勝手に歌謡ベストテン【KAT-TEN】

音楽ライター(歌謡曲愛好家)濱口英樹が勝手に選ぶ歌謡曲のテーマ別ベストテン


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5月31日に亡くなった尾崎紀世彦さんを偲んで、“キーヨ特集”を連載中です。

今回はまずこの映像からご覧ください。

6月3日にON AIRされた『報道STATION SUNDAY』(テレ朝系)
“ニュースの顔”における追悼特集です。


この種の報道番組にしては異例の長さ。
8分以上という扱いは、時代を築いた歌手、
キーヨへのリスペクトが感じられます。

ただ1つ残念だったのはナレーションでケアレスミスがあったこと。

―「また逢う日まで」がヒットしたのは尾崎さんが39歳のとき

番組内でも訂正されましたが、正しくは28歳。
確かに“遅咲き”には違いないけれど、
この程度のチェックはきちんとしてほしかったですね。

それはともかく、現在のTVの主要視聴者層が
F3・M3(50歳以上の男女)であることを考えると、
今後、追悼番組が制作されることもあるかもしれません。

CD/DVDのリリースとともに期待したいところです。


ということで。

そろそろランキングの発表にまいりましょう。

<緊急追悼特集>
尾崎紀世彦シングルセールスベストテン


今回は第5位から~カウントダウン!
グー


5位 ふたりは若かった(72年3月発売/最高11位/13.5万枚)
勝手に歌謡ベストテン【KAT-TEN】-5ふたりは若かった
作詞:阿久悠 作曲・編曲:筒美京平


「また逢う日まで」の後日談ともとれるロッカバラードの名作。
この年(72年)5月に開催された第1回東京音楽祭では
本作で3位入賞を果たしています。
なんとフリオ・イグレシアス(銀賞)よりも上位だったのですね。

キーヨのボーカルはときに力強く、ときにつつみこむように優しく、
まさに緩急自在。こんな風に歌えたら気持ちいいだろうなぁ。
これ(↓)は95年、52歳のときの映像。オトナの余裕が感じられます。


ちなみにジャケットにはこんなコピーが。

<'72尾崎紀世彦ラブ・ロック・サウンドに挑戦!>

当時はシングルにもこの手のコピーが入っていたんですね。


4位 こころの炎燃やしただけで/ゴッドファーザー~愛のテーマ
   (72年7月発売/最高9位/23.4万枚)
 
勝手に歌謡ベストテン【KAT-TEN】-4こころの炎燃やしただけで
「こころ~」作詞:なぎはるお 作曲・編曲:筒美京平
「ゴッド~」日本語詞:千家和也 作曲:Nino Rota 編曲:前田憲男


当時としては珍しい両A面。
「こころの~」はわずか2分20秒という短さながら
一篇の映画に匹敵する濃密な愛を歌ったエモーショナルなナンバー。
(2)で紹介した「かがやける愛の日に」の映像の後半に
ライブで歌うキーヨの姿が収められています。
よかったらそちらもぜひ。

かたや「ゴッドファーザー」は、
ジャケットに<日本語本命盤!>とあるように各社競作となり、
国内ではアンディ・ウイリアムス盤(最高3位/40.9万枚)に次ぐヒットを記録しました。

映画がイタリアンマフィアの物語ということもあって、
「アンディよりもキーヨの方がイメージに近い!」
と思ったのはワタクシだけではないはず。

では72年の紅白の映像から、
キーヨならではの世界をたっぷりご鑑賞ください。



3位 愛する人はひとり(71年11月発売/最高2位/39.3万枚)
勝手に歌謡ベストテン【KAT-TEN】-3愛する人はひとり
作詞:阿久悠 作曲・編曲:筒美京平


個人的にこの歌には(ドラえもんの)ジャイアンのイメージが・・・笑
原っぱに友達を無理やり集めて
「剛田武リサイタル」を開くのがお約束なわけですが、
当時のマンガでは♪愛する人はひとり~ と歌っていたんですよね。

当然、メロディーは聴こえないので、本作かどうかは分からないけど、
子ども心に「あ~、やっぱり本人は実力派のつもりなんだ」と思ったものです(^^ゞ

ちなみにジャケットのコピーは
<燃えつきた愛の十字架を背おった男ひとり!キヨの新しい発見!>
その名の通り、それ以前のシングル3作とは異なる
スピード感あふれる作風で新境地を開拓したといえるでしょう。

こちらも25周年記念リサイタルの映像から。



2位 さよならをもう一度(71年7月発売/最高2位/44.4万枚)
勝手に歌謡ベストテン【KAT-TEN】-2さよならをもう一度
作詞:阿久悠 作曲・編曲:川口真


“さよなら”は愛の言葉さ・・・。
「また逢う日まで」に続き尾崎紀世彦が又々放つ大ヒット!!


とジャケットにあるように、出世作「また逢う日まで」に続く3rdシングル。

デビュー曲が山上路夫×筒美京平、セカンドが阿久悠×筒美京平、
3作目ちなる本作が阿久悠×川口真。
初期はいろんな作家との相性を探っていたのでしょうね。

ちなみに上記の方々は今でこそビッグネームだけど、
当時はいずれも新進気鋭の若手作家。
日音のプロデューサーだった恒川光昭氏のもと
「新しい音楽を作ろう」という志が
これらの名作群を生み出したといえるでしょう。

そう、キーヨは当時、新興の音楽出版社だった日音が送り出した
第1号アーティストでもあるのです。

こちらの映像は90年代半ばでしょうか。
発売当時の歌唱シーンが織り込まれたり、
指笛を鳴らしたり、ウインクを決めたり・・・ファンならずとも必見です!


1位 また逢う日まで(71年3月発売/最高1位/95.6万枚)
勝手に歌謡ベストテン【KAT-TEN】-1また逢う日まで
作詞:阿久悠 作曲・編曲:筒美京平


やはり1位はこの曲でした。
今にして思うと、この曲が売れすぎたことが
キーヨにとってはある種の枷となってしまったのかも。

いつの時代もこの曲を求められて、テレビで歌うのもほとんどがこの1曲。
内心、「またかよ」とヘキエキしたこともあるだろうに、
彼の偉大なところは封印などしなかったこと。
逆に言うと、毎回、歌い方を変えたのは
キーヨなりのささやかな抵抗だったのかもしれませんが。

ところで歌謡史に燦然と輝く本作は、
実は2度のリメイクを経て誕生したいわくつきの作品。
最初はエアコンのCMソングとして(結局ボツに)、
2度目はズー・ニー・ヴーの「ひとりの悲しみ」として。

京平先生によると
「あと1年遅かったら、売れっ子作詞家になった阿久さんは
書き直しに応じなかったかもしれない」ということなので、
このヒットは奇跡的なタイミングで誕生したということですね。

では最後に
<スケールの大きさと抜群のフィーリングで圧倒する歌謡界待望の大型歌手>
の歌声をどうぞ。
71年の日本歌謡大賞&日本レコード大賞受賞曲です。



ということで、キーヨ特集はこれにてひと区切り。
皆さんのお気に入りは何位でしたでしょうか??


※今回紹介した作品は、いずれもこのベスト盤に収録されています。

『ザ・プレミアムベスト/尾崎紀世彦』

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