コリン・パウエルの自伝的一冊より、とても印象的な箇所があったのでシェア。
「リスクを負っているのは君だけ」ルール
「リスクを負っているのは君だけ」ルールを学んだのは、国家安全保障担当次席補佐官をしていた1987年、初めて出演した日曜朝の番組が終わった直後のことだ。
(中略)番組終了間際、レギュラーメンバーの有名記者がマイクをつかみ、いつものけんか腰でこうたずねたのだ。
「なぜあなたを信じなければならないのですか?あなたは軍人だ。国家安全保障会議で軍部が絡んだスキャンダル、イラン・コントラがあったばかりのいま、なぜあなたを信じなければならないのですか?」
残り時間は30秒もなかったが、自分はどういう人物で、だから信頼に値するとうまく説明ができた。そう思ったので、番組終了後、その記者に、あのやりとりは私の勝ちだと思うと声をかけた。私の無邪気な言葉に彼はにっこりした。
「将軍。あなたが報道関係者とかかわるとき、リスクを負っているのはあなただけです。私に負けはありません」
今も忘れられない一言だった。
この構造は要人に限らず、色々なところで見られるものですよね。企業が何かの発表をする際はもちろん、ぼくのような個人ブロガーですら「リスクを負っているのは自分だけ」という状況に陥ることは頻繁です。
コリン・パウエルがそうであったように、「リスクを負っているのは自分だけ」ということに、当事者である自分は意外と気づきにくいものです。相手を負かしてやろう!と意気込んでも、実質、相手は負けようがなかったりするんですね。
時間と体力は有限ですから、リスクを背負っていない相手と無駄にやり合うことは避けなければなりません。ぼくは匿名のアカウントに粘着されつづけていますが、どうやっても負けない彼らと戦いつづけても、徒労に終わるでしょう。
戦う際には、相手がリスクを背負っているかどうかを見極めることが大切です。ほとんどの場合、相手は安全地帯から攻撃してきます。スルーしてもなんら問題がない場合は、そういう卑劣な攻撃は無視するべきです。
リスクを負って挑んでくる相手に対しては、真摯に向き合う価値があるでしょう。それはちょうど、スポーツマンシップが遵守された試合のようなものです。相手と自分が対等で、相互に敬意を抱いており、「負けるかもしれない」という緊張感が場に張りつめているような状態ですね。
よく言うように、戦略とは、戦を略すと書いて戦略です。相手が背負っているリスク度合いを勘案すること、いいかえれば勝てない戦いを避けることは、戦っていく上で重要なポイントとなるでしょう。
その他、非常に面白いエピソードがてんこ盛り。この厚さと内容で1,785円は安いです。
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