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【転機 話しましょう】(50)静岡大教授の楊海英さん 己を見つめ生涯の仕事知る
――来日当初の思い出は?
「別府大(大分県別府市)の研究生として来日したのですが、お金がないので最初の1年は読売新聞の新聞奨学生でした。厳しい仕事ですが、学費と食住の面倒を見てくれて、給料も出る。そのお金をためて、翌年に国立民族学博物館に入りました。配達後に新聞を1部もらえるのが一番の楽しみでした」
――留学してすぐに天安門事件が起きました
「6月5日付の朝刊を配達した際、衝撃を受けました。1面に大きく、学生の死体だらけの天安門広場の写真が載っている。すごいスピードで配り終えて、むさぼるように読みました。涙が止まらなかった。殺されているのは漢人だけど、民族の枠を超えて、これは人類に対する犯罪だと思った。事件後、日本人の対中感情が極度に悪くなって、集金のときによく『中国人は嫌いだ』と言われた。そのたびに、俺は中国人なのか、と苦悩しましたね」
〈よう・かいえい〉1964(昭和39)年、中国・内モンゴル自治区オルドス生まれ。北京第二外国語学院大学日本語学科卒業。国立民族学博物館・総合研究大学院大学博士課程修了。平成18年から静岡大教授。23年、「墓標なき草原(上下巻)」(岩波書店)で第14回司馬遼太郎賞。著書に「草原と馬とモンゴル人」(NHKブックス)など。
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