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板垣恵介原作は揉め事ばかり!? あの“打ち切りマンガ”の真相を追え!

サイゾー 2012年12月30日(日)20時6分配信

――人気絶頂の中にあるマンガが、諸般の事情で打ち切りとなり、お蔵入りとなってしまうことが多々ある。そしてインターネットなどで嘘か真かわからないその真相が議論されることもしばしば。ここでは揉め事で打ち切りとなってしまった作品を紹介しつつ、その内幕をケースごとにまとめてみた。

 マンガ誌が出るたびに、真っ先に読み始めるほど楽しみにしていた作品が、突然打ち切りで終了! マンガファンにとって、これほど悲しい瞬間もない。

 そして、まことしやかに聞こえてくるその内幕……。「原作者とマンガ家が、作品の方向性について揉めたみたい」「編集者が原稿を紛失して、マンガ家が激怒したそうだ」「あのマンガ家、捕まったらしいよ……」などの噂が語られることも。

「言うまでもなく、打ち切りの理由は人気の低迷によるものがほとんどで、マンガ家との揉め事やスキャンダルなんてめったにない」と、大手出版社のマンガ編集者A氏は語るが、編集者の努力かなわず、なんらかのトラブルによって人気作品が打ち切り・封印の憂き目に遭ってしまうことは、少なからずあるようだ。

 こうした編集者も意図せぬ打ち切りのパターンで、最もよくある例が、原作者と作画担当のマンガ家が揉めるケースだ。ラノベ作品などのメディアミックス戦略により、原作と作画が分かれている作品も格段に増えた。

「最近だと“土下座マンガ”として話題になった『どげせん』【1】が、そのパターンに当てはまる。公式発表では、原作者の板垣恵介氏と作画を担当するRIN氏の“土下座観”の違いで、コンビ解消に至ったとされている。その後、板垣氏は「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)で『謝男』【2】を連載開始。一方RIN氏も続編の『どげせんR』を、『ヤングキング』(少年画報社)に移籍して再開したが、いまだにお互いの不満は解消されていないようだ」(前出・マンガ編集者A氏)

 事の発端は、もともと原作を描くというより、アドバイスするというスタンスだった板垣氏が、RIN氏の作画に対して不満を持ち、確執ができた。これが拡大しRIN氏と板垣氏が編集部を巻き込み、騒動になった。「板垣氏の作品が新連載なのに『漫画ゴラク』に掲載されたのに対し、RIN氏の本家『どげせん』は移籍しての再開となっているところにも、その後の両者の力関係と確執がわかります」(同)とも言われている。

 板垣氏といえば、元自衛隊員で、その気性の荒さが編集者やアシスタントから恐れられる存在。

「板垣さんご自身は、噂されるほどに怖い人ではないけど、作品に対してストイックで、『バキ』の取材のため、本物の格闘家と手合わせに向かうこともあるほど。板垣氏の代表作『グラップラー刃牙』の外伝『バキ外伝 疵面』【3】も、急病による休載の末に打ち切りとなったが、実は板垣氏が仕事に熱心なあまり、作画担当の山内雪奈生氏へ、厳しい指導をしたことにより、マンガが描けなくなってしまったようだ」(マンガ編集者B氏)

 こうした原作者と作画者の揉め事の場合、出版社による契約があったとしても、作品のもとを作る原作者が「もうやめた」と言えば、どんなに人気がある作品でも打ち切りとなってしまうことが多い。このパターンで物議を醸したのが04〜07年まで「ウルトラジャンプ」(集英社)で連載されていた『皇国の守護者』【4】だ。同作はゲームデザイナーから作家になった佐藤大輔氏の小説を、伊藤悠氏がマンガ化。05年および06年の文化庁メディア芸術祭で、マンガ部門審査委員会推奨作品になり、単行本は5巻まで発売された。

「同作は順調に売れ行きを伸ばしていたが、4巻が出た後くらいに、それまではマンガ版のネームをチェックしていなかった原作者の佐藤氏が急に『原作に合わせて描け』 とゴネだし、最終的に修正不可能になったため、打ち切りになったという話です」(マンガ編集者C氏)

 伊藤氏は相当な落ち込みようで、マンガ版最終巻のあとがきに「この巻の2回目から急遽プロット&ネームチェック頂いております 佐藤先生お手数おかけしました」というメッセージを残している。“急遽”の一言に、伊藤氏の怨念が感じられるが……。

 なお佐藤氏は、10年にアニメ化された『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』【5】の原作も手がけているが、こちらは遅筆により原作が書けず、休載のままとなっている。佐藤氏の遅筆はゲームデザイナー時代から常習的で、ファンの間では『HUNTER×HUNTER』の作者・冨樫義博氏と並んで「もうあきらめたけど、早く続き描けよな……」と、生温かく作品の続きが待たれる作家となっている。


■「人気作家は逃せない」版元の思惑に激怒


 同様にマンガ家自身が物語を描けなくなって、やむなく休載に至るケースもある。例えば矢沢あいの『NANA』(集英社)は作者が病気療養のため続きが中断したとされているほか、87年から連載されている『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』(集英社)や、89年から続く『ベルセルク』(白泉社)は、いまだに休載と再開を繰り返している。

「『BASTARD!!』と『ベルセルク』に関しては、掲載誌の看板作品であるという重圧もマンガ家にのしかかっているというのがある。『BASTARD!!』は『少年ジャンプ』から『少年ジャンプ増刊』、そして『ウルトラジャンプ』を転々として連載がなされており、特に『ウルトラジャンプ』に主だった作品がなく、部数が急激に減少していた時期を支えた作品。一方の『ベルセルク』も『ヤングアニマル』(白泉社)という若干マイナーなマンガ誌の中で、世間一般に知られる作品となっている。もちろん、どちらも物語が壮大であるという点もありますが、それ以上に編集部の『絶対続けさせる』という期待も大きいでしょう」(前出マンガ編集者C氏)

 確かに雑誌の売り上げが減少し単行本の売り上げに頼る昨今のマンガ誌業界において、人気作品の引き延ばしはビジネス上の重要な戦略となっている。

 BL出身のマンガ家・中村明日美子氏はこの引き延ばし戦略の結果、中村氏が 「二度といっしょに仕事をしない」と漏らす事態になっている作品があるという。

「中村氏は、本当はその作品を1巻で終わらせるつもりで描いていたが、1巻が売れたため担当編集が物語を引き延ばそうとし、その後休載した。実際一時は、 病気療養で他誌の連載もすべて休載したが、他社の作品が再開した今でも、同作だけは再開されていないんです」(マンガ編集者D氏)

 この作品が、どうやらの相撲の呼出しに焦点を当てた『呼出し一』【6】だと言われている。

 編集者や、マンガ家と原作者のこうしたトラブルによるものだけでなく、時には作品の内容やマンガ家本人の犯罪が社会問題になり、打ち切りとなるケースもよくある。

 まずはマンガ家が犯罪を犯して休載となった例で必ず挙がる『世紀末リーダー伝たけし!』(集英社)の島袋光年氏が、02年に未成年との援助交際で打ち切りになったほか、04年には山本英夫氏が大麻取締法違反で執行猶予判決を受け「ビックコミックスピリッツ」(小学館)に連載中だった『ホムンクルス』が中断した。最近だと“東日本大震災”の影響で打ち切りとなった作品の例がいくつかある。例えば井上智徳の『COPPELION』【7】は、「お台場にある原子力発電所がメルトダウンして、特殊部隊が救助に向かう」という設定が、震災の影響で中止に。また、暴力団のシノギと抗争を描く『白竜LEGEND』(日本文芸社)は、ちょうど原発の下請け労働に関する内容を連載中であったため休載となった。

「これらは、反原発的な内容に対して会社上層部からの指示があったわけではないようです。『白竜』の場合は、掲載誌である『漫画ゴラク』の読者層がこうした下請けの労働者だったため、そこに配慮して長期の休載となった。今は別のテーマで連載をしています」(前出マンガ編集者C氏)

 また、版元が規制する“キチガイ”などの表現を多用し、集英社の法務部と争った結果、10年に打ち切りとなった『銃夢 LastOrder』【8】は、作品の内容に対してセリフの社会性の是非が問われた(現在は講談社に移籍して再開)。

 有害図書指定を受けて、90年に打ち切りとなった遊人『ANGEL』【9】も、そのひとつ。当時を知る編集者が状況を語る。

「この時期、有害図書論争の盛り上がりで、エロ同人出身の遊人氏がやり玉に上がり、世間の圧力に屈した、小学館上層部からの業務命令で打ち切りとなった。編集部はこの結果に猛反発し、編集長をはじめ3分の2以上の編集者が退職届を用意して、食い下がったようです。だけど、結果的に当時叫ばれた『有害コミック問題』の一因とされ、社会問題になってしまった。当時幼稚園に通っている子どもがいた作者の遊人氏のほうから『子どものことを考えて、とりあえずこの連載はやめさせて欲しい』と申し出があり、打ち切りになった。もしあのとき編集長以下多数の編集者が辞めていたら、雑誌の発行が止まることになった」(前出マンガ編集者B氏)

 手塩にかけた作品の打ち切りは、当然編集者にとっても身を切る思い。挑戦した表現や内容の作品を掲載していた同作の掲載誌「ヤングサンデー」では、突然の打ち切りの際には、こうした”熱い”内幕もあったようだ。


■あの名作をもう一度!復活したあの作品


 なお『ANGEL』は現在、「漫画ゴラク」で続編が連載されている。さまざまな理由で、突如打ち切りとなる作品がある中で、なんらかの和解をもって、作品が復活するケースもある。

「91年〜97年まで「少年マガジン」で連載していた『特攻の拓』(講談社)も、まだまだ人気絶頂の頃に打ち切りとなり、読者の間で話題になった。その裏には原作の佐木飛朗斗氏と作画の所十三氏が、連載を続けていく中で金銭面などの確執があった。その後和解し、11年4月『月刊ヤングマガジン』(講談社)で『疾風伝説 特攻の拓 外伝 〜Early Day’s〜』【10】として再開している。落ち目となっていた所氏を、佐木氏を和解させて、もう一度”拓”で復活させようとしたようだ」

 実際、所氏のブログにも「佐木さんが”所十三を21世紀にもう一度輝かせるために……と、この“やりにくいマンガ家”に声をかけてくれた」と綴られている。

 このほか原作者の勝鹿北星氏が全然原作を書いていないと訴え、クレジットを載せるか載せないかで揉めたまま、重版されなくなっていた浦沢直樹の『マスターキートン』【11】も最近新装版が発売されている。

 多数の読者を抱える人気マンガの突然の打ち切りは、読者にとって悲しいだけでなく、出版社にとってはドル箱を失うことにもなる。先行き不安なマンガ業界で、こうした事態は絶対に避けたいところだ。これらの打ち切り名作が復活することを切に願うばかりだ。
(文/黒崎さとし)



【1】『どげせん』
企画・全面協力:板垣恵介、作画:RIN/日本文芸社(11年)/620円
毎回さまざまな苦難に対してすべて“土下座”で解決する。このテーマでいつまで続くか見ものだったが……。

【2】『新・土下座伝説 謝男(シャーマン)』
板垣恵介/日本文芸社(11年〜)/単行本未発売
板垣氏があらためて“謝罪”をテーマに開始。何がなんでも謝って退かせる、という姿勢が、力技な部分を感じる。

【3】『バキ外伝 疵面』
企画:板垣恵介 、作画:山内雪奈生/秋田書店(05年)/580円
『グラップラー刃牙』の外伝として連載された作品。本編で刃牙と死闘を繰り広げた花山組二代目組長の花山薫が主人公。格闘の素人ながら、圧倒的なパワーで闘う姿が熱い。

【4】『皇国の守護者』
原作:佐藤大輔、作画:伊藤悠/集英社(05年)/620円
圧倒的な「帝国」の侵略に対して、サーベルタイガー部隊を操る将校・新城直衛中尉が、皇国軍を撤退させるため、智謀を張り巡らした戦略で敵を欺き、翻弄し続ける展開が見事な傑作。

【5】『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』
原作:佐藤大輔、作画:佐藤ショウジ/富士見書房(07年〜)/609円
ゾンビの攻撃とお色気が交錯するパニックモノ。全寮制私立高校藤美学園に、突如“生ける屍”が現れ、噛まれた教師から徐々に伝染していく……。

【6】『呼出し一』
中村明日美子/講談社(10年)/590円
BL同人出身の中村明日美子がこよなく愛するという相撲の呼び出しを、描いた作品。明日美子さんファンの腐女子たちに、相撲界のBL同人出身の中村明日美子がこよなく愛するという相撲の呼び出しを、描いた作品。明日美子さんファンの腐女子たちに、相撲界の新たな魅力を伝えて、人気を博した。な魅力を伝えて、人気を博した。

【7】『COPPELION』
井上智徳/講談社(08年〜)/580円
「コッペリオン」と呼ばれる特殊能力者の活躍を描いたSFアクション。政治に対する風刺描写があり、東日本大震災当時、原発がメルトダウンするという設定に配慮し、打ち切りに。現在は移籍して再開中。

【8】『銃夢 LastOrder』
木城ゆきと/講談社(11年〜)/980円
SFアクション『銃夢』の続編。すべてを支配する空中都市ザレムと、生き残るわずかな人類……という世界観の中で、サイボーグ少女ガリィが、さまざまな困難や敵と立ち向かっていく。

【9】『ANGEL 完全版』
遊人/宙出版(07年)/絶版
高校生、熱海康介が多くの女性と欲望のままSEXするストーリーギャグマンガ。一部の自治体で有害図書指定を受けるほど過激な性描写で、当時の青年誌読者の股間を熱くした。アダルトゲーム化もされた。

【10】『疾風伝説 特攻の拓 外伝〜Early Day’s〜』
原作:佐木飛朗斗、作画:所十三/講談社(11年〜)/560円
「週刊少年マガジン」の一時代を築いたヤンキーマンガの外伝。「獏羅天」の天羽時貞が、事故死する前の物語。「!?」をでかでかと描く描写は健在。

【11】『マスターキートン』
脚本:勝鹿北星、長崎尚志、作画:浦沢直樹/小学館(11年)/1300円
元SAS教官が、数々の危険な目に遭いつつも解決していくドラマ。和解・復活後の完全版には、勝鹿氏だけでなく、長崎氏の名前も記されている。

最終更新:2012年12月30日(日)20時6分

サイゾー

 

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