東京外為:円安進み一時85円台 輸出産業に追い風
毎日新聞 2012年12月26日 20時26分(最終更新 12月26日 23時32分)
26日の東京外国為替市場では円売り・ドル買いが進み、1年8カ月ぶりの円安・ドル高水準となる節目の1ドル=85円台をつけた。日本経済をけん引する輸出産業には明るい材料で、日経平均株価も上昇した。ただ、円安は小売業などにとって輸入で仕入れる際の価格が上がって不利になるほか、国内消費者にも電気代などの上昇を招く副作用がある。
円安が進んだのは、安倍晋三内閣による金融緩和の推進への期待に加え、同日公表の11月の日銀金融政策決定会合の議事要旨で、委員の一人が無期限の金融緩和に言及したことも影響した。
ただし海外では安倍内閣の姿勢を懸念する見方もある。米ウォールストリート・ジャーナル紙は24日朝刊1面で、「他国政府による通貨安の試みには、円安で対抗しなければならない」との安倍発言を取り上げ、「為替の報復措置は行き過ぎると市場を不安定にさせる」とのエコノミストの警告を紹介した。
円安を受けた26日の東京株式市場は、自動車や電機など輸出関連銘柄を中心に買いが先行。日経平均株価の終値は、前日比150円24銭高の1万230円36銭と、3月27日に付けた今年の最高値(1万255円15銭)に迫った。
自動車などの輸出産業の株価が上昇したのは、円安で収益環境が好転するためだ。12年度の想定為替レートを1ドル=79円とするトヨタ自動車の場合、円相場が想定より1円安くなれば年間の営業利益は約350億円増える(円高の場合は減少する)ことになる。
年末にかけての株高は、持ち合いなどで株式を保有する企業の業績を押し上げる効果も期待できる。野村証券の試算(上場企業1848社対象)では、9月末時点の含み益は3月末時点に比べ、39%減の4兆2200億円に落ち込んでいた。しかし、11月以降の株価上昇で、「年末には3月末時点の水準まで含み益が改善する可能性がある」(西山賢吾シニアストラテジスト)という。
ただし輸出企業の見方は総じて慎重だ。トヨタ自動車は現状の円相場について「すぐに業績にプラスのインパクトが出るものではない」と指摘。日産自動車も「80円台はまだ超円高であり、100円台に戻ってようやくニュートラル」と話している。大手電機幹部も「まだまだ瞬間風速。一喜一憂できない」の見方を示す。