円城塔インタビュー詳報:故・伊藤計劃との共著「屍者の帝国」を完成させて
2012年09月06日
編集 結局プロットといっても、河出の企画会議にかけるための企画書用に書いてくださったものにすぎないんです。面白そうにあおってあるけれど、あらすじ的なことはほとんど決まっていない。最後も「さあワトソンの冒険やいかに!」みたいなノリだけで。
円城 「鹿児島の秘密基地で見たものは!」とかあって(笑い)。どう見てもそれ、「007は二度死ぬ」。「(小説で実際には)使わないだろうこれ!」と(笑い)。
編集 プロットにあることの大半はプロローグを読めば分かる内容なんです。プロットは(全体の)設計図じゃないんです。
円城 雰囲気、ですよね。結局、年代をどれだけ厳密にやるかなんですが、厳密にやると大久保利通はもう暗殺されていたり。「(英語を)しゃべる、しゃべらない関係ないじゃん!」っていう(笑い)。伊藤計劃が書くんであれば、人物の没年や、田原坂の戦いが起きた年などを史実とずらしたっていいんですよ。僕だとどうしようもない。「なんでずらしてるんだ」って答えようがないんで、そこは史実に準拠しようと。最初は、川路(利良)が抜刀隊を率いてアフガニスタンに行くっていうのをちょっとやったんですけど、変えすぎなんですよね。論拠がない。やりたいけど維持できない。改変の兼ね合い、ってあるんですよ。
編集 フィクションであるコナン・ドイルの「ホームズ」も「史実」として扱うならば、ワトソンがアフガンに行くのが1878年で、ホームズと出会いベーカー街で同居を始めるのが1881年。ワトソンの冒険はこの期間に限定されることになる。
円城 (動かさないのは)「ワトソンが主人公」と、あとワトソンを日本にどう行かせようか本人が悩んでいたので「日本に行かせる」。絶対、物語をヨーロッパだけで展開させたほうが楽なんですよ。この時期、日本に内乱ないですし。