ライフ【転機 話しましょう】(50)静岡大教授の楊海英さん 己を見つめ生涯の仕事知る+(3/4ページ)(2012.1.14 07:00

  • [PR]

ライフ

  • メッセ
  • 印刷

【転機 話しましょう】
(50)静岡大教授の楊海英さん 己を見つめ生涯の仕事知る

2012.1.14 07:00 (3/4ページ)転機 話しましょう

 新しい知識と自由を求めて来日したのに、気がつけば、自身のルーツやあんなに恐れた当時の状況が研究の対象になっている。自身を見つめることが、ライフワークにつながった。

民族の歴史代弁

 平成12年、日本への帰化申請が受理され、懸案はなくなった。21年刊行の「墓標なき草原」は、現地での聞き取りを中国側資料と照らし合わせ、文革中のモンゴル人虐殺が、漢人主導で当局も関与して行われたことを明らかにした労作だ。当時150万人弱だった内モンゴル人のうち、少なくとも10万人が殺害されたと推計する。しかし、責任者は誰も裁かれなかった。中国政府は、この問題を事実上黙殺している。「反論もできず死んだ人たちが、私に記録させ、語らせたのかもしれない。民族全体の歴史を代弁しているのだという重みを感じていた」

 政治活動とは一線を置くが、中国政府からは危険人物とみなされるようになり、故郷にも帰りにくくなっている。しかし、書くことで人生が変わろうとも、自分にしか書けないことがあれば、やらなくてはならない。墓標なき草原に漂う声なき声に応じたのは、モンゴル人として、さらに人としての使命感からだ。

関連トピックス

関連ニュース

  • [PR]
  • [PR]

[PR] お役立ち情報

PR
PR

編集部リコメンド

このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。
© 2012 The Sankei Shimbun & Sankei Digital