日本銀行は、本日の金融政策決定会合において、「2%物価目標の導入」「2014年以降追加で毎月2兆円の長期国債購入」、そして政府との共同声明で「物価目標を2%と定める」ことなどを決定した。既に、日経新聞やNHKなどのメディアにより事前に、物価目標導入などが、伝えられておりほぼその内容に沿った決定だった。
昨日レポートでも紹介したが、アベノミクスによる金融緩和策の強化とは、既に米FRBが先んじて行っている金融緩和強化策を日本銀行が見習う、というだけのことである。昨年2月の「1%の物価目途導入」についても、そのきっかけは米FRBが2%の物価目標を公式に導入したことだが、リーマンショック以降の日本銀行の対応は常に米FRBの後追いだし、このため不十分な金融緩和に止まった。
こうした経緯があり、今後、少なくとも米FRBに日本銀行が追いつく程度に金融緩和を強化すれば、脱デフレがみえてくる。そうした期待が浮上したことが、11月半ば以降のアベノミクス相場をもたらしたのである。この意味で、FRBと比べて、日本銀行が金融緩和策をどこまで強化するかがポイントになる。
FRBは2012年12月、「(経済状況の改善が実現するまで)制限なく金融緩和を続ける」という金融緩和の方針を、再び先行して導入している。今回日本銀行は、いつものようにFRBの政策を見習ってだろう、「期限を定めない資産買入れ方式を導入」を決定した。
本日の金融政策決定会合の直後、ドル円相場で一時90円台まで円安に振れたのは、「無制限購入」がニュースで流れたからだろう(グラフ参照)。ただ、期限を定めない資産購入(=金融緩和)の中身は、実際には2014年年初から、毎月2兆円長期国債などを購入する、というだけである。2015年以降金融緩和を続けるのか、どのような条件となれば金融緩和を止めるのか、が明確ではない。
これでは、FRBの金融緩和策を見習ったのかもしれないが、追いついたとは言い難い。だから、為替市場なども中途半端な対応、と判断しその後ドル円は下落した。もちろん、物価上昇2%を目指すという至極当たり前の目標を立てたのだから、それを目指して政策運営を行うのだろう。
ただ、どのような経済環境で金融緩和を止めるのかを明示しなければ、「2000、2006年のようにデフレでも金融引き締めに転じる」という前科が日本銀行にあるため、市場の疑念は拭えない。これまで、FRBの追随に終始し、不十分な金融緩和しか行ってこなかった現体制の日本銀行の限界なのかもしれない。
新たな日銀総裁の下で、確実にデフレ脱却を達成する金融政策運営が実現することを、期待するしかないだろう。アベノミクスが成功するか否かはそれ次第である。