例えば、薬局は紙の手帳に薬剤の情報を記載することで患者に情報提供をしたとみなされ、調剤報酬に算定できる。だが、その際の手段は文書などに限られ、電子データだと情報提供には該当しない。
電子版のシステムの運用は薬局の“持ち出し”となり、薬局関係者からは「ボランティアのようなもの」との声も漏れる。
薬局によって異なるシステムによる規格が複数出そろってくると、「患者に混乱をもたらしかねない」(厚労省医政)との懸念が増す。
どの患者にどんな薬が処方されたかは高度な個人情報だ。日本薬剤師会は「(電子版お薬手帳の)情報の2次利用などが国民に大きな不利益を与える可能性がある」との見解をすでに示しており、厚労省も「慎重な議論が必要」としている。
「どこでもMY病院構想」とは
医療の受診記録や健診データなどを電子化しパソコンなどを用いて患者自身で一元管理する。自分で生活習慣病予防に役立てたり、災害や事故など緊急時には薬歴などの記録をスムーズに医療機関に伝えるツールとしても使う。検査や投薬の重複を避けられるなどの効果も期待でき、医療の安全性を高めるだけでなく、長期的には医療費抑制にもつながる。