【007は二度死ぬ】 原題:You Only Live Twice 日本公開:1967年6月 制作国:米国、英国 監督:Lewis Gilbert(ルイス・ギルバート) 出演:Sean Connery(ショーン・コネリー), 丹波哲郎, 若林映子, 浜美枝 ===== あらすじ(途中まで) ===== 米国とソ連との冷戦の時代。両国の宇宙船が、宇宙空間で何者かに奪われるという事件が起こり、互いに相手を疑いあって一触即発の事態となった。英国情報部は謎の宇宙船が日本近海に着陸したという情報を得て、米ソの戦争を回避するため、ジェームス・ボンドを日本へ派遣することにした。 ボンドは自分の正体を隠すため、香港で暗殺されたと偽装し、潜水艦から密かに日本へ上陸した。日本では公安のタイガー田中とその部下アキの協力を得て、大里化学工業という会社が関係していること、またマツ島に秘密基地があるらしいことを突き止めた。 ボンドはタイガーから忍者の特訓を受けると、日本人に変装し、マツ島の海女の婿養子として送り込まれることになった。偽装結婚の相手は、その島の出身のタイガーの部下で、キッシーという女性だ。 ===== 感想(ネタバレ) ===== ● 日本だあ! 当時、007の最新作は日本が舞台だと聞いて、どれほど興奮したことか。海外の映画と日本との関係など異次元としか思えない時代。公開と同時に、まさに映画館へダッシュという感じだった。どこのものだか固有名詞も分からぬままに、地下鉄やら城やら山やら、日本っぽいものがスクリーンに登場するたびに「おお、日本じゃん!」と感動。 もう、一丁上がりのお上りさん状態だった。 しかし、この映画、うっかり日本を紹介する映像などと思おうものなら珍百景の連続だ。 銀座四丁目交差点あたりに人力車が走る――惜しい! せめて祇園や東山界隈か、鎌倉なら「有り」なのに。蔵前国技館はスパイの秘密の接触場所、佐田の山親方がメッセンジャーだ。丸ノ内線の車両は内装が木張りのオフィス。紀尾井町のホテルニューオータニは怪しい化学会社で、しかも屋上のヘリポートの向こう側は大阪中之島になっている――ますます怪しい。駒沢通りを走っていた車は、あっという間に冨士スピードウェイで追走劇を展開し、巨大な磁石でヘリコプターに吊り上げられた敵の車は、わざわざ東京タワーが目立つ東京湾まで運ばれて投棄される。その頃、ボンド達が乗る車は神戸に到着。港の波止場は文字通り悪の巣窟だ。 ボンドはさらに西へ。姫路城はタイガー田中の秘密のスパイ養成所。しかも蔵や長屋の内部が秘密なのではなく、西の丸などの広場を含めた城郭全体がヒ・ミ・ツ! 姫路城のすぐ近くには鹿児島市の島津重富荘があって、赤い日傘に緋毛氈の広い庭園がとってもお洒落。 変装したボンドはいよいよ坊津の漁村へ潜入し、霧島連山の偽装された火口湖の下に秘密基地発見! てな具合に、面白さ200%。もちろんこうした映像にマジで突っ込むのはヤボを通り越してアホ。 実は撮影時に姫路城の城壁などを傷つけてしまったらしいのだが、これはイカン! もっとも当時の僕は、そんな古い城などどうでもいいじゃんという、無知馬鹿な子供だった。 ● ストーリーも珍談奇談 こうした日本の映像の珍妙さに目をつぶるとしても、この映画のストーリーはかなりムチャなところや矛盾が満載で、ほぼコント・レベルになっている。 人工衛星の打ち上げを小さな秘密基地でできるはずもないし、スペースシャトルのように地上と宇宙空間を行き来する宇宙船の造形もむちゃくちゃだ。ただし、サンダーバードなど、当時のロケットものの、いわばデフォルトのような設定で、ここを突っ込むのはヤボというべきだろう。時代を反映した設定なのだ。 日本の特殊部隊が剣術や忍者の伝統を受け継ぐというのは少しも珍妙ではない。ただ、ちょっと大げさ過ぎるだけで……いや、大げさ過ぎて笑っちゃうところかな。 このストーリーの最大の矛盾は、米ソがあまりに簡単に戦争を始めようとするところだろう。そんな決断、もっと真相を究明し、あらゆる解決策を講じてからでしょう。 なお、裏で画策しているのは、米ソ共倒れを願う東洋系の某国。う〜む、ある意味、リアル過ぎて笑えない。 細かいところの矛盾でひどいのは、敵の秘密基地がある場所と海岸までの距離や地理など。 数マイルも離れているらしいのだが、キャシーはそこをビキニで往復する。彼女のスタイルを映すためとはいえ、ムチャしやがって! しかも地上には敵の監視や警備は一切なく、せいぜい稀にヘリコプターがパトロールするくらいらしい。ますますムチャな秘密基地だ。 ● 役者 ジェームズ・ボンド役はショーン・コネリーだけど、あまりやる気を感じない。怠(だる)そうに背中を丸めていることが多いような気がする。 むしろタイガー田中を演じた丹波哲郎のほうが格好いい。発音のきれいでない英語を朗々としゃべるのを聞くと、すげえ心臓だとちょっと感動してしまう。 アキ役は若林映子(アキコ)。外国のモデル体系のボンドガールと比べればスタイルは見劣りするけれど、雰囲気は少しも遜色無いと思う。 で、キッシーを演じたのが浜美枝。日本人としてスタイルは良いほうだけど、やはり歴代のボンドガールと比較してはかわいそう。まあ、日本人が見ると、顔の可愛らしさは群を抜いているように思えてしまう。特に結婚式で初めて顔を合わせるときの角隠しの下の表情とか、朝焼けの海での表情など、ぽっちゃりした輪郭やくりっとした目がすごくいい。 なお、映画の終盤、敵のヘリコプターに狙われ、ヒップを見せて海に潜る時は、ショーン・コネリーの妻ダイアン・シレントが代役をしていたらしい。 ついでに。松岡きっこがちらりと出ていると知ったのは、もっとずっと後になってから。 ● 熱が冷めて 見ているときは珍妙さを感じなかった。それほど映像に熱中していたからだ。 でも何か月かたって思い出すたびに、珍妙さが気になるようになり、いつの間にか、この映画だけでなく、007シリーズそのものに興味を持たなくなってしまった。 身近な映像で極度に興奮しただけに、逆にすっかり熱が冷めてしまったのだろう。 以後、このシリーズを観た印象は途切れることになる。 007シリーズの感想 ⇒ 007 ドクター・ノオ ⇒ 007 ロシアより愛をこめて ⇒ 007 ゴールドフィンガー ⇒ 007 サンダーボール作戦 ⇒ このブログのトップへ ⇒ 映画(全般)ブログランキングへ ⇒ にほんブログ村 映画ブログへ まあ、オッサンの感想文です。 |
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