なぜ、若い主婦はクックパッドを見てミツカン酢を買うのか
プレジデント 1月17日(木)9時30分配信
|
ミツカンMD本部MD企画部 加藤美侑 主に自社サイトの構築、プロモーションを担当。「人気ブロガーのチェックを欠かさずしていますね。twitterやfacebookのファンが多い方はやはり影響力があります」 |
■スーパーでレシピを検索できる仕組みも
「やさしいお酢」の発売とともに、商品のラベルにQRコード(携帯電話で読みこんでモバイルサイトに誘導する仕組み)を記載する試みにも挑戦した。
「携帯電話でレシピを検索する人が増えています。ユーザーがスーパーで商品を手にとり、何に使えるのかなって思ったときにすぐ検索できる。そんなサイトをつくりたかった」(前田さん)
モバイルサイトのレシピはパソコン用とは異なるものを用意した。
「モバイルだと使う食材が多かったり、長くスクロールするものは嫌われてすぐ閉じられてしまうんです。材料と工程が少なくて10分ほどで手軽につくれるレシピ、1人前から2人前の少人数向けのレシピを掲載しています」(加藤さん)
まさに現代のユーザーのニーズに沿った戦略といえる。ページビューは1年間で4倍近く増え、現在、主要な16品にQRコードを記載するに至っている。(※雑誌掲載当時)
「テレビや料理雑誌、ウェブ……。ユーザーがレシピに触れるコンタクトポイントはどんどん増えています。それに乗り遅れずに、ユーザーとの接点を模索していかなければならない」(前田さん)
接点が見つかれば、そこはユーザーのニーズを汲み取る絶好の機会にもなる。
「酢を使ったメニューが浮かばない。今夜の献立が決まらない。ユーザーの悩みを察知して応えていきたい」(前田さん)
生の声を拾って生かす。媒体が多岐にわたっても戦略の基本は変わらない。
■勝因は「見せたがり」ユーザーの活用 ●神戸大学大学院経営学研究科教授 小川 進/構成=宮内 健
ミツカンの事例の面白さは、他人に自分がつくった料理を見てもらいたいという「見せたがり」ユーザーの存在に気づき、上手に活用したことであろう。
インターネットの普及で情報余りの時代に突入した今、私たちには良い情報を人にあげたいという欲求が起こっている。この気持ちがレシピの投稿へとユーザーを動かす。
クックパッドでは誰かが投稿したレシピへ、他のユーザーがそれを元につくった料理のフォトレポート、略して「つくれぽ」を投稿できる。レシピの評価が高いほど、つくれぽの数が増える。投稿数が増えサイトが活性化すると、自分の嗜好に合ったレシピを発見しやすくなり、投稿はしないが「自分もつくってみたい」という層ができてくる。
クックパッドは「投稿」「模倣」「閲覧」という3層構造をつくり上げ、コミュニケーションの循環を生み出している。その潤滑油となるのが、ミツカンの「スゴだれ」のような巧みなネーミングである。検索によって人々はネット上を動く。インパクトのあるネーミングが新たなレシピを探すパスワードとなり、ユーザーを検索へと導く。
別の観点からこの事例を見ると、クックパッドはリードユーザーを見える化するツールともいえよう。消費者の中には企業が気づかない間に製品の革新的な使い方を考えつき、試作品までつくっている場合がある。こういった消費者はリードユーザーと呼ばれる。企業にとって、彼らの知恵を製品開発に活かすことがイノベーションの手法の1つとなる。
リードユーザーの発見には手間がかかる。ところがクックパッドではつくれぽの数を見れば、背後にどれだけ同じ意見を持っている人がいるかがわかる。そのため図らずもリードユーザーを顕在化する機能を果たしており、ユーザーの傾向をつかむ便利なツールとなっているのだ。
※すべて雑誌掲載当時
小檜山 想=文 的野弘路=撮影
最終更新:1月18日(金)10時10分
記事提供社からのご案内(外部サイト)
あなたの生産性を10倍に上げる |