007v-labo
約12年という決して長くない作家生活で原作者イアン・フレミングが来日、取材をもって書き上げた「007
は二度死ぬ」は、当然ながら日本人なら無視できない作品であります。原作の内容が「女王陛下の007」 とボンドのメンタルな部分が地続きであるので、映画化順が逆になった当作品はその部分を含め、登場人 物名とわずかなプロット以外はまるで別の内容となりました。当時顕著であった米ソの宇宙進出競争をスト ーリーに巧みに取り入れ、前作「サンダーボール作戦」をさらに上回る派手な演出は、原作のこじんまりとし た怪奇性のあるクライマックスシーンとは真逆のSF色の濃い作品でありながら、外国人が期待するお約束 の忍者部隊の活躍もたっぷりとあり、たいへん賑々しい内容である。日本が舞台の作品と銘うっていなが ら、実際は全く日本ロケがされていないインチキ外国映画とは一線を画する娯楽大作であることに間違いは ないだろう。今でも語り草のスペクターの巨大火山基地は、その後の「ド派手路線作品」に色濃く影響を与 え、ここ数年で発売された007のTVゲームにも似たようなデザインの敵基地が最終ステージに出ていたり するほど代表的な007的デザインと言えよう。監督のルイス・ギルバートは、その後「私を愛したスパイ」 「ムーンレイカー」と、「国家にとって大事な兵器等の強奪」「ボンドガールは他国の情報員」「あり得ない巨 大敵アジトとその大爆破」という共通項でくくられる作品群の監督としてファンの心に残ります。クライマック スの敵アジトの爆破シーンは、映画館で見ると目が痛くなるくらいの煌きだったことは生涯忘れないでしょう (笑)。ちなみに、007映画の公式なリバイバル・ロードショーは、この作品で終わっている。
このLDの最大の特徴は、何といっても音声が「擬似ステレオ」であることでしょう。SEなどは左右の振り分け
も良くできていて効果的なのですが、BGMの音レベルが一部不安定になるところもあり、他のモノラル音声 の作品には採用されなかったことから、あくまでこれだけの実験的な試みなのだったのかもしれない。リトル ネリーの空中バトルシーンをイメージしたポスターデザインジャケットがカッコ良い。
「ロシアより愛をこめて」と同じく、A面とB面に切り替わる際に欠落したシーンがある。SIDEBはソ連側のロ
ケット発射シーンのカウントダウンの「3」に当たる部分(約一秒)が無く、「2」から始まってしまうのである。
あの火山基地のダイナミズムは、シネスコ画面でないと楽しめませんね。それにしても、リバイバル時のポ
スター&チラシデザインをはめ込んだだけのジャケットデザインは投げやりだなぁ。 あるが、一部の映像マスターフィルムにかなり目立つ傷があるのが難点であった。上に上げたようなフィル ムが切れているようなマスターでも平然と使われていたのである(日本人側の主役ともいえる、丹波哲郎の 顔がまっぷたつ・・・)
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