経営の意思としてはっきりと表明したわけです。

 奥田 すごいことですね。

 古川 毎年、成績が優秀だったグループに社長賞というのを与えています。今まではそれが報奨金だったのですが、本年度からは中国への研修旅行にしました。一回につき20人くらいですか。実は、第一回目が2011年7月に上海に行ってきました。ショッピングモールを見たり、銀聯電子を見学したり、富士通の中国拠点に行ったりさせるわけです。こうすると、ますます本当に会社は中国ビジネスをやるんだなと認識するわけですよ。上期・下期に一回ずつやれば、年間で40名が中国を肌で知ることになります。そうした経験が積み重なっていけば、お客さまのところに行っても中国の話題が出せます。

 奥田 会社の本気度、社長の本気度を社員が心底理解するというわけですね。何年後かには必ずそこからも芽が出くると期待しております。

「素晴らしい! 中国をも巻き込んだ『世間よし』ですね」(奥田)

(文/谷口 一)


【インタビュー「人ありて我あり」によせて】

会社設立にあたって、私は6つのルール、あるいは考えをノートに書きました。その第一番目に記しているのが、「人ありて我あり」という言葉です。会社経営を通じ、「人」のありがたさを感じるなかで、本当に腑に落ちました。

「人は夢と希望があるかぎり前に進むことができる」と考えています。そして今、中学時代から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げ、「千人インタビュー」を目標に活動を行っています。千通りの「人とはなんぞや」に対する答えが見えた時、私が座右の銘としている「人ありて我あり」の「人」がさらに私の中で昇華されるのではないか、と考えています。

株式会社BCN 社長 奥田喜久男



大塚商会 創業50周年記念のインタビュー「座右の銘 ~次代のあなたへ贈る言葉~」に、私が大切にしている言葉とエピソードを掲載していただきました。
この連載名の由来でもあります、座右の銘「人ありて我あり」と、それにまつわるエピソードについてご紹介いただいておりますので、ぜひこの機会にご覧いただければ幸いです。

「座右の銘 ~次代のあなたへ贈る言葉~」

株式会社BCN 社長 奥田喜久男「人ありて我あり」

  • twitterでつぶやく


WebBCNはITビジネス情報に特化したサイトに生まれ変わりました!
PC・カメラ・デジタル家電の最新情報は「BCNランキング」で!

PR

この記事に対するトラックバック:0件

週刊BCN購読のお申し込みはこちら

Bizline会員サービス(無料)のご案内 新規会員登録はこちら

トピックス

PR

IT業界団体のご紹介

ITジュニアの広場

「ITセミナー・イベント」コーナーで注目商品・サービスなどのセミナーを一挙公開!

過去の掲載記事一覧

ITビジネス情報紙「週刊BCN」

ITビジネス情報誌「週刊BCN」
2013年01月14日付 vol.1464
2013年 ITベンダートップの覚悟と事業構想

2013年01月14日付 vol.1464 2013年 ITベンダートップの覚悟と事業構想

「週刊BCN」購読お申し込み
BCN Bizline ITを売るパートナービジネスの創造を

「BCN Bizline」は、株式会社BCNが保有する登録商標です。(商標登録番号第5388735号)