「まぶしいほど美しく、詩的で感動的だ」「本当の傑作だ」「同じ世界に住んでいる人物たちの他の人生を、極端だが説得力ある普遍的な心理描写でよく表現している」。ある映画を見た人たちから、このような惜しみない賞賛の声が聞かれた。チョン・ギュハン監督の2012年の作品『The Weight』だ。この映画は昨年ベネチア映画祭で「クィア・ライオン賞」を、エストニアのタリン・ブラックナイト映画祭とインド国際映画祭ではそれぞれ最優秀監督賞を受賞した。
しかし韓国の劇場ではこの映画を見ることができない。映像物等級審議で「制限上映可」の判定を受けたためだ。現在の韓国には「制限上映館」は1カ所もない。映像物等級委員会(映等委)は「人間の尊厳と価値を損ない、国民の心情を傷つける懸念がある」という理由で、映画『ザ・ウェイト』に制限上映可という等級を付けた。具体的には、屍姦(しかん)、同性愛の場面などが問題となったということだが、映画を見ることができないため確認する手立てがない。『ザ・ウェイト』よりも前にベルリン映画祭芸術貢献賞を受賞した『浮気雲』、カンヌ映画祭コンペ部門に進出した『バトル・イン・ヘブン』のような秀作も制限上映可の判定を受け、映画館で上映されなかった。
これまで「表現の自由」を前面に出してきた人たちは「制限上映可は事実上、事前検閲による作品上映禁止措置であり違憲だ」として審議制度自体の廃止を要求してきた。一方で映等委などは「等級審議は有害映像物から児童・青少年を守るための最小限の装置であり、制限上映可等級は英国やオーストラリアなどでも導入されている」と対抗してきた。芸術政策の側面からは決して軽く扱うべきではない論争だ。しかし映画ファンにとってはなぜか「内輪のもめごと」に見えるのも事実だ。観客の立場では、上映制限付きでありながらも作品性の高い作品をどうすれば映画館で鑑賞できるかがより現実的な懸案だ。
このような状況ならば、今度は政策当局と映画界はどうすればファンが『ザ・ウェイト』のような作品に出会う機会を得られるか、現実的な方法を見いだすために真剣に話し合うべきだ。問題の核心は簡単なことだ。制限上映可の映画を上映する映画館をどのように確保するかどうかに懸かっている。
ここで一つ提案したい。「常時制限上映館」ではなく「作品別一時的制限上映館」を導入することだ。一般の映画館が上映制限のある映画を上映したいと申請すれば、その作品に限って一時的に上映資格を認めるという方法だ。実際「映画・ビデオ振興法」が規定する「制限上映館」は1年中ずっと制限上映可の判定を受けた映画だけを上映することになっており、あまりに非現実的だ。膨大な費用を掛けて劇場と機材を準備したオーナーに、1年に10編前後しかない制限上映可等級の映画だけを上映しろと言うのは、収入を得ることを考えずに文化慈善事業をしなさい、と言うようなものだ。
法的に難しいこともないだろう。「制限上映館では制限上映可以外の等級の映画を上映してはならない」という映画・ビデオ振興法43条3項だけを改正すればよい。「作品別一時的制限上映館」制度が成立すれば、インディプラス、シネコード・ソンジェ、スポンジハウスのような既存の多様性映画(上映スクリーン数が少ない映画)専用映画館が積極的に上映に乗り出す可能性も十分にある。今度は新政権と国会が答えを出す番だ。