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科学技術政策の司令塔をもっと強く

2013/1/21付
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 安倍政権が日本経済再生本部などを設けて政策づくりの態勢を整えるなか、置き去りになっている課題がある。科学技術政策の司令塔である総合科学技術会議(議長・安倍晋三首相)が、学界や産業界出身の議員の任期切れで、機能を停止している問題だ。

 日本が停滞から脱するため、新しい産業や雇用を生む有望技術に投資したり、独創心ある研究者を育てたりするのはきわめて重要だ。その戦略を練る総合科技会議の役割は重い。政府は速やかに後任の人事案を決め、月内召集の国会で同意を得るべきだ。同会議の権限強化も真剣に考えてほしい。

 総合科技会議は科学技術担当相ら閣僚と有識者の計14人の議員からなり、半数以上を有識者とする決まりがある。だが今月5日に4人の有識者の任期が切れ、政権交代の影響で後任が決まらず、会議を開けない事態が続いている。

 政府は6月にまとめる成長戦略づくりで、今週始動する産業競争力会議と総合科技会議が連携して取り組むとした。だが総合科技会議が機能停止のままで、どうするのか。同会議には政府の科学技術予算をチェックする役目もあり、空白の長期化は許されない。

 後任選びでは、世界の科学技術の動向に通じ、首相の知恵袋になれる人材を選んでほしい。欧米では有力科学者らを「科学顧問」に起用し、政府首脳に直接進言できる体制をとる国が多い。科学技術と産業、社会のかかわりが深まるなか、学界や産業界の声を政治に的確に届ける助言役が要る。

 同会議を名実ともに科学技術政策の司令塔にするには、組織や権限の見直しも避けて通れない。

 国の研究開発は以前から省庁縦割りの弊害が指摘されてきた。例えばiPS細胞が注目される再生医療では、基礎研究を文部科学省、臨床応用を厚生労働省、産業育成を経済産業省がバラバラに担っている。このため一体的な実用化戦略を描けず、各省庁の予算が重複する例も少なくない。

 省庁が独自に予算要求し、総合科技会議が「調整」するいまの方式では、縦割りの克服は難しい。重要な研究分野では同会議に予算要求の権限を与え、関係省庁に配分する方式は一案だろう。

 技術開発力の強さは日本の強みとされてきたが、最近は中国などの台頭で陰りがみえる。それを立て直すためにも、科学技術政策の司令塔強化が欠かせない。

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