録画していた完成ドリームハウスをやっと観た。
マンションリノベが酷いという前評判を聞いて、気になっていたのだ。
酷いものだった。
リノベーション業界全体のイメージを悪くしてしまったと言っても良い。
救いは、「アレは、酷いリノベーションだった」と個別事例として捉えてもらっていることだ。
迷惑にならないように具体例はボカした上で、何がどう良くなかったのか、どうすべきだったのかを解説してみたい。
良く「国土交通省の定義によれば」などと書いてあることがあるが、国交省は一貫して「リフォーム」という単語を用いている。((と、聞いたが自分で探してみたところ、「大都市のリノベーション戦略」等、違う意味の単語として国交省内で使われているようだ。))
今回の完成ドリームハウスに出ていた空間ディレクターや建築家が所属しているオリエンタル産業もリフォーム工事登録会社としてきちんと登録されている。
そもそも和製英語たる「リフォーム」にあたる英語が、「Renovation」だ。
だからまあ、「住宅の改装で、間取りを変えて雰囲気も変えましょう!という意味」ぐらいにとっておくのが無難だ。
さて、では何が酷いのか説明していこうと思う。その途中、2chの実況で良く出る話に対して違う見方も提示して行きたいと思う。
まず、一番最初に説明しておきたいのだが、どんなリフォーム会社に依頼したとしても、内外装の工事で手を抜かれて困る、ということはまず無い。というか、職人さんを選べないので、結局運になるからだ。ただ、リフォーム瑕疵保険が整備されているので、リフォーム工事登録会社であれば、1施工あたり5万円~15万円程度で保険がかけられる。第三者の検査員が工事検査をするので安心!と謳っているものだが、どちらかというと後で問題が見つかった時に、たとえ業者が倒産していても修理費用が支払われるという点が良いと感じている。
ハウスでも、職人さんが手を抜いている感じはなく、どっちかというと「また変なもん作ってんなー、言われたことはやるけど」という雰囲気を見ていて感じたのでは無いだろうか。
酷い点は主に3つに集約される。
2.変更が難しい空間にしている。
3.番組内での説明が圧倒的に足りない。
例えば「寝室」「居間」「客間」「台所」「食堂」「玄関」「廊下」等だ。
勿論マンションなどできっちりこの通り部屋で分けていることは、まれで、大抵はLDK(居間、食堂、台所)になっていたり、場合によってはここが「客間」として使われることもある。((お茶の間、というのが昔のリビングルームに当たるんだけれども、普通ソコに客は通さないので、現代では寝室が機能的に近い、なんて話もされて面白かったんだが、それは別の機会に))
最もそれがよく分かるのが壁だ。吹き付けウレタン断熱すらしていない。
よくこのテの話題になる結露について簡単に説明しておこう。
結露とは、空気中の水分が冷やされて水になることだ。当たり前だね。
じゃあどうして冬場に窓ガラスの結露が問題になるかというと、窓ガラスが冷えるからだ。
これは露点温度として決まっていて、部屋の湿度が50%なら、だいたい10度以下になると水になる、とおぼえておいて間違いない。
もちろん飽和水蒸気量という中学校の時に覚えたっきりの単語を思い出す人がいる通り、部屋の温度が下がれば空気中の水分量は減る。つまり、部屋が暖かく十分に加湿されているなかに10度以下の物があれば、空気がソコに触れるたびに水に変換されていくわけだ。
コレの対処方法は大きく3つで、10度以下の物を作らない、空気を触れさせない、湿度を下げてから触れさせるとなってる。断熱、換気、防湿だ。詳細はググってくれ。
だから、湿度が高くなることが予想される場所(普通の生活空間)では、どれかの対策をとる。玄関は外気が入ってくるから換気、風呂なんかは結露上等で防湿、そして部屋の中は大抵断熱することになる。
ペンキは断熱しない。それをきちんと施主に対して説明し、説得するのが施工会社の義務であるとも思う。ウレタン吹付け&石膏ボードであれば、ソコまで高くもならない。
独身一人暮らしや、夫婦二人のみの暮らしであれば、施主が強硬に主張すればそのまま施工してしまっても構わないと思うが、番組内ではそういう雰囲気にも見えなかった。
匠の余計なお世話ともいう。
特にマンションの場合、作り付けの家具はかなり注意しないと困ったことになる。
あの真ん中の斜めに走った収納。最悪だ。
もしあれが、無印のスタッキングシェルフセットで構成されていれば、全く違った評価になっていたと思う。(もっと小さく薄いものなので、大量に積むことにはなるが)
ここで2ch実況で良く見られる「子供部屋が無い」「仕切られた部屋がない」という点に関しては、異なる見方を提示しておこうと思う。
良く老夫婦の一軒家の相談を受けた際に聞く話なのだが、夫婦二人には広すぎる、子供部屋は子供が出て行った時のままにしている、などという話だ。もったいない話だと思うのだが、かなりの頻度で遭遇する。
よく考えて欲しい。子供部屋が必要になる期間は、大抵10年前後だ。
中学生になれば、プライバシーの問題もあり、仕切られた部屋が必要だ、という意見には賛同する。それぐらいはあってもいいだろ、という思いもある。
ただ、正直に言って、間仕切り壁の増設は、5万~15万程度のリフォーム案件なのだ。
(あまりこういうことを言って儲けを減らすのもなんだが)子供が小さいうちに子供部屋を作るというのは、無駄が大きい。
そういった意味でも、あの斜めに走る大きな収納は、邪魔以外の何物でもない。間仕切り壁の増設の際にも自由度を下げるし、そもそも模様替えも殆どできない。
例えば、窓際の土間。もしも建築家のオナニーだとしたら最悪だ。
集合住宅において床は、最も揉め事のもとになりやすい地雷なのだ。フローリングは伊達ではない。
また、ここまでに上げた壁の話、風呂の防湿、玄関、作り付けの収納、キッチンまわりの雑さなど、どこまでが施主の希望で、どこからが業者側の責任なのかが判らない。
まあ、番組が番組だから通常運転といえばそうなのだが、ああいったデザインを好む人達が一定数居る(事務所や飲食店などと住居は考え方が異なるので、デザインだけを見れば十分に有り得る)ことを考えると、業界として説明責任はあるのではないかと切に思う。
窓の外の風景はなかなかに素晴らしい。これを活かすというのは同じだ。
だから、(おそらくは施主の強い希望であろう)玄関まわりは土間やシャッターを入れ、キッチンは(換気扇とコンロの前には耐熱ガラスを入れて仕切りを入れた)オープンキッチンにし、部屋は全面をグレード高めのフローリングにして、完全にワンルームにしてしまうのが良いと思う。
後は、備え付けの家具で部屋をしきって使うなり、完全にワンルームとして使うなりを、住んでいく上で決めていけば良いと思うのだ。
壁や天井は、断熱した後に安い石膏ボードを張り、その上にペンキを塗れば良い。
後輩を呼んで鍋をしたりすることもあるだろう。そういう時には衝立なりでベッドを隠し、プライベートを仕切るというのも、あとづけていくらでも工夫できる。
ただ、施工業者に同情する点も無くはない。
おそらく施主の強い希望であろう風呂のデザインをあのまま活かすと、ほとんど手のうちようがない。
リノベーションと口にだすリフォーム業者や建築士は、施主の言いなりになってはならない。職人が言われたことを着実にこなす職人たろうとすることは、ひとつの責任範囲として明確だ。
でも、業者は違う。
家造りの素人である施主が素敵デザインの店舗を創りあげようとしていたら、住宅はこういう点が違いますよ、こうした方が良いですよ、と説明し、説得するのが義務だと思っている。
安く上げるのが仕事でもなければ、高く売りつけるのが仕事でもない。
相手の希望と予算内で、住宅として最低限のものを備えた上で、夢を実現するのがリフォーム業者の仕事だ。
ぜひみなさんは、ガンガンリフォームして、部屋を住み良くして欲しい。
その際に、まずは住宅として快適な部分を目指して欲しいと思う。
番組を見ていないんであれなんですが、外部に面さない界壁や天井は普通は断熱しません。 ヒートブリッジ対策で外壁から一定の範囲に断熱材を打ち込むことはあります。 隣が空き室だ...
気がつくか判んないけど、 http://www.tv-tokyo.co.jp/dreamhouse/lastweek.html で先週の見られるよ。 まあ、俺も角部屋で外壁側でもなきゃクロス直張りで良いとは思うけど。 築50年でジャンカっぽ...
なるほど。拝見しました。 窓側は大梁以外はほぼ全面開口なので、断熱材よりもインナーサッシを設置するほうが有効です。 自分としては断熱よりもオープンキッチンが気になった。あ...
まあ、二重窓は面倒くささとのトレードオフだから嫌がられたのかもね オープンキッチンは罪作りなモンだとは思うね。確かに見た目はえらいカッコイイ。 よく考えたら、オープンキ...
あと気になったのはあの斜めの間仕切りかな。 あれはジャン・ヌーベルが四角い建物を斜めに仕切ったホテルを設計したのを 日本の建築家が斬新でカッコイイってパクりまくったものの...