今日は納品の業者を絶句させるくらいの大量仕入を敢行したカウンターフーズの拡販が見事にハマり、朝からバカ売れを続けていて非常に気分がよろしいので、諸君にカウンターフーズ拡販の秘策を授けよう。心して聞くがよい。
なんでこんな上から目線から始まったのかよくわからないですが、通常営業に戻って、よろしければカウンターフーズ拡販の秘策を授けさせていただければ光栄に思います。そこまで卑屈にならなくてもよい。
というわけで今日は、ものすごくコアにコンビニ関係者以外にはわかりづらい話題です。専門用語も気にせずに使っています。対象は「拡販とかあんま本気でやったことないけどやらないとやばいんだろうなあ」と思ってる店長さんとかオーナーさんです。
あとすごい長い。
秘策っつても、全部書いたら商売上がったりとかまあそういうことはあまり気にしないんですけど、体系的に書くと長くなるしめんどくさいので、声かけの話だけします。
ぶっちゃけカウンターフーズなんざ、大量に作って全員に対面トーク入れりゃ絶対売れるんすよ。まあ廃棄予算5000円くらい覚悟してくださいよ。そんでまあ、唐揚げ串でもなんでもいいけど、常時100本陳列してください。んで、バイトに「これを売らないと俺はもうだめだ」と言って絶望的な顔でも見せてください。ふだんは明るくて元気で小柄で足のサイズが22センチくらいの15歳のバイトの女の子が「店長、私にできることないですか?」って心配そうに聞いてくれるので「君のかわいくて魅力的な笑顔をお客さんに振りまいて、唐揚げ串いかがですか?って言ってくれ。そうすれば中年男性はみな癒され、口やかましいババァもあら最近の若い子にしてはしっかりしてるわねとか言ってくれて、ついでに俺は勃起する」とか言ってあげてください。あら不思議。すごい売れました。そして僕はセクハラで途方に暮れるのです。もうこうなったらヤケだ。使用済みの制服に顔をうずめてやれ。刹那の快楽が僕を包み(中略)一時の気の迷いだったんです。
と書くとネタくさいというか、最近絵と立体の区別がつかなくなってきたととみに噂のMK2さんですが、だいじょうぶだ。まだだいじょうぶだ。もう、なにも怖くない。
ネタくさく書いたんですが、実際のところ、これでほぼすべて語れてるような気がします。少なくとも現状、対面トークがあたりまえ、店内への声かけは標準装備のお店の店長さんなら「あー、まあ大雑把にいやそんなもんだよね」と賛同してくれるんじゃないかな、と。
以下、もうちょっとまともに書いてみようと思います。
まず売れる売れないの問題なんですが、立地とよほどのミスマッチを起こしてるような商品でない限り、原則的には、どんな店であろうも、すすめればかならず売れます。客数の問題はあるでしょうが、とにかく声かけをすれば「絶対に」売上は伸びます。ここを疑っちゃだめです。
ミスマッチってのは、たとえば交通量クソ多くて近くに名産の食い物がある観光立地(しかも周囲に住宅なし)のロードサイドでおでん一生懸命売るとか、学生中心の立地で白身魚フライ一生懸命売るとかそういうのです。だいたいどのお店でも、自店で売れる商品と売れない商品の傾向は掴んでいるはずで「売れる」と判断できる商品をおすすめすればいいわけです。
次にすすめるための大義名分です。たいていのチェーンではセールがあるでしょうが、別に新商品でもいいわけです。要はおすすめするための大義名分だけがあればいい。
さて、陳列個数です。まあこれもたいていのチェーンに購入率とかそういう指標があるでしょうし、本部から来るむかつく人に「というわけで地区で一位を目指したいんだ! 何個陳列すればいいでちゅかー?」と質問すれば喜んで「では朝に20本、昼に50本、夜に50本でいきましょう! あとでちゅか言うなクソが」というかたちで提案してくれるはずです。
が、俺はこれ、極端な朝昼立地以外は、朝にいくつ、昼にいくつ、というやりかたは、拡販かけるうえではそんなに上策じゃないと思ってます。理由は単純で、実はメシ時じゃなくても売れるからです。特に主婦層は、日頃から「今日の晩ごはんなににしよう」的なことを考えながら行動してますので、昼の2時過ぎでもツボにはまれば「これで一品浮く」という考えで買います。そうでなくてもこの現代社会、人がきちんと朝昼晩をまともな時間に食ってるかは極めて怪しいところで、つまりチャンスはどこにでも転がってるわけです。
というわけで、本気で拡販かけるなら、陳列数は全時間帯一定。常にMAXで陳列しつづけましょう。
ちなみに個人的な経験でいうと、単品の販売金額の上限ってだいたい売上に対して5%くらいじゃないかと思ってます。個数ではなくて販売金額で決まってくる印象です。売上が100万(きょうびそんな店がどれほどあるというのか……)だと、単価100円の商品なら500個とかそんな感じ。200円なら250個。ただこの数字は「立地に適した商品を」「全員に対面でおすすめし」「強力な大義名分がある」場合だと思います。まあ世のなか化物みたいな店はいくらでもありますので、もっと上行く店もあるんでしょうが、俺の経験だとこれくらいが上限です。現実的には3%くらいかなあ。
まあこのへん、店が拡販慣れしてるかどうかの問題もありますんで、一概にはいえません。ただその気になれば、どんな店でも3%行く「可能性はある」というのは信じていただきたいところだと思います。
で、その数字を元に陳列数を決めるわけなんですが、俺はいつでも「廃棄が出るか出ないかぎりぎり」の最大陳列数にします。というか極論からいえば廃棄出したほうがいいです。売上構成比から割り出した「理想的な数字」を時間帯ごとの客数で按分して、あとはメシどきかどうかで軽く比重かけてやって、廃棄時間めいっぱいで売り切れる数を、その時間帯ごとの陳列数にする、という感じですかね。まあこのへんは、1日200個とかになってくるとむしろ「どうやってスペースを確保するか」という問題になってくるんですが、このエントリは「これから拡販を始めるお店の店長」を対象読者に想定しているので(どんだけ範囲狭いんだ)、いきなりそこまでの数字は出せない、という前提です。
なお俺は、目標数は公表しません。目標があると義務感が発生するからです。カウンターフーズの拡販が店にもたらすメリットとして、直接的な売上はもちろんですが「おすすめして」「売る」という見返りがわかりやすいかたちでバイトにもたらされる、というのがあります。目標があった場合、そこに到達しなかったときのことを想定するのがふつうなので、得策じゃない。あえて設定するなら「絶対に達成できるライン」でしょうね。そして達成できた場合には「やべーこの店まじやべー」とおおげさに喜んでみせることです。
ちょっと順番は前後しますが(考えてから書かないからだ)、拡販というのは、やるからには失敗してはいけないものです。特に最初はそうです。失敗すると廃棄が出ます。計画どおりではない大量の廃棄って、人の心を折ります。なぜなら食い物を捨てることに人間は罪悪感があるから。そんで次はこうなる。「あんなに売れるわけねーのに店長無茶しやがって」と。
なので、拡販には事前の計画というものが大事です。成功するための布石は二重三重に打っておく、ということです。
まず事前の予告でしょう。最近は本部からも予告POPみたいなのが来るチェーンもあると思いますが、あんなんだめです。予告は激しくやったほうがいいです。たとえば翌週にコロッケのセールがあるとするなら「衝撃の事実が発覚! なんと! 来週コロッケが安くなる! 地球崩壊の序章か!」くらいの勢いで派手にやったほうがいいです。
派手にやるにあたっては、ダイソーとかでなんかいろいろ買い込んで、手の込んだPOPとか作ったり模型作ったりする人よくいますけど、俺に言わせりゃ「来週コロッケセール」って書いて大量にコピーでもしてあちこちに貼っといたほうがよっぽど楽です。要は役目は告知なので、内容が伝わればそれでいいんです。手間も金もこっちのほうがずっとかからないです。
まあああいう手の込んだものを作ることも無意味ではないです。やっぱり人目は引くし、それを作る過程でバイトを巻き込めるっていう利点があります。よくしたもので、たいていの店にはそういうの得意なのが紛れ込んでるんですよ。ただしどこぞの魔法少女が「食べてくれたら、うれしいなって」とか言ってるようなPOPはやめたほうがいいです。版権云々もそうだけど、年寄りにゃ伝わらねえ。
あとは店内の体制づくりですね。これがいちばん大変なんですが。
店内への声かけと対面でのトークでは、とうぜんながら対面のほうが難易度が上です。ただし効果は天と地ほどの差があります。とうぜん対面のほうが効果があります。つーか店内への声かけなくても対面だけで充分売れる。
ちなみに対面なんですが、これ一般的には「接客が好きなパートのおばちゃん」あたりにまず頼む人が多いと思われるんですが、俺これって逆だとずっと思ってます。むしろ客なんか見てねえ機械的なマニュアル接客やる人間にこそやらせるべきです。なぜかと申しますに、パートのおばちゃんには固定客が多くついていて、おすすめするのに気兼ねがあります。また「このお客さんにはこのあいだも言ったしなあ」ということで、遠慮が発生します。よほど体制が整っていないと、継続的に対面でのおすすめを続けるのは難しいんです。
ところが客なんざ覚えてもいねえマニュアル接客の人間だと、そんなん関係ないですから。「いらっしゃいませただいまこちらのコロッケがお安くなっておりますいかがでしょうか」で一息です。そんな接客じゃだれも買わないって? いやいやいや。逆に「売れない理由」を考えてみてくださいよ。なぜ売れないかっていったら、客が商品の存在に気づいてないからです。どんなマニュアル接客だろうとも「こちらのコロッケが」って言われながら手で示されたら見るくらいはします。見たら、存在に気づきます。それで目的達成なんです。もちろん、いい接客で気づいてもらって、なおかつ「おいしいんですよ」の一言も添えられりゃベストでしょうが「とりあえずは」そんなもんは必要ないんです。いい結果は「売れた」という事実が引き連れてきます。
話を戻しましょう。
対面でも店内への声かけでもいいですが、バイトにやってもらうためのすんげーハックとかは別にないです。店長が率先垂範する以外にない。ただやってもらうにあたって、効率のいい方法はあります。
「お願いする」
これです。
仕事として必要だとか、買ってもらうことが顧客満足につながるとか、そんなもん言ったって伝わらないですよ。だってまだ売れてないんだから。その状況で人に動いてもらうためには「頼むから声かけてください。お願いします」と頭を下げるのがいちばん手っ取り早い。そのうえでの率先垂範です。
あと、これ重要なんですが、それでも声をかけられない人間を叱ることは絶対に、これは絶対にしないでください。人には向き不向きがあります。売る、というのは仕事上これはどうしようもないし譲れない部分ですが、もし声をかけられないのなら、その理由を把握、そのうえで「どういうかたちなら売ることに貢献できるのか」を探してあげてください。一緒に探してもいい。POPが得意ならそれもよし。拡販で手間取られるぶん通常業務に支障が出るならそっちに回ってもよし。よくバイトの参加意識を高めるとかいいますけど、それは経営者目線になれとか、みんなで一緒にがんばろうぜとかそういうことではなくて「店をよくする」という目的のために、その人が不可欠であるという「状態」のことです。状態を作れば意識のほうはあとから勝手についてきます。つるるところ、仕事をするうえで居心地のいい状態をつくってやればいいだけです。働いている以上、仕事はしなければならない。どうせするなら「その人がいちばん無理をしないで仕事をする」状態を可能な限りつくってやればいいんです。
そろそろ飽きてきました。が、次回に続くとかやると絶対に書かない自信があるので、なんとかがんばります。
あと事前準備で重要なのが「売りやすい状態を作る」ということです。これけっこうやってない店が多いんじゃないかなあ。たとえばコロッケでいえば、コロッケがお客さんの視線を誘導しやすい場所にあることが重要です。それも現物。うちはセールのたびに什器の位置替えっていう重労働をやるんですが、それもバイトが「売りやすい」環境を作るためです。売れる確率が上がる環境を作るんです。レジに来るお客さんの動き、視線の移動、これは執拗にシミュレートしてください。そうすれば「ここに置けば視線を誘導しやすい」っていうポイントがあるはずです。あとは延長コードでもなんでも使って、多少無理してでもその場所に什器をセットすればいいだけです。
さて、こうやって環境を整え、陳列数を決め、あとは売るだけです。
販売数値は可能な限りバイトに伝えましょう。表にして貼るのもありです。俺はやらないですけど。表にするよりも、店長が頻繁に数字を見にきて「やべえ、売れてるぞ」と直接にバイトに伝えるのがいいです。店長不在なら、そういうのが好きそうなバイトに数字を頻繁にチェックさせます。
もちろん店長は先頭に立って声をかけます。人通りの多い立地なら、手があいたときには店頭に立って呼び込みやるくらいのつもりで。ちなみに声かけは不良客退治にもわりと有効で、俺はしゃがみこんで雑誌を読むお子様には、近寄っていって「いまコロッケが安くなってますよ、いかがですか」と話しかけます。3回やるとまず帰ります。たまに買うヤツも出てきます。買うんかいって感じですけど。
とまあ、いろいろ書いてきました。
拡販をかけるのは、まあ売上のためってのがとうぜんいちばんなんですけども、でも俺はそれでは長続きしないと思ってます。そもそも俺がこれだけカウンターフーズの拡販にこだわるのは、単純にたくさん売るのが好きだからなんですが、それだけでも成功しない。
いちばん大事なのは「それをやるバイトが楽しいかどうか」です。なんか遠くから「やりがいの搾取」なんて言葉が聞こえてきますが、それでも仕事をするうえでは「働きかけて」「反応がある」っていうのはとても重要なことだと思ってます。なんせ接客業ですから。「客に」「接して」「売る」んです。これだけは変えられない。そういう制約があるなかで、とれだけ「仕事において」「楽しく」やってもらうか、ということの回答のひとつが、俺の場合はカウンターフーズの拡販だったわけです。
これはきれいごとじゃないです。本当にそれがないと続かない。数千人とかいう大組織のことは知らないですけど、コンビニくらいの大きさの組織なら、これは大事なことなんじゃないでしょうか。