取り調べ可視化:「全面」「裁量」併記…制度化へ初の試案
毎日新聞 2013年01月18日 21時26分(最終更新 01月18日 22時56分)
新しい刑事司法制度の在り方を検討している法制審議会(法相の諮問機関)の特別部会で18日、本田勝彦部会長(日本たばこ産業顧問)は基本構想案(部会長試案)を示した。容疑者の取り調べでの録音・録画(可視化)については、裁判員裁判の対象罪名で逮捕された場合は原則的に義務付ける▽取調官の一定の裁量に委ねる−−の両案を併記した。可視化の制度化に向けて初めて示された案だが、この日の部会では強い反発が相次いだ。
構想案は、検察や警察の試行状況から可視化の有用性を認め(1)原則的に全過程の録音・録画を義務付け、一定の例外(取り調べや捜査に深刻な支障が生じうる場合など)を定める(2)録音・録画の範囲を取調官の一定の裁量に委ねる−−の両案を併記。(1)の対象事件について「重大事件で取り調べ状況を巡る争いが生じやすく、分かりやすい立証が求められる」として裁判員裁判対象の逮捕事案とする案を示した。容疑者以外の参考人については「一律に対象とする必要性は乏しい」と除外した。
だが、部会では(2)についてメンバーから反対意見が続出。裁判員裁判の対象罪名に絞る(1)についても、同部会は大阪地検特捜部の郵便不正事件と証拠改ざん・隠蔽(いんぺい)事件を受けて発足しながら同種事件が対象外となるため「検察の取り調べは全て対象とすべきだ」との意見が出された。
一方、構想案では、現在は薬物、銃器、組織的殺人、集団密航の4類型に限られる「通信傍受」の適用範囲を、振り込め詐欺や組織窃盗などに広げることを提案。通信事業者の立ち会いや傍受記録の封印など、手続きを迅速に進められない運用状況の合理化も求めた。
従来は「司法取引」と呼ばれ、容疑者や被告が捜査に協力すれば有利な扱いを受けられる「協議・合意制度」にも言及。有用性を指摘しつつ「(無実の人を)事件に引き込んだりする危険性があるとの指摘も踏まえ、具体的に検討する」との表現にとどめた。【伊藤一郎】