また小倉さんからTBが来た。彼は何をいわれても「階級闘争史観」を変える気はないようなので議論は不毛だが、これが世の法律家の平均的な水準かもしれないので、簡単に答えておく。

彼は雇用流動化が「北風」政策だというが、これは理論的にも実証的にも間違いである。前にも書いたように、雇用流動化は労働需要を増やす「太陽」政策なのだ。それは経営者に解雇というオプションを与えるので、オプション価値の分だけ労働需要は増える――と書いてもわかってもらえないだろうから、簡単な例を考えよう:

ある経営者が、正社員を雇うか派遣にするか迷っているとする。正社員を雇うと絶対に解雇できないとすると、生涯賃金は大卒男子平均で2億7000万円だ。社会保険や年金・退職金を入れると、4億円近い大きな固定費になる。他方、派遣の(派遣会社に払う)賃金が正社員と同じだとしても、業績が悪くなったら契約を破棄できる変動費だ。たとえ生産性が低くても派遣を雇うことによってリスクをヘッジできるので、経営者は派遣を選ぶだろう。しかし正社員の解雇が自由になったとすると、正社員と派遣のコストは同等になり、経営者は生産性の高い正社員を選ぶだろう。

つまり解雇規制を緩和してオプションを増やすことによって、正社員の雇用は増える。他方、解雇も容易になるので、短期的にはどっちの効果が大きいかはわからないが、長期的には雇用コストが下がると労働需要は増えるので、自然失業率は間違いなく下がる。失業率が解雇規制の増加関数であることは、オバマ政権の中枢であるサマーズもいうように、実証的にも定型的事実である。

雇用を流動化するもっと重要な理由は、それによって労働生産性を高めることだ。流通業や建設業には大量の潜在失業者がいるが、医療や介護では人手が足りない。前者から後者に労働力を移転するには、解雇規制を緩和するとともに職業訓練を強化し、新たなキャリアへの挑戦を容易にする必要がある。それによって福祉サービスが成長すれば、内需拡大によってGDPが高まり、労働需要も増える。厚労省の進めている雇用固定化政策はきわめて反生産的であるばかりでなく、労働者を会社に閉じ込めて不幸にする。

小倉さんは政府のすべての政策は資本家が労働者から搾取するための陰謀だと思っているようだが、かりに資本家から搾取して労働者に再分配しても、パイ全体の大きさは変わらない(税の累進性を上げると、インセンティブの低下でGDPは下がる)。今の日本のように年率10%で収縮してゆく経済で、所得分配ばかり争うのはnegative-sum gameにしかならない。雇用流動化によってGDPを高めれば、ほとんどの人々が得するpositive-sum gameになるのである。


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コメント一覧

  1. 1.
    • kk8n53m
    • 2009年02月10日 21:37

    現在の雇用保護政策は、これから雇用される若い世代にとっては、たとえるなら北風でも太陽でもなく暗室政策ですね。

  2. 2.
    • kensho
    • 2009年02月10日 22:01

    「気持ち」だけは分からなくも無いが…
    雇用流動化の話つながりなのですが
    >経済学のロジックは、よくも悪くも単純なので、それに慣れれば理解することはむずかしくない。むずかしいのは、それが人々の感情にさからう場合が多いことです。(アゴラ「中間小説」の必要性 - 池田信夫より)
    ここに共感しました。年末から仕事量が激減しているし、最もましなIT分野でも既に単価が10%近く下がってます。製造業なんて仕事自体存在しないんじゃないでしょうか。未経験の介護とかに行くしかないだろうけど、相当つらいでしょう。この突風を当事者として実感できなければ、あるいは想像できなければ、説得するのは非常に難しい。
    都市部で月15万で生活してみれば分かります。家賃5万、食費3万、光熱通信費2万、税金等2万で12万かかる。かなりギリギリのラインです(年収は欠勤なしで180万)。これで賃金減ったらどうなるか?真っ先に、精神がやられて不安定、鬱病になります。
    そんな彼らに、または彼らの周辺にいる人たちに、経済学的な考え方を理解してもらうのは本当にむずかしいことだと思います。
    というか、この生命維持にも関わる切迫感をまず何とかしないと、経済学を持ち出してGDPが云々言う以前の問題なのかなと思います。(もちろん古今東西の知恵が凝縮された「経済学」を利用した方が遥かにメリットがあると思います。ただどうしても感情・焦りが反発してしまう問題がある、と。)
    だから個人的に思うに、底辺の人たちに経済学を説いても反感を買うだけで意味がなく、社会を動かす人たちだけに理解してもらわないといけないのかな、などと思ったり。でもそんなテクニカルなことができるのか?ていうかそれってエリート主義??
    とか考えてるとよく分からなくなってきたので、池田先生にナンセンスとか怒られる前に駄文を書き散らかすのはこれくらいにしておきますw
    この修羅場を乗り越えてもっと強くなりたいものです。

  3. 3.
    • kensho
    • 2009年02月10日 22:16

    すみません
    今小倉さんのBlog読んだけど意味が分からなかった。さっきの投稿は決して彼を擁護しているわけではありませんのであしからず・・・

  4. 4.

    分かり易い
    小倉さんと池田さんの(ブログ上での)論戦を見る限り、小倉さんの反論は何かしっくりこないですね(ロジックが弱い)。
    小倉さんとの論戦は不毛なので、池田さんの持論を今後も見たいです(ああ言えば上祐みたいな人は論破できないでしょう。)。勉強になります。

  5. 5.

    成功体験が邪魔をする
     小倉さんのブログを読んでみましたが、おそらく過去の成功体験がああいったロジックを生んでいるのではないかと思います。
     高度経済成長を果たしていた日本では、所得税が今では考えられない累進課税でした。それでも日本は経済成長を続け、所得倍増なども達成してきました。この歴史が、「所得移転によって経済成長が可能になる」というロジックを生んでいるのではないでしょうか。
     私は今年26歳になるいわゆる「若者」に属しており、個人事業を始めたばかりなので所得は限りなくゼロに近い貧困層です。私を含めた若者が池田さんのロジックを支持しているという現実を小倉さんには見ていただきたいと思いますね。

  6. 6.
    • shun
    • 2009年02月11日 00:05

    論戦は必要
    世の中には小倉さんのような意見を持った人も多く、そういった人がこの論戦を見ることで意見が変わることもあると思うので、論戦は必要だと思います。
    アゴラにおいても小倉さんのように反論をする人がいるともっと有意義になるでしょう。
    ただ、小倉さんが何をいわれても「階級闘争史観」を変える気がないのは不思議です...

  7. 7.
    • 池田信夫
    • 2009年02月11日 00:23

    Re: 論戦は必要
    小倉さんのような感情論は、世の中では圧倒的な多数派ですよ。テレビの討論番組でも、奥谷禮子氏が敵役で、湯浅誠氏が正義の味方です。「派遣切りがかわいそうだ」というのは、100%の視聴者に理解できるが、「労働需要は雇用規制の減少関数だ」ということがわかる人は、おそらく1割もいないでしょう。ここで勝負はついてしまう。
    またメディアは、何かにつけて意見の背後に特定の利害を見いだそうとする。奥谷氏などは、さしずめ強欲な資本家のロールモデルでしょう。彼女の「自己責任論」もナンセンスで、ああいう利害対立として語られる限り、まともな論争にはならない。
    こういう「1段階論理の正義」の横行は、民主党が政権をとったらもっとひどいことになるでしょう。自民党がいったん野党に転落し、自由主義を守る本物の保守政党としてよみがえることを期待するしかないけど、それは10年後か20年後か・・・

  8. 8.
    • Sakano
    • 2009年02月11日 00:52

    小倉さんのような「経営者と株主が労働者から利益を奪う」といったような考えを持つ方は、まだまだ多いようですね。
    木村剛さんも仰っていましたが、そう思うなら起業し経営者になるのが合理的でしょう。起業し経営者として成功することは難しいとしても、株主にならだれでもなれます。株式が市場で取引されていることすら知らないはずはありません。
    しかし「経営者と株主が労働者から利益を奪う」と思い込んでいる人ほど、そういった提案をすることは無いように思います。自ら経営者になり賢く労働者に分配していけば良いのです。
    おそらく、自分たちが目の敵にしている資本家がそこまでオイシイ思いばかり出来るものではないことを本当は知っているのでしょう。

  9. 9.
    • meepo
    • 2009年02月11日 02:30

    先細りの平等などいらない
    >かりに資本家から搾取して労働者に再分配しても、パイ全体の大きさは変わらない
    成功者の足を引っ張って皆で仲良く貧しくなろうというのでは全く夢がありません
    この先何十年とこの国で生きていかなければならない若者は長期の成長戦略を支持するでしょう
    このブログも意外と若い人が結構見ているのではないでしょうか?

  10. 10.
    • deep
    • 2009年02月11日 02:57

    正論と感情論と
    こんにちは。
    経済学には全くの素人ではありますが、ここ最近の古館伊知郎的な“感情優先の庶民の味方派”と、池田氏の様な“理論優先の正論派”の戦いをテレビやブログ上で多く目にする様になってきたなと感じています。
    感情派の軽薄さや、主張の現実味の弱さ、底の浅さは、普通の感覚があれば察知する事が出来ると思うのですが、何故に強引に押し切られてしまうのだろうかと 非常にすっきりとしない気持ちが残ります。
    池田氏の仰っている事は、特に難しいとは思いませんし、世間に通じないのは、専門用語の取っ付き難さ という単純な問題でもない様な気がします。
    理性派に対し、感情派が、さも勝っている様な空気感を、メディアが意図的に演出、醸成してるというのも一因ではないかと思います。
    テレビも、新聞も、底の浅い感情論ばかりで、正直うんざりです。
    ダメだダメだ、かわいそうだかわいそうだの連呼で、結局、何の中身も、議論も、解決方法も示してません。
    そういった風潮を作る事で、一体誰が得してるんでしょうか?
    今のこの国の状況は、日本人として恥ずかしくさえ感じてしまいます。
    是非池田氏には、より露出を増やして頂き、世の中の議論を理性的な方向に持っていって頂きたいと、期待しております。

  11. 11.
    • Disequilibrium
    • 2009年02月11日 04:27

    場合分け
    「雇用流動化で失業率は下がる」とは一概には言えないと思います。
    景気のいいときには、雇用する負担が減ることにより、失業率を下げるでしょうが、景気の悪いときは逆に解雇するので、失業率は上がるでしょう。(当たり前ですが)
    日本の場合、失われた20年がいつまでも終わらず、永遠に不景気の可能性があるので、不況の出口を証明した上で行う必要があるでしょう。
    また、世代間の格差も生じかねません。
    雇用の流動化が派遣契約の促進によって行われるならば、既存の公務員や正社員の雇用硬直性は温存されることになり、既存の労働者の過剰雇用のツケが、新規労働者に回ることになります。
    雇用の流動化をするのであれば、派遣などという新しい枠組みではなく、
    既存の公務員、正社員を含めた、全体での解雇自由化にする必要があります。
    また、セーフティネットの整備も不可欠です。
    これは、所得の再分配そのものです。
    それと、介護で人手が足りないのは、予算が足りないからです。
    肉体面、精神面の負担が大きいのに、給料が安いのです。
    医療で人手が足りないのは、適正な予算と人員の配分が行われていないためです。
    インセンティブが過剰な分野に、過剰な予算と人員が配分されているのに、既得権益により是正できないため、
    インセンティブが不足している分野に、予算と人員が回らないのです。
    もっとも、これは医療に限ったことではなく、税金の使い道全般に言えることですが。

  12. 12.
    • ぽえぽえ
    • 2009年02月11日 04:34

    ストーリーテラーが必要
    >「派遣切りがかわいそうだ」というのは、100%の視聴者に理解できるが、「労働需要は雇用規制の減少関数だ」ということがわかる人は、おそらく1割もいないでしょう。ここで勝負はついてしまう。
    人間というもの、結局信じたいものを信じてしまう存在です。進化論対IDとか、地球温暖化にまつわる議論もそういった傾向をあらわしています。だから、理解出来る出来ないにかかわらず、わかりやすく信じられやすいストーリーを作る事は、理論が実社会に受け入れ応用されていく上で、大変重要な作業だと思います。
    ある意味ビートたけしとか爆笑問題の太田とかが口に出しても違和感がないような、一般人皆がすんなり理解できるようなストーリを作ることが出来れば、宗教的なものと似たような形で受け入れられる事もある。良いか悪いかは別ですが、国民のコンセンサスを作る上で、このプロセスは重要だと思います。
    学者さんは、自身が物事をより深く知ること自体に快感を覚え、そこで止まってしまうことも多く、アウトプットを怠る方が多いと思います逆に大学教授とかタレントとかいう地位を使って、専門外の事に対してとんでもないことを発言する方も日本には多いですけれど。「文化人」とか「知識人」枠ですね(笑)。
    その点、アゴラで池田教授の仰ってた「中間小説」を発信する意義には感銘を受けました。

  13. 13.
    • 暇な人
    • 2009年02月11日 05:26

    自民の議員は官僚の教育の成果なのか、
    認識は正しいですよね。
    朝生でも池田さんと似たようなことを、
    セコウさんなどの中堅若手が言っていました。
    (ただそれを派遣村関係者が叩いていましたが)
    これが首相や大臣クラスなら、意図的に抜き出してさらにコメンテーターがミスリードして、
    失言にされると思います。説明を詳しくするとぶれていると叩かれる。
    結果恐れて真実をいえません。
    民主党を庇えば、昔の小沢さんや、
    中堅若手クラスはきちんと認識していたはずなんですけど・・・
    企業の経営者などもいたと思いますし。
    ただ支持母体に逆らえないのでしょうね。
    自民と民主の左派を集めて三極になってほしいものです。

  14. 14.
    • 一法曹
    • 2009年02月11日 06:03

    平均像には異議ありw
    >(本文)これが世の法律家の平均的な水準かもしれないので
     もし、先方の面子を慮ったのでないとしたら、池田先生にしては、珍しく仮定(仮説)が外されていると思います。世の法律家(特に法曹と呼ばれる実務家)は「知らないことは知らない」と言う職業的な勇気を持っています。それは誠意や誠実とかではなくてもっと実利的な面での根拠です。
     たとえば、法廷で(書面又は口頭で)知ったかぶりの意見や主張をすると、必ず相手や裁判所から、「それはXXを知らない誤解に基づく間違いである」「弁護士の独自の見解で失当である」と証拠に基づいて正されて(反論されて)大恥をかくからです。それがプロとして屈辱なのは、池田先生でも容易に想像がつくと思います。
     もちろん、未知又は不勉強の専門的分野のことは、専門家の筆や証言による鑑定、鑑定的意見書、専門書で立証するのが常なる法曹ですから、知ったかぶりの怖さを人一倍分かっている(はずだ)からです。

  15. 15.
    • Inoue
    • 2009年02月11日 07:19

    借地借家法問題との類似
     定期着地権、定期借家権が新設されたときにも、法律家と経済学者との間で、似たような論争がありました。
     「家」も「雇用」も、人間が生きていく上では、欠かすことができない致命的なものです。契約解消に伴う、急激なショックを和らげるために、何らかの救済措置が必要なことは確かなのですが、二者の利益対立の調停の場でしかない裁判では、そのコストを、取引の相手方(雇用者、家主)に負わせるという結論にならざるをえない。
     ここに政府という第三者を加えると、別のソリューションが出てくるでしょう。

  16. 16.
    • mikkun
    • 2009年02月11日 07:44

    副業
    正社員の雇用規制を緩和し、コストを派遣労働者と同等にしていくことには賛成です。ただ、現実には優遇されている正社員の賃下げだと思うので、敷居が高いと思います。
    経済学から外れますが、最近いくつかの企業が正社員の下がった賃金を補うために「副業」を認めましたが、雇用流動化に向けて、もっと企業は副業を認めても良いと思います。
    情報リーク防止のため副業の業種を制限するなどルールを設け導入すれば、安全に徐々に従業員にも第2のチャンスとして広がり、雇用の流動化につながるのではないかと思うからです。
    きりなりの介護業務には抵抗ありますが、副業として業務にちょっとたずさわり、ゆっくりと次の業務を選ぶ時間もでき、Working styleの多様化を進められると思います。
    ただ、忠誠心や仲間意識が大切な日本企業がすんなり変わっていけるのか問題はありますが、副業が自由であれば、企業も従業員を囲えなくなるので、細かくJob descriptionで業務内容が明確になり、労働者としてはきっちり仕事を終わらせて、生産性の改善にも役立つと予想します。
    このBlogにコメントできるほどの知識はないですが、何か書き残して置きたくなったので、許してください。

  17. 17.
    • 秦智紀
    • 2009年02月11日 07:58

    あ~
    小倉さんは、経済学の教科書とかは読んでいるみたいですが参考にしないってのは凄いですね。読む意味が全くないから読むだけ時間の無駄なような気もしますが。参考にしないだけあってブログに書いてあることは小倉さんのブログは参考になりませんでした。

  18. 18.
    • Taro
    • 2009年02月11日 08:58

    自由主義を守る本物の保守政党
    労働者と資本家両者から搾取し、両者に寄生している最大の厄介者は政府でしょう。
    日本の保守主義はなべて国家主義的性向をもっていると思います。彼らの「資本主義を守れ」のスローガンは、単に反共主義の表明であるか支援者である財界のためでしかなく、個人の自由と私有財産、市場経済を徹底して守ろうなどとは考えていません。小泉政権や安倍政権に典型的だったように、彼らは自意識過剰の国粋主義的アプローチで人気を得ましたが、個人の自由と私有財産、市場経済に至上の価値を置き、それゆえに反戦・平和主義者でもあるリバタリアンだとは到底言えません。彼らの「改革」は国家と政府財政のための「改革」であって、個人の自由と私有財産・市場経済のための「改革」ではないのです。「改革」、「自由」や「市場経済」や「反共」という言葉は、政治的なスローガンに過ぎず、政治的な目的のためなら、政府の介入と権力の肥大化を彼らはあっさりと容認するでしょう(彼らの外交・国防政策に端的に表れていました)。
    その意味で、現在の日本の政治家に自由主義者は一人もいません。リバタリアンは一人もいません。
    また、自由主義を守る本物の保守政党も存在しません。日本の政治における保守主義は「自由主義」を政治的な道具に用いますが、それはおおむね非合理で主情的な、しかし個人の自由よりも政府と国家を愛してやまない国家主義なのです。ですから、日本におけるリバタリアン政党の可能性は極めて低いと言わねばなりません。日本人はまずはJohn LockeやThomas Jeffersonを読み、あるいは現代のリバタリアンから学び、自由主義の歴史的な位置づけと思想的内容を学ぶことから始める必要があります。

  19. 19.
    • 843
    • 2009年02月11日 09:09

    これで賃金減ったらどうなるか?真っ先に、精神がやられて不安定、鬱病になります。
    →アメリカでは不況と解雇で頭が固まると、それを治す薬が一般に普及してるんですよね。エグゼクティブはみんな使ってる。カウンセラーが処方します。
    その薬をのむと金を回したくて仕方がなくなります。
    明日の心配はなくなります。とにかくハイテンションになる。無駄なものを買いたくなる。
    90年代初頭に爆発的に普及したんですが、おそらく景気拡大の遠因になってるんじゃないかと思います。
    鬱は金周りを悪くします。適応反応です。

  20. 20.
    • 池田信夫
    • 2009年02月11日 10:51

    これで最後
    小倉さんからまたコメントがついています。前に書いたことを理解しないで同じ話を蒸し返すのも彼の特徴ですが、彼はどうもマクロ経済学の入門書だけ読んで「乗数効果」をまだ信じているようですね。これについては前に書いたので、繰り返しません。
    http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/762afce0f2b08c10bd909dde481a2b73
    この乗数効果なるものは、今ではCole-Ohanianのような保守派から小野善康氏のようなケインジアンまで一致して否定しています。これは大学院の教科書からは20年前に消えているが、そのうち学部の教科書からも消えるでしょう。
    小倉さんの相手もこれで最後。悪いけど、こんな低レベルの話を公開の場で繰り返すのは、あなたの弁護士としての評判を傷つけますよ。経済学に関心をお持ちになるのは結構ですが、マクロだけでなくミクロ経済学の教科書も読んでください。

  21. 21.

    会社は入れ物だと思う
    労働が流動化すると、動き易い人とそうでない人が出来るが、動き辛い人の生活が立ち行くだけの所得があれば、この問題は深刻ではなかった様な気もします。
    会社は「入れ物」? 考え方次第で変わる物だと思う
    http://pub.ne.jp/phrasemonsters/?entry_id=1918705

  22. 22.
    • Unknown
    • 2009年02月11日 14:07

    小倉弁護士は情けない。
    「税の累進性が上がるとインセンティブが低下するというのは、著作権の保護期間が延長されないと創作のインセンティブが下がるのと同じくらい、現実味がないように思います。」
    今まさに行っている労働の対価である賃金に対する累進性が上がるとヤル気がなくなるのは人間として当然のことです。
    「何でこんなに辛い思いをして働いているのに、その半分を国家に搾取されないといけないのか。働くのは、もうイヤ!(事情がなかなかそれを許さないが。)」というのが一生懸命働いて稼いでいる人の本音です。
    それと、「著作権の保護期間が延長されないと創作のインセンティブが下がるのと同じくらい、現実味がない」は議論のすり替えですね。保護期間が長くなくても、それなりの期間保護されれば、かなりの収入は得られますから、創作意欲は湧きます。
    今現実化している労働力の対価が搾取される場合と、遠い将来の対価が保護されない場合とでは、インセンティブに対する影響は違うのは当たり前です。
    この二つを同列に考えようとする小倉弁護士の思考回路は理解不能です。
    それと「富裕層と言われる人たちは、もはや生きている間に使い尽くせないほどの富を集めても、なお、さらに富を自分のもとに集めたがる性質を持っている」についても、だから何?と言いたくなる。その富が労働者の労働力を不当に搾取した結果ならともかく、そうではなく、純粋に市場に価値を与えたことによる対価であれば、それは享受できて当然のこと。何が悪い?
    「富=労働者の労働力を搾取した結果」
    との見方しかできないでいますね、小倉弁護士は。
    彼は一生懸命働いて自分で稼いだことがあるのでしょうか。

  23. 23.
    • 池田信夫
    • 2009年02月11日 16:04

    添削
    TBで混乱した議論の典型が来ているので、試しに添削してみましょう:
    <正社員はなぜ生産性が高くて、派遣社員は低いのか。同じ人が雇われる身分によって、そんなに生産性に違いがでるだろうか>
    これは事実を知らない上に、論理的におかしい。正社員と派遣の生産性が同じなら、なぜ企業はすべて派遣にしないのか。
    <また、長期的に雇用コストが下がるから、自然失業率が間違いなく下がるというのは、おかしい。日本の失業率のグラフを簡単に書いてみたが・・・>
    これは自然失業率という概念を理解していない。それは現実の失業率と違うんだよ。
    <また、大量の潜在失業者が、人手が足りない所に動けば、GDPが高まるとしているが、そもそも人手が足りない所は、介護にしろ、飲食店にしろ、低賃金の所であり、労働者がそれら職についたとしても、一人当たりのGDPが増えるとは到底思えない>
    こういうナンセンスな話も多いが、どんなに低賃金だろうと、需要がない(GDPに貢献しない)産業から需要のある産業に労働移動したほうがGDPが増えることは自明だよ。
    <1986年から日本は累進性を下げ続けているが、GDPが上がってないのをどう説明しているのだろうか>
    GDPはこの20年で20%以上あがってるよ。「鈍化」を「減少」と混同してるだろう。
    まぁこんなもんです。大学の試験だったら「不可」ね。他にもこれよりくだらないTBやコメントがたくさんついたが、削除しました。

  24. 24.
    • tanakac
    • 2009年02月11日 16:39

    国家社会主義への道
    こんな簡単なロジックを弁護士も記者も政治家も理解できないことのツケをわれわれ国民自身、特に40代以下の若年層が払わされるんじゃ、たまったもんじゃありません。民主党政権になり、みせかけの弱者保護や雇用福祉対策によって更に問題は先送りにされ、最後はトヨタも日立も外資に買収されるのを避けるため、実質上組合が経営権を握るでしょう。国有化されるかも知れません。
    20年後のキャノンの社長に湯浅氏がなったりして…「無報酬の若き新社長誕生!誰一人解雇せず!」朝日新聞が持ち上げ小倉氏が感涙の果てに「これで日本の労働者は大丈夫!」と大往生。
    そんな未来が実現しそうで恐ろしい。

  25. 25.
    • strongaxe
    • 2009年02月11日 17:42

    「世界と日本経済30のデタラメ」東谷暁
    では、2008年の「労働経済白書」を引いて、非正規雇用が増加しているにもかかわらず、実際の労働生産性はそれほど上昇していないと述べています。
    ’85で非正規社員は16.4%、’00で26.0%、’07で33.5%、その一方で90年代から2000年台にかけて製造業の生産性上昇率は2.3%から4.5%になっています。 しかし同白書では「(この伸びは)就業者の削減により実現」したもので、「持続性を持った生産性の向上とは評価しがたい」。さらに、正規雇用を削減した製造業では生産性があがったが、非正規雇用が増えたサービス業では生産性が下落した、と東谷は述べています(p60-61)
    「労働経済白書」が、雇用の流動化はダメと言っているのであれば、きっとダメなんだろうと思いますが(←たんなる皮肉です)、ただ白書にそう書かれるくらいであれば、それなりに「経済学的な」判断があったうえで官僚も記載しているのだと思いますが、どうなんでしょうか。

  26. 26.
    • Yasuo Ohgaki
    • 2009年02月11日 17:57

    視点を変えて考えられない人たち
    視点を変えられない人たちは、自分の考え方に問題があっても問題を見ようとはしません。
    円錐を真下から見て円柱だと断定してしまいます。地球でなく太陽が回っていると主張します。困ったものです。
    会社を経営する側の当たり前の視点が欠けているし、このブログに付いているトラックバックも単純な事実誤認があります。
    ----
    正社員はなぜ生産性が高くて、派遣社員は低いのか。同じ人が雇われる身分によって、そんなに生産性に違いがでるだろうか。
    ----
    正社員の方が生産性が高い場合が多いケースはたくさんあります。例えば、IT業界のフルタイムの派遣社員は最低月60万くらいはします。ちょっと研修しただけレベルの技術しか持っていなくてもです。
    情報系の新卒学生を雇ったとしたら費用は確実に安くなります。費用対効果は確実に上がります。つまり生産性は上がるでしょう。それをしないのは雇用流動性がない事が原因なのは明らかです。
    トラックバックのブログは読むに耐えなかったので全文を読んでません。誤解していたら指摘いただきたいですが、生産性とは1人がどれだけの価値を生み出すかではなく、価値を生み出す為にどれだけコストを使ったか、ですよね?

  27. 27.
    • kakusei Ⅲ
    • 2009年02月11日 18:13

    国際競争を忘れては駄目です
    >20年後のキャノンの社長に湯浅氏がなったりして…
    ありえないですね。その前に国際競争に敗れて破綻しているか、国外に拠点を移してますよ。
    まして、人口構成から見れば、平均年齢60歳強の国で、バイタリティがなければ必敗の競争に勝てるはずもありません。
    多くの人が、日本の技術は世界に冠たるものと、昨日の状況が自動的に続くと思っているようですが、どんどん国際競争力をなくしている企業が続出ですよね。企業も日本に軸足を於いていると衰退でしょう(涙)(民主党政権が出来れば、恐らくそれに拍車を掛けるのではないかと思ってます)
    小倉氏の頭脳は、向坂逸郎氏の硬直したマル経のようなものしか受け付けられないのではないでしょうか。実証されている近代経済学の話を語っても、情報を入れる引き出しがないのですから、ミスアンダスタンドしか出来ないでしょう。本人は分かっている積りですから、手に負えない平行線になります。

  28. 28.
    • tanakac
    • 2009年02月12日 00:49

    Re:国家社会主義への道
    >>20年後のキャノンの社長に湯浅氏がなったりして…
    >ありえないですね。その前に国際競争に敗れて破綻しているか、国外に拠点を移してますよ。
    はい。その時まで日本が資本主義の国なら、ですが(笑)大企業や国家といえど経営・統治に失敗すれば破綻します。この国のトップ(官僚政府・マスコミ・連合)は日向ぼっこをしていてまったくそれを理解していません。買収する外国資本をハゲタカと呼び、役人は愚かな規制をかけ、マスコミがそれを後押ししています。最新の芥川賞受賞作品「ポストスライムの舟」では主人公が派遣社員、現代版蟹工船、ですか…http://journal.mycom.co.jp/news/2009/01/16/027
    すべてがこんな調子では、20年後のキャノンの湯浅氏社長就任とか、「日立」の国有化とか、日本では「情緒的」にありえそうに思えてしまいます。
    ところで、民主党政権になっても郵政の民営化は大丈夫なんでしょうか?

  29. 29.
    • S.T.
    • 2009年02月12日 01:04

    不徹底
    今朝のテレビに竹中さんがでていました。
    いつもは、労働流動性をあげるべきで、正社員が守られすぎだというような議論をしているような気がしましたが、「かんぽの宿」だけは例外らしく、雇用を守らなければならない、といっていました。
    日和見な発言で何を守ろうとしているのかな?と思います。

  30. 30.
    • Unknown
    • 2009年02月12日 09:47

    >雇用を守らなければならない、といっていました。
    違います
    売却する条件として「雇用を継続すること」が盛り込まれている という事実を発言しただけです
    そこには 竹中氏の意見は入ってないです

  31. 31.
    • 前田
    • 2009年02月12日 10:47

    添削されたブログ
    添削されたブログの方が反論しておりますが、
    やはりよく理解されてないようです。
    「雇用の流動性が高まるのであれば、労働者が次の職を探すための無職の期間が長くなる」
    とおっしゃっていますが、
    まったく逆ですよね。
    現在は、少数の方が長時間失業をしているのが実態です。それも生産性の高さとは関係なく。
    旧拓銀が破綻したときに優秀(であると私は思っていた)行員が、一般に付加価値の低いと思われる産業に転職を余儀なくされました。
    おそらく同業の銀行には彼よりも生産性の低い行員は山ほど居たのに。
    そういう労働のマッチングのミスを雇用の流動化によって解消して、それぞれが生産性に見合った職種に就くことで、全体としての生産性を上げよう、というのがよくわからないようです。
    需要の無い産業ばかりとも述べていますが、
    何を言ってるんでしょうね。
    求人倍率が2倍を超えてる産業があることを知らないんでしょうか。

  32. 32.
    • sonohigurashi
    • 2009年02月15日 11:28

    とても細かい事なのですが
    派遣労働者というのは
    大体通勤交通費が支給されない事実があります。
    給料をもらい、税金や社会保障料を払って
    残りで通勤交通費を自腹で払っている愚かさ。
    「派遣喰い」と派遣業界などで
    言われている一端です。





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