特集ワイド:今さらですが 「景気刺激」にすぐ頼るけど…公共事業って効果あるの?
毎日新聞 2013年01月18日 東京夕刊
◇成熟社会に合った使い方を
◇デフレ脱却への「点滴」/借金減らす道筋が先/期待できぬ乗数効果
政府は緊急経済対策の裏付けとなる2012年度補正予算案を決めた。公共事業を中心に景気刺激を図ろうというわけだが、神頼みならぬ、またぞろの税金、借金頼みには不安の声が根強い。今さらですが、公共事業に効果はあるのか。【内野雅一】
Q 今回の補正予算案の効果をどうみるか。
第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生さん 約13・1兆円の歳出規模のうち、基礎年金の財源不足を補う国の負担分を除く約10・3兆円が正味の景気対策分になります。公共事業はその半分の約4・7兆円です。厳しい地方財政や建設業界の人手不足から簡単には進まない事業があり、経済成長率を直接押し上げる金額、いわゆる「真水」の額は2兆〜3兆円程度とみられます。
これを前提にすると、実質経済成長率の押し上げ効果は0・6ポイント。13年度の実質成長率予想は1・7%(昨年8月時点の政府予測)ですから、それが2・3%になります。政府は正味の対策分を基に押し上げ効果を2ポイント程度と言っていますが、楽観的に過ぎるでしょう。
「公共事業が日本を救う」を書き、内閣官房参与となった京都大学大学院教授の藤井聡さん 今回の緊急経済対策は、医療行為に例えれば「点滴」です。公共投資をして需要を高めることで需給ギャップを埋め、デフレ経済を克服する。デフレ脱却は経済が健康を取り戻すということですから、成長戦略との相乗効果を実現して成長路線につなげられます。
公共事業の効果を「一時的」と言う人がいますが、点滴を打たなければ日本経済は死んでしまいます。
Q 一方で約5・5兆円の建設国債を発行する。
日本総合研究所主任研究員の河村小百合さん 国の借金がまた増えます。日本が今すべきことは借金を増やすのではなく、減らす道筋を明確に示すことです。そうしないと将来、長期金利が上昇して社会保障費などが大幅に減るのは避けられません。
熊野さん 今回の補正予算案は、4〜6月のGDP(国内総生産)を押し上げるにはどのくらいの金額規模が必要か……という前提からスタートしています。安倍晋三政権は来年4月に消費税率8%への引き上げを実施するかどうかを今秋に判断する予定で、その材料が4〜6月の経済状況だからです。安倍首相は2月に法案を通せば、工事の進み具合などから4〜6月には成長率押し上げ効果が出てくると見ています。