特集ワイド:今さらですが 「景気刺激」にすぐ頼るけど…公共事業って効果あるの?
毎日新聞 2013年01月18日 東京夕刊
確かに、政府の思惑通りなら4月以降、景気は上向き、年末からは自動車や住宅を中心に消費増税前の駆け込み需要も出てくるので、景気は上昇トレンドをたどるということになります。しかし、必要な公共事業を積み上げたわけではなく最初に規模ありき。金額が出世魚のように膨らんでいった感は否めません。
Q 従来の公共事業は効果があったのか。
河村さん 1990年のバブル経済崩壊以降、公共事業は景気対策として度々使われてきました。その結果、各地に「〇〇会館」といったものが数多くつくられました。いわゆるハコモノです。竹下登政権が88年に行った「ふるさと創生1億円事業」では、観光に積極投資する自治体がある一方、無計画にハコモノやモニュメントを建設したところが少なくありませんでした。時々の景気下支え効果はありましたが、日本経済の根本的な立て直しにはつながっていません。
熊野さん 政府が景気をコントロールできるとすれば、国民のお金を使うことによってです。典型が公共事業。使った分のお金は確実にGDPに反映されます。
減税で個人消費を促すという方法もありますが、今のように家計の消費マインドが萎縮していると減税分のお金を使おうとしない不確実性があります。
Q もはや、その経済効果は薄れているといわれる。
河村さん 今の新興国、中国やインドのように高度経済成長期にある時は、財政支出の乗数が2を超えていた、つまり公共事業で投入した額の倍以上が効果として返ってきていました。新幹線や高速道路を造ることで産業集積が進み、雇用が創出されたのです。
しかし、社会インフラが充実した現在では、投資したものから便益を受けるというストック効果があまり期待できず、建設業界の懐だけを潤すことになりかねません。また、企業が国内市場の先細りを考え簡単には国内に投資をしなくなっているため、公共事業が民間設備投資につながりづらくなっているという事情もあります。
Q とはいっても、社会に公共事業は必要では。
菅直人政権時、内閣官房参与だった法政大学教授の五十嵐敬喜さん 日本は人口が減少し、高齢化が急速に進んでいます。にもかかわらず人口増を前提にした古い仕組みのまま公共事業を行っているからバラマキになるのです。それはタヌキしか通らないような道路や不必要なダムなどの大型公共事業に顕著です。
今こそ人口減少を前提とし、それに沿う仕組みづくりをする時です。田中角栄元首相がまとめた「日本列島改造論」(1972年発表)の逆の発想が必要なのです。