特集ワイド:狙っちゃう? 麻生氏「次はオレ」的な
毎日新聞 2013年01月21日 東京夕刊
◇幅きかす「Aライン」説 ポスト安倍のライバル排除の思惑も感じる
◇党内まとめる「長老」役 「半径2メートルの男」外交で本領、ネット世界で「影響力」
安倍晋三政権における麻生太郎副総理兼財務・金融担当相(72)の存在感が際立っている。アベノミクスは麻生氏が主導しアソウノミクスとも呼ばれ、安倍氏の価値観外交は麻生外相時の「自由と繁栄の弧」の焼き直しと言われる。麻生氏は再び首相の座を狙っているのか。【浦松丈二】
麻生氏や安倍氏の周辺で今、「Aライン」という言葉が飛び交っている。両氏と、やはりアルファベットの頭文字が同じ甘利明経済再生担当相の3人を指す。「スリーA」という言い方もある。「今後、この順番で政権を担うことを既定路線化しようとしているのです。もう一人の実力者、石破茂氏を首相レースからはじき出すという共通の思惑があります」(政治評論家の浅川博忠さん)
内閣人事や党幹部の顔ぶれをみると「Aライン」説はさらに強まる。自民党関係者が明かす。「幹事長として参院選勝利を義務づけられた石破氏、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加問題を抱える農水省のトップに座った林芳正氏、環境相兼原子力防災担当相として原発事故処理を担う石原伸晃氏。前回総裁選に立候補し、麻生氏が“ポスト安倍”に名乗りを上げるならライバルになる3人に難しい役職が振られた形になっています」。石原氏が親しい議員に「代わってもらえないだろうか」と打診したという話すら流れている。
麻生氏と安倍氏の関係はどうなのか。「安倍氏にとって麻生氏は、総裁選でいち早く支持を打ち出し当選を決定的にしてくれた恩人。麻生氏の祖父は吉田茂、安倍氏の祖父は岸信介という東大出の大宰相で、自らは私大出という境遇も似ている。政策面でも今は上げ潮路線、積極的な財政出動の時期だとの判断で一致しています」(浅川氏)
麻生氏は安倍政権での自らの役割を、年末に出演したテレビ番組でこう語っている。「党内の首相経験者は安倍総理と私の2人。私の当選回数はこれで11回、年も(安倍首相とは)14、15違うので、みんなに向かって『ちょっと待て』と言える。会社でもそうでしょうが、社長が何とかいうと、ちょっと待ってくださいとなかなか言いにくい。(自分は)同じ(首相)経験者として言いやすい……」
浅川氏が言う。「麻生氏は根が上から目線の人ですから、自分の方が年齢や当選回数は上、岸より吉田の方が偉いといった自負は少なからずあるはず。何かで一触即発、関係が壊れる恐れはあります」
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