デュボワ対位法和訳(2)

Theodore Dubois - Traite de contrepoint et de fugue
テオドール・デュボワ - 対位法とフーガの論文




p.73
第2部

模倣

 ある声部で提示されたモチーフを、任意の音程関係で、ある時間を置いて、別の声部で複製することを模倣という。
 提示される声部を先行句、複製の声部を追行句という。

 追行句は必ずしも完全な形で先行句に応答するわけではない。またそれ自身が今度は先行句となることができる。

先行句_ 自由な部分...... 追行句_ 先行句_ 自由な部分......
  追行句_  先行句_ 自由な部分......   追行句_

 作られる音程が提示されたものと正確に同じとき、
つまり例えば長3度を長3度で、短2度で短2度などと応答するとき、模倣は正規である。
一方、短2度を長2度などと応答するように音程関係が正確ではないとき、
模倣は不正規である。

模倣にはいくつか種類がある。
 1. 順行による模倣 p.73
 2. 反行による模倣 p.76
 3. 反逆行による模倣 p.77
 4. 拡大模倣 p.78
 5. 縮小模倣 p.79
 6. 強勢の逆転した模倣 p.79
 7. 遮断模倣 p.79
 8. 断続的模倣 p.80
 9. カノン的模倣 p.80

ひょっとすると他のやり方もあるかもしれないが、
少なくともこれらは最も重要で最もよく使われるものである。
使われる様式は二重合唱の対位法のそれである。


p.74
1. 順行による模倣、2声
この模倣はユニゾンや上下あらゆる音程や8度で実施できる。


ユニゾン

2度上

2度下

3度上

3度下

4度上


p.75
4度下

5度上

5度下

6度上

6度下

7度上

7度下

8度


p.76

ユニゾン、上下それぞれの音程、8度で模倣を作れ。
上の例が手本になるだろう。


2. 反行による模倣、2声
 この模倣は、以前述べたように、音程関係が厳密に同じであるかそうでないかに従って、
正規・不正規である。
 これらの模倣の実施の補助として、反行させた音域の表をガイドとして作り、
先行句と追行句が作る関係を示す。

 反行による正規模倣のための配列

 半音 半音



 短調における同じ模倣のための配列

 半音 半音


 反行による不正規模倣のための配列(長短両調)

 半音 半音 半音 半音

p.77

(1) この模倣実施では、制限を緩めて、声部の通常の音域を時々越えてよい。

 同じ模倣のための別の配列(長短両調)

 半音 半音 半音 半音 半音 半音



課題

 ここから2声の模倣の終わりまで、作業がどんなものか知るために、
それぞれの類について1回だけ実施すれば十分だ。
それはかなり我慢のいる作業であり、単に音楽的な作業の組み合わせである。
 しかし、いくつかの作曲の中で、慎重に使われ目立った特徴的なテーマの役割に置かれるような形で、
それらの素材の巧みな使用を見つけるかもしれない。


3. 反逆行による模倣、2声
 上述のすべてはこの模倣に適用される。この模倣は小節ごとでも楽節ごとでも行える。
最終音から始めて最初の音まで、反行でさかのぼって、フレーズやフレーズ断片を真似る。
次の例でその仕組みがはっきり理解できるだろう。



p.78
1小節ごとの反逆行による模倣(正規)の例


同じ模倣(不正規)の例


楽節ごとの反逆行による模倣(正規)の例


同じ模倣(不正規)の例


 前述したような逆行による模倣は反行だけだとは限らない。
 並行による逆行模倣は扱いがそれほど難しくはないし、あらゆる音程関係で実施できるだろう。
 このテクスチャを生徒に示すためにさらに例1つだけを見せれば十分だろう。

1小節ごとの並逆行による模倣(不正規)


課題
 示されたように、反逆行による模倣の種類それぞれについて1つずつ例を作れ。
またそれほど難しくはないが、生徒は並逆行についても同様に実施してもよろしい。


4. 拡大模倣
 提示声部のそれぞれの音価を拡大することでこの模倣は作られる。



p.79
5. 縮小模倣
 提示声部のそれぞれの音価を縮小することでこの模倣は作られる。


先行句(1)  追行句(1)  先行句(2)
      追行句(2)

6. 強勢の逆転した模倣
 この模倣は、強拍にあたる音に対して
弱拍にあたる音によって追行句が応じることで作られる。



7. 遮断模倣
 この模倣では、先行句のすべての音が、同じ長さの休符によって遮られる。



p.80
8. 断続的模倣
 この模倣は、この第2部のはじめですでに論じられたが、すなわち
追行句が先行句の一部だけ応答する。また代わりにそれ自身が先行句となることさえできる。
 P.73で与えた例を見なさい。また次のケルビーニによる2つの例も加えうる。

(1)これはちょっとした不注意だろう。なお2つの和音(ファの和音とレの和音)を想定していると説明できるかもしれない。

9. カノン的模倣
 カノン的模倣は終わりまで中断なく継続される模倣以外の何物でもない。
終わりから始めに常に戻るような連結によって無限に継続することさえできる。
このような模倣を一般的にカノンと言う。
 カノン的模倣は、終止線で終わるなら有限、終わらずにまた始めるなら無限である。
第2部のはじめに例として与えられた、あらゆる音程の模倣は、実際のところ有限カノン的模倣である。
新しい手本をここで与えるのは不必要だろう。無限カノン的模倣の組み合わせを1つ示しておけば十分だろう。

無限カノン的模倣の例

課題

以下の模倣をそれぞれ1つずつ作れ: 拡大、縮小、強勢逆転、遮断、断続的、無限カノン。
もし必要であれば、生徒は、これら様々な組み合わせに対して書法が柔軟で熟練するまで、
課題の数を増やしてもよい。


p.81
3声以上の模倣
たった今我々が学んだすべての類の模倣がより多くの声部をもって使われているのを見かけるかもしれない。
いままで見てきたように、大部分は組み合わせの面白さをほとんどもたらさない。
生徒は課題をこなせるしそうすべきだけどね(先述のものはこの努力の要素を提供している)。
しかし我々はここで真に音楽的興味を示す主要な模倣を扱うことに集中するだろう。その模倣とはすなわち:
 1. 3声、定旋律に対して2声の模倣
 2. 3声、3声によるカノン的模倣 (つまり定旋律なしで)
 3. 4声、定旋律に対して2声の模倣と自由な1声によって
 4. 4声、定旋律に対して3声の模倣
 5. 4声、4声によるカノン的模倣
 6. 5・6・7・8声、定旋律ありorなし、全声部が模倣or自由な声部をいくつか混ぜて

 好奇心として、この章の終りで、
ケルビーニの論文から抜粋した声と二重合唱の声部逆転・反行模倣の正規対位法を見ることができる。
組み合わせの芸術でどこまで遠くに行けるのかわかるだろう。
しかしまたそのような音楽が耳のためというより目のために作られたとも思うだろう。
 定旋律を含むすべての模倣を作るために、私はこの種の作曲にはもってこいのF. アゾパルディの2つのテーマをとった。
生徒も、後で与えられる課題のために使うだろう。これら2つのテーマ:

1. 3声、定旋律に対して2声の模倣

ユニゾン
(1)このような模倣を1拍目で開始するときことに対し不便はない。しかし休符で始めるのがほとんどいつも望ましい。
ありうるすべての例をここで生徒に見せているのだ。

p.82
6度下

7度下

7度上


(1)この例で、模倣をできる限り伸ばすために、遅延を形作っているこの音の反復はすばらしい効果であり完全に許される。

 前例において(+)印から、まるまる1小節の模倣中断が見てとれる。このような進行の作法は優れている。
また、2声でも記したように、それぞれの声部で先行句と追行句を作る役割を交換することができる。
これらの見解は後のすべての模倣について適用可能である。この記述は再び繰り返さない。

課題

先述の4例で使ったF. アゾパルディの2つのテーマを使って
ユニゾンで1つ、音程上下でどれか1つ、8度で1つ、模倣を作れ。


p.83
2. 3声、3声によるカノン的模倣


3. 4声、定旋律に対して2声の模倣と自由な1声によって

2度上

自由な声部


3度上

(1)自由な声部
(1)ここでやったように、自由な声部に模倣的な興趣(断片的なものでさえ)を与えられるとき、
全体では様式が少し広がった程度にしかならない。

p.84
4. 4声、定旋律に対して3声の模倣


5. 4声、4声によるカノン的模倣


p.85



6. 5・6・7・8声、全声部が模倣or自由な声部をいくつか混ぜて、定旋律ありorなし。
例は与えない。この学習ポイントに至り生徒は自力で探して見つける。

課題
生徒は前述の5つ(誤植か?)の類で実施する。
この作業に精通し簡単になるまではいくらか例を作ってみるべきだ

ケルビーニの例
声部逆転、反行、8声二重合唱の正規対位法




声部逆転、反行で応答


p.86


(1)ケルビーニはここでちょっとした実施の不注意をやっている(アルト-テノール間の2つの8度)。
なおこれはアルトとテノールを変えることで簡単に修正できる。


p.87


p.88










半音階の使用についての注意
この曲で初めて半音階の使用について気付くだろう。
それフーガでは頻繁に使われ、後の適切なときに語られる。
生徒は、半音が正確に一致した反行の配列(以前に反行の模倣で使われたものを参照せよ)を使いながら、
このような類の対位法の作曲を実施できる。


第2部 終わり


第3部