――まず、台本を読んだ時の率直な感想をお聞かせください。
西島秀俊(以下、西島):SABU監督の作品は個人的にファンでずっと観ていたので、「あ、SABU監督の作品だな」っていうのはやっぱり感じました。色々なところで独特のユーモアがあって、最後は生きるってことに向かっていく、強い力を感じさせる脚本だったので。ぜひ参加させていただきたいなと思いました。――「蟹工船」の原作は以前から読んでいましたか?
西島:僕は、今回のお話をいただいてから読みました。感想は、難しいな(笑)。この映画に入るっていうのもあって、小説を小説のまま読めなかったんですよね。この映画とは設定も違うので、映画が公開されて、区切りがついて、ひと段落してからまた読んでみたいと思います。――監督は、浅川役をキャスティングするときに、悪人面の俳優さんではなく、あえてクールで冷静な印象の西島さんを起用したとおっしゃっているんですが、その事についてどう思いますか?
西島:悪人面っておもしろいですね(笑)。原作とは全く違う“浅川像”になるなと思いました。クランクインして、最初は手探りなところがあったと思うんです。そこから衣装合わせがあって、セットができて、杖を持って、SABUさんに演出していただいて、浅川ってものが徐々に出来てきた感じだと思います。――SABU監督からは、具体的にどんな役作りのアドバイスを受けましたか?
西島:とにかくあまり怒鳴らなくていい、静かに話してればいいってことは言われました。――撮影スタイルは他の監督さんと比べていかがでしたか?
西島:途中で止めずに、ずっと芝居を続けて撮ってくれていました。SABU監督ってご自身も演技をされるから、役者が演技しやすい状況をすごく作ってくれます。今回も群像劇で、たくさんの登場人物がいるのに、全員をちゃんと見てる。それぞれのキャラクターがちゃんと映えるように考えているので、やっている方にすると、すごく“ノる”んですね。すごく伸び伸びと演技をさせてくれる監督です。――セットは船の中で、とても閉塞感があるように感じたのですが実際の現場の雰囲気はいかがでしたか?
西島:労働者の役の皆はずっと合宿していて。あの衣装本当に寒いんですよ(笑)。本当に寒いし、みんな疲れてどんどん顔色悪くなってるし、「本当に蟹工船みたいだね」って言っているうちに、龍平君を中心にどんどん団結力が生まれてきていましたね。僕はあったかい衣装だったし、一回も泊まることもなく、時々現場にいくと、みんなが役柄を越えてまとまっていくのを感じました。――役柄を越えた団結が生まれたんですね。
西島:そう思いますね。抗議するシーンとか、乗り込んでくるシーンは迫力あって、本気でちょっと恐かったくらいです。