特集ワイド:狙っちゃう? 麻生氏「次はオレ」的な
毎日新聞 2013年01月21日 東京夕刊
麻生氏が漫画愛好者であることはよく知られる。漫画家の弘兼憲史さんは、約10年前の出会いが忘れられない。「東海道新幹線に乗り合わせたので自己紹介したら、そうですか、そうですか、と愛くるしい笑顔になって……。私のことをご存じのようでした。普段は乱暴なべらんめえ調で悪ぶった感じがありますが、実際に会うと全く違う。後日、巻紙に墨痕鮮やかな達筆の手紙が届きました」。明るくて気さく。親しく付き合えば魅力が分かる−−「半径2メートルの男」と永田町で評される麻生氏の本領発揮である。
その後、雑誌で対談したり週刊誌の表紙を一緒に飾ったりした。「話をよく聞いてくれる方ですよ。秋葉原でオタクたちを前にトークショーをやったこともあったなあ」。外交を論じた麻生氏の07年の著書「自由と繁栄の弧」の解説は弘兼さんが書いている。
「『自由と繁栄の弧』を提唱したように、麻生さんの本領は外交にあると思います。企業の海外進出拠点を中国から他国に移す動きがありますが、先日もミャンマーを訪問した麻生さんは日本を代表して先頭に立って行動しています。あの人間性を武器に、相手国に好かれるだろうと期待しています」と弘兼さん。
再登板説については「自民党がこれほど強烈に再起するとは、ご本人も考えていなかったでしょう。再登板ではなく長老的な立場から党内のとりまとめに動くのではないか」と予想する。
■
JR秋葉原駅を降り、中央通りをしばらく北上すると、ビルの5階に達する巨大な看板が目に入る。ソファに腰掛けた麻生氏の絵と「ちょい悪オヤジ オレ達の太郎」の文字。かつて麻生氏をモチーフにしたイラスト入りのまんじゅうが売られていた場所だ。「看板の前で写真を撮っていく人もいますよ」。路上でチラシを配っていたメイド服姿の女性が言う。
麻生氏は選挙のたびに秋葉原で街頭演説をする。衆院選最終日の昨年12月15日夜には安倍氏と並んでマイクを握り、こう語った。「思い返せば3年3カ月前、極めて暑いさなかの選挙でした。時の自由民主党の総裁として大勢の人の先頭に立って戦いましたが、不徳の致すところ、力及ばず惨敗しました。多くの仲間を失いました」。さらに政権奪回を目指す決意をアピールすると、若者たちから熱狂的な声援が飛んだ。
小派閥を率いる麻生氏の勢力基盤の一つがネット上の人気だ。ネットと麻生氏を巡っては興味深い事実がある。