―――劇中歌として使われている「旅人。」は、夢へ向かっている歌詞が映画とよく合っていると思うんですが、このお話が決まる前に出来た曲なんですよね?

平の怒っ濤.:そうですね。バンドを含め、こういう芸術の仕事をしている人は、どれだけベテランだろうが何だろうが、夢を追う人種だと思うんです。ロマンチストでして。「旅人。」の歌詞は、去年へーけを組んだ時に生まれたものなんです。‘ソロのコタニキンヤ.では表現できないものができるといいな’と思って描いたのがこの歌なので、バンドマンのイメージというのは確かに入ってると思います。

―――うまい具合に映画とリンクしたのですね。そんなバンドマンの目線から観て、映画はいかがでしたか?

平の怒っ濤.:素晴らしかったです。漫画を読んでいたので、そのイメージを持って映画を観ました。原作を思い切りいじっていて、期待を裏切られる映画もあるんですが、それが全然なくて。内容が少しずつ変わってはいたんですが、とても気持ちよく見られました。

―――ちなみに、へーけのメンバーをキャラクターに例えると誰が誰に近いですか?

平の怒っ濤.:うーん、誰でしょうね…。すごく難しい質問ですね…。

―――そうなんですか? へーけの皆さんは、どんな性格なんですか?

平の怒っ濤.:へーけは3人ともバーミヤンズのメンバーの要素があるんです。サディスティックなのは、俺もキテさん(平の奇天烈・Bass)にも当てはまると思うし。チャイナの焼飯(Guitar)は冷静に見えて、緊張しい(笑)。タクの熱い想いが空回りしていて思い込みが激しいところは、俺にちょっとありますね。とにかく突っ走って凹むとちょい重いっていう。

天野:3人って仲良いんですか?

平の怒っ濤.:めっちゃ仲良いですよ。仲良いんで、愛のあるイジリ合いがありつつ、です。

―――天野監督は、これまでにへーけのライブを観たことはあったのですか?

天野:ロック系のライブは、あまり見る機会がないんですよ。でも、へーけのライブはとても良かったです。知ってるアニソンもあったし。どこかで聴いたことがあるけど思い出せない、なんていう曲もたくさんあって。

平の怒っ濤.:監督は、コンサートはあまり行かれないんですか?

天野:ジャンルは違いますが、『REGGAE JAPAN SPLASH』は、もう少し若い頃に毎年行っていました。学生時代は、THE BLUE HEARTSとかの派手なパフォーマンス系が大好きでした。今のザ・クロマニヨンズに至るまでずっとアルバムは買ってますね。

平の怒っ濤.:それ、すごいロック大好きじゃないですか! 十分ですよ。

―――先ほど‘ロックは…’とおっしゃっておましたが(笑)!?

天野:そういえば、そういう面もありましたねぇ(笑)。あと、アニソンは馴染みはあります。というのも、初期の頃は『アイドルプロジェクト』などアニメの脚本を描くことが多かったんです。高校時代8ミリフィルムで映画を撮ることになったのも、中学時代からアニメーションを創っていたりと、8ミリを前から触っていたからなんです。漫画も、きちんとコマ割りしたりして、ペンで描いていました。

―――本格的ですね。

天野:当時は漫画家になろうと思っていましたから。高校に入って、映画に出会ったら‘やっぱり映画だ!’ってなっちゃって。なので、若い頃はカラオケにいくとアニソンばかり歌っていた時期もあります。

平の怒っ濤.:この作品って章立てされていますが、監督のお気に入りのシーンってどこですか?

天野:3章目ですかね。ユダというひ弱で面倒くさい男が出てくるんですが、あれ結構好きなんですよ。言われた言葉が心にグサって刺さる時の、受けの表情があるじゃないですか。‘そういうのを撮らないと’と思っていたので、それを中心に編集しているんですね。ユダばかり見ていると、彼の心の動きがわかるように繋いでいるんです。非常に空元気なんだけど、実はとてもクヨクヨしているのが伝われば勝ちかなと思っていて。ついつい見直してしまいます。

―――どのキャラが一番創りやすかったですか?

天野:タクですね。やはり一番普通というか、普通なんだけど気弱で、いつもいじめられているみたいになっちゃうじゃないですか(笑)。頑張っている姿が好きなので、そういう姿を描くのはすごくやりやすかったですね。ああいう感じの人は好きですし。

―――それは、監督にもタクと共通するものがあるとか…?

天野:あると思いますね。登場人物は、どうしても自分の中のものが投影されるものだと思うんです。

―――ユダみたいな一面も持っていたり?

天野:あると思いますよ。‘俺がそんなこと気にするかよ’って言いながらもクヨクヨしたり、‘でもそんなところ見せられない…’なんてところもあるのかななんてね。

平の怒っ濤.:そんなの全然ありますよね! でも、うまいこと人間模様が出ていますよね。

天野:そういうのをむき出しに出来たら勝ちかなと思うんです。‘みんな本当のことなんていえないけど、見たらわかるよね’という描き方をしたかったので、表情やリアクションはオーバーに演じていただきました。20年前と今では、映画の描き方って変わっているんですね。表情で読み取らせるといったことがなくなっているんです。少し大げさに、はっきり伝えなければいけないので、脚本を書く時も演出する時も意識してそうしました。

―――怒っ濤.さんは、フィルムを通して自分たちのライブを俯瞰で観られて、いかがでしたか?

平の怒っ濤.:映画館でまず観たいですよね。ライブのアンコールに撮影をしたんですが、本編の汗が引かないまま歌ったので飛び散る汗がすごかったです(笑)。けど、それが綺麗に写っていたのでいいなって思っておりました。でも、何より劇場で観たい!

―――ファンの方もちょこちょこ映ってましたけど、みんな笑顔でしたよね。

平の怒っ濤.:ファンの子たちって、ああいう中継やカメラが入るといつも以上に騒ぐんです。だったら‘毎回やっとけよ、ヲマエ達っ!’みたいな(笑)。

(一同爆笑)

平の怒っ濤.:そりゃ興奮するのは分かるんですけどね(笑)。毎回黄色い声が欲しいな…と。

天野:最前列にかじりついて撮っていたんですけど、やはりぐっと入っていけますね。一体感があって周りも興奮しているので、トランス状態になりました。

平の怒っ濤.:監督の‘OK!’という言葉で、監督が興奮してくださっているのがとても伝わりました。

天野:実は、編集している時すごく面白くて。キメ所や一番目が輝いているところなど、気持ち的にグッと来たところを繋いでいく作業が、もうずっとやっててもいいくらい楽しかったです。