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ライフ
【転機 話しましょう】(50)静岡大教授の楊海英さん 己を見つめ生涯の仕事知る
新しい知識と自由を求めて来日したのに、気がつけば、自身のルーツやあんなに恐れた当時の状況が研究の対象になっている。自身を見つめることが、ライフワークにつながった。
民族の歴史代弁
平成12年、日本への帰化申請が受理され、懸案はなくなった。21年刊行の「墓標なき草原」は、現地での聞き取りを中国側資料と照らし合わせ、文革中のモンゴル人虐殺が、漢人主導で当局も関与して行われたことを明らかにした労作だ。当時150万人弱だった内モンゴル人のうち、少なくとも10万人が殺害されたと推計する。しかし、責任者は誰も裁かれなかった。中国政府は、この問題を事実上黙殺している。「反論もできず死んだ人たちが、私に記録させ、語らせたのかもしれない。民族全体の歴史を代弁しているのだという重みを感じていた」
政治活動とは一線を置くが、中国政府からは危険人物とみなされるようになり、故郷にも帰りにくくなっている。しかし、書くことで人生が変わろうとも、自分にしか書けないことがあれば、やらなくてはならない。墓標なき草原に漂う声なき声に応じたのは、モンゴル人として、さらに人としての使命感からだ。
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