災害や事故の悲惨な現場で救助できなかったことで自責の念や無力感にさいなまれる「惨事ストレス」について、総務省消防庁は新年度から、全国の消防隊員向けの対策に本格的に乗り出す。都道府県ごとに専門家を1人以上配置して普段から隊員に知識をつけてもらうほか、支援の対象を隊員の家族にも広げる。
消防隊員の惨事ストレスは1995年の阪神大震災や地下鉄サリン事件で、注目されるようになった。
東日本大震災では、全国消防職員協議会などの調査で、被災地に派遣された隊員の9割が不眠や自責の念に駆られるなどの症状を経験したことが判明。消防庁の調査では、被災地の消防団員の8割がストレスやショックを感じた一方、専門的な窓口に相談したり医療機関で受診したりしたのは1割にとどまっていた。同庁は対策が急務として、有識者による研究会で検討してきた。
対策は、都道府県ごとに精神科医や臨床心理士ら専門家を1人以上配置。惨事ストレスを軽減できるよう隊員向けの研修会を各消防学校で開く。災害発生時は速やかに現場に専門家を派遣し、個別面談などを通じて不安を取り除くという。地元の消防団員向けにも訓練カリキュラムに惨事ストレスの講習を組み込む。