社説:消費増税法案緊迫 合意の破棄は許されぬ

毎日新聞 2012年08月07日 02時30分

 国会の状況がにわかに緊迫している。税と社会保障の一体改革関連法案が参院で採決される前に消費増税反対派の野党7党が野田内閣に対する不信任決議案を提出する方針を固め、自民党にも強硬論が台頭しているためだ。

 増税決着後に野田内閣を衆院解散に追い込もうとしていた自民の目算は狂い、7野党と別の名目で内閣不信任決議案や参院で野田佳彦首相への問責決議案を独自に提出する動きが出ている。一体改革に関する民自公3党合意の重みを忘れてはいないか。合意の破棄は政党の責任放棄に等しく、断じて許されない。

 2大政党の動揺ぶりに、不信任案提出に踏み切る7野党の方が驚いているのではないか。

自民は責任放棄するな 自民党は内閣不信任決議案を、野田内閣を衆院解散に追い込むカードのひとつとして増税法案の成立後まで温存しようとしてきた。決議案は他のすべての案件に先立ち採決され、同じ国会での再議は行われないのが原則だ。

 ところが7野党の不信任案提出方針で自民党は増税法案の採決前に野田内閣と全面対決するか、当面は信任するかの判断を迫られる。これを境に自民党には首相が衆院解散を確約しない限り3党合意を破棄し、独自の不信任決議案などで対決すべきだとする強硬論が強まり、谷垣禎一総裁もこうした方針に言及した。

 衆院では民主党議員15人程度が造反しない限り不信任案は否決される。だが、自公が不信任案を提出すれば政権との対決色は一気に強まり、参院で問責決議案が提出されれば採決を目前に審議は相当期間、停止する公算が大きい。3党合意がほごになりかねないという危うい状況である。

 衆院で合計51議席を超す増税反対派の会派が協力して不信任案を提出する展開はある程度、予想されたはずだ。にもかかわらず、この動きに影響され合意破棄をちらつかせる自民党内の議論は党利党略と言わざるを得ない。

 合意したはずの重要法案の審議のさなか、最初は採決を早期に行うよう求め、今度は「衆院解散を約束しないなら不信任」と言いだすようではあまりに無原則だ。秋の総裁選に向けた谷垣総裁の露骨な生き残り戦術とのそしりを免れまい。

 民主党政権の運営が低迷し、ねじれ国会の下で今国会での一体改革関連法案成立に3党が歩み寄った原点に立ち返る必要がある。国の歳入の半分以上を借金でまかない、費用が増大する社会保障の底割れを防ぐ緊急かつ不可欠の措置として危機感を共有しての合意だったはずだ。

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