◆卓球 全日本選手権第5日(19日、東京・国立代々木競技場) 女子シングルス決勝はロンドン五輪女子団体銀メダルメンバー同士の対戦となり、福原愛(24)=ANA=が、石川佳純(19)=全農=を4―2で下し、2年連続2回目の優勝を果たした。昨年の決勝以来の直接対決で、福原は1―2から3ゲームを連取し逆転。昨年8月の右肘手術から国内復帰戦で強さを見せつけた。国際連盟推薦(世界ランク7位)で出場が内定している5月の世界選手権・個人戦(パリ)で、日本のエースとして世界に挑む。
愛ちゃんは、強く握った左拳を小刻みに振って、喜びを爆発させた。最後の一球は、石川のラケットをすり抜けるサービスエースだ。「まさか今年は優勝できるとは思ってなかったのですごくビックリ。“帰ってこられた”という気持ちでいっぱい」。右肘の復調を見極めることを最大目的にした全日本で、石川を返り討ちにしての2年連続の日本一だ。愛ちゃんは「すごくうれしい」と3歳から苦楽をともにしてきた右肘に感謝した。
1―2の劣勢を気迫で引っくり返した。「1ゲーム目を取られて勝てないかもと思ったけど、弱気にならず強気で最後の一球まで集中した」。バックとフォアの強打で、左右に揺さぶりラリーを圧倒。鋭く変化する石川のバックハンドレシーブを入魂のフォアで破り勢いを奪い返した。
昨年は競技人生20年の節目に「無冠の女王」を返上し五輪3度目のロンドンで、初メダルとなる銀を獲得。燃え尽き症候群に陥りがちな五輪翌年に、メダリストのプライドを封印して再出発を決意した。女子代表・村上恭和監督は「年賀状に決意がにじんでた。『ロンドンのメダルは忘れて次のステージに挑む』という内容だった」と明かした。
5月の世界選手権出場を最大目標に、半年の“再生計画”の第一歩を最高の形で終えた。昨年8月に手術に踏み切り、10月には「初戦で負けても全日本に出る」と覚悟。手術後から3か月でラケットを握ると、取れぬ筋肉痛、思い通りに動かぬ肘に「すごくつらかった」と悩まされた。
村上監督には「16年リオ五輪も福原がエースの可能性が高い」と期待された。苦境を乗り越え手に入れた新境地を、愛ちゃんは「すごく自信になった」とかみしめた。ロンドンから5月のパリへ。世界の舞台で再び輝くための準備は整った。
(カメラ・頓所 美代子)【下】表彰式で笑顔の福原(右)と石川