2月11日に公開される映画『ソウル・オブ・ロック』。独特のテンポで進むシュールな同名の漫画を実写化した作品だが、原作にとても忠実な作品ということで注目度が高まっている。ニコニコ動画での活動をきっかけに人気急上昇中のアニソンカバーバンド・へーけが劇中歌を担当しており、さらに作中にも登場している。監督の天野裕充氏とへーけのvocal・平の怒っ濤.氏に、今作について熱く語っていただいた。


平の怒っ濤.:原作の雰囲気にとても忠実な映画ですよね。

天野:あの雰囲気自体がいいと思ったので、原作を壊さずに脚色を始めたんです。自分なりに物語を作ろうと思えばできたと思いますが、感じが変わっちゃうと思ったんですね。

平の怒っ濤.:そうですね。

天野:面白さはそのまま生かしたいと思って、エピソードをまるまる創っているのはありますが、それは、ここまで描いてきた感覚を頼りに‘こんな話にしたらどうだろう?’と思って描いたので。結構馴染んでいるんじゃないかなと思います。

平の怒っ濤.:そうなんですか。漫画も読んでいたので、新しいエピソードはどうされたのかなと思っていたんです。

天野:まるまる思い付きです。

―――天野監督は、もともと原作は読んでいたのですか?

天野:今回は、プロデューサーから‘これをやりたい’という話があって始めたんです。‘こういうのを脚色するのってなかなか難しくて困ってるんだけど…できる?’って言われて、‘できます’と。

―――漫画の映像化は難しいといわれていますが、プレッシャーはありませんでしたか?

天野:私は、オリジナルですべて描くよりは、原作があるものを脚色して仕上げるという方が得意だと思うんですね。きっとそれは、私が作家性よりも監督系の素質の方が強いからだと思うんです。原作を読んでいて、‘自分が表現するとしたらどうするかな?’‘もうちょっとここを強調しよう’とか考えていくことの方が多いので。原作のファンを失望させないように、とかは考えないわけではないですが、結構自信はあるんです。なので、プレッシャーはほぼありませんでした。

―――実写化するにあたって具体的にこだわった点はどこですか?

天野:この作品の魅力って、“イタい”笑いだと思うんですよ。

平の怒っ濤.:かなりシュールですよね。

天野:うまく言えないけど、思い込みが空回りしているんだけど、空回りしているとも気付かず、‘走ってるぜ!’っていう充実感だけがあるんですね。だけど、それに現実がついてきてないということに、お互いのさりげない一言とかで気が付いちゃったりして。傷付き傷付け合うみたいな。ところが、しばらくすると、それをも肯定していったりするんですよ。‘傷付け合うのがロックなんじゃねえのか?’と。

―――ロックバンドに対する風刺を込めているのかと思ったんですが、監督自身もそういうことを表現したかったのですか?

天野:バンドへの風刺というのはないです。私自身、バンド活動はおろか音楽は全くやっていないので。だけど、高校時代くらいから、ずっと憧れがあったと思うんです。

平の怒っ濤.:そうなんですか!

天野:映画を始めたのが高校からなんですが、その頃周りはみんな音楽をやっていたんです。‘映画ってすごく合うな’って思って、大学に入ったりしてフィルムを回したりしてても、何となく‘音楽やりたい’って思いはあって。といっても楽器を習うわけでもなく…。そのまま年を取ってしまいました(笑)。

―――へーけとの出会いもこの映画がきっかけですか?

天野:はい。プロデューサーの一人である森角威之氏にへーけを勧められ、資料を頂いたのが始まりです。

―――へーけに決めたきっかけって何ですか?

天野:森角プロデューサーにへーけを勧められ、‘どういうバンドですか?’と聞いたら、わー!っとしゃべってきて。それがすごく良かったんです。学ランを着て狐の覆面でニコ動に出てすぐ、‘この高い技術を持った人たちは一体誰なんだ?’と話題になり、どんどんファンが増えた、という話がとても興味深くて。これはいける、と。サンプルを聴かせていただく前にほぼ決めていたんです。結果的には大成功だったと思っています。

平の怒っ濤.:そうだったんですね。ありがとうございます。