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ここに注目! 「アルジェリア襲撃事件」2013年01月21日 (月)
二村 伸 解説委員
ニュースでお伝えしたアルジェリアのガス施設への襲撃事件について、二村伸解説委員です。
Q.なかなか情報が明らかになりませんが、安否がわからない人たちが心配ですね。
A.首都アルジェから1000キロ以上も離れた砂漠の中、しかも各国との事前の協議もなく軍事行動に出たことで情報が錯綜していますが、日本を始め各国政府が人質の安全への配慮を求めていただけに、作戦は性急すぎたのではないか、また情報が少ないといった批判が出るのも当然かと思います。アルジェリア政府としては、輸出額の98%を占め、国家経済を支える石油やガス施設への攻撃は決して許さず、テロに屈しないという立場を貫いたわけですが、人質救出より武装勢力のせん滅に重点を置いたと言われてもしかたないと思います。
今後、安否の確認とともに事件への対応は適切だったのか、また、そもそも警備が厳重なはずの施設がなぜこうも簡単に襲われ多数の人が拘束されたのか、十分な検証が必要です。
Q2.事件は決着したとはいえ同じような事件が起きる心配はありませんか?
A.十分可能性があります。事件を起こした武装勢力は、イスラム過激派組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」からわかれたグループと言われていますが、この地域ではほかにも様々な過激派組織が活動し、アラブの春の混乱に乗じて勢力を広げています。リビアの内戦で大量の武器が拡散し、隣のマリではイスラム過激派が北部を支配するようになりました。
今回の事件が新たなテロを誘発するのではないか、またアフリカ北部がテロ組織の活動の拠点になりつつあると懸念されています。
Q3.日本の企業にとっても遠くの話ではありませんね。
A.遠いアフリカといえども日本とは深いつながりがあることを改めて思い知らされました。
アフリカは石油や天然ガス、レアメタルなど豊かな資源を抱え急成長を遂げています。日本からも進出する企業は年々増え続けこの5年間で2倍以上に増えています。この地域では危険を伴うことを前提の上で、いかにリスクを減らすか、警備の強化や情報収集能力を高めることにもっと力を入れねばなりません。過激派や反政府勢力の活動に日頃から神経をとがらせ、危険が増したと感じたらすぐに安全な場所に避難するなど不測の事態に備える体制を整えこと、身を守るために武装した兵士を雇うことも選択肢の一つです。今回の事件を教訓にリスク管理の徹底、アフリカをテロの温床とさせないために国際社会一体となった取り組みも急務です。