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それぞれの国に、それぞれの天国がある。
といっても宗教の話じゃなくて、ぼくが言いたいのは現世の天国の話だ。いわゆる理想郷、というやつ。それぞれの国に、それぞれのユートピアがある。社会主義は破産したとか破綻したとか機能しなくなったとか20世紀の神話だったとか、そういうことを真実であるかのように言っている人たちは、たぶん根っこのところがわかっていない。
ぼくら人間の根っこ、それは、人は平等で平和な社会をいつだって夢見るものだということ。だから社会主義はこれからも、姿形を変えてぼくらに未来永劫まとわりつくだろう。ぼくらが理想の社会を夢見つづける限り、社会主義はかならずそのバリエーションの中に入ってくるのだもの──決して実現しない夢として。社会主義がなくなるとしたら、それはぼくらが天国を夢見ることをやめたときだけだ。もちろん、前世紀最大の「夢」がたどりついた先は、ヒトラーもびっくりの大虐殺と、密告と監視によるスーパー管理社会だったのだけれども。
もちろん、理想郷のレシピは社会主義だけじゃない。人間はいろんな理想郷を夢想しつづけてきた。

「おはよう!こんにちは!そしてこれから会えなかったときのために、こんばんは!」
そう言ってトゥルーマンは、きょうもにこやかに職場へむかう。かれが住むのはシーヘブン。アメリカのどこかの海辺の街。そこはまさに、争いのない平和な町、「ヘブン」という名前のとおりの天国だった。クリアに抜けた青い空。低い町並み。アメリカ人の夢想する理想のサバービアが実体化した、おとぎ話のような町だ。

サバービア。
郊外、もしくは郊外居住者の生活スタイルを意味する英単語。




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