日本の外交と経済の立て直しにとって、急成長する東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力は欠くことができない柱だ。
安倍晋三首相が初めての外国訪問として、ベトナムとタイ、インドネシアに足を運んだのも、そんな問題意識があるからだろう。
これに先立ち、麻生太郎副総理・財務・金融相がミャンマー、岸田文雄外相も東南アジアの国々とオーストラリアを回った。
日本がこの地域への関与を強めようとする姿勢を、ひとまず発信できたといえよう。肝心なのは長期の戦略を描き、息長く協力を積み重ねていく努力である。
その際、いちばん大切な共通課題になるのが、台頭する中国への対応だ。中国に責任ある行動を促すため、日本とASEANが連携する意味は大きい。
ASEANではベトナムやフィリピンなどが南沙諸島の領有権をめぐり、中国と激しく対立している。それ以外の国々にも、中国軍による南シナ海での行動への懸念が広がっている。
安倍首相は今回の訪問でこうした問題を取りあげ、「国際法に基づく平和解決」を求めていく立場で一致した。
ASEANとの安全保障の協力は、南シナ海の安定を図るだけでなく、尖閣諸島への中国の攻勢をけん制するのにも役立つ。各国の海上警備力への支援など、具体策を急いでほしい。
経済面でもASEANとの協力は有望だ。各国はインフラの整備が急務になっており、日本が参画できる余地は大きい。日系企業にとって、ASEANは中国の生産拠点の有力な分散先にもなる。
安倍首相はタイやベトナムで高速鉄道や発電所などの売り込みに努めた。政府は引き続き、日本企業の進出を後押しすべきだ。
一方、東南アジアの国々やオーストラリアには日本との歴史問題があることも忘れてはなるまい。安倍首相はそうした感情にも配慮し、未来志向の関係を築いてもらいたい。
麻生太郎、安倍晋三、ASEAN、岸田文雄、ベトナム、東南アジア諸国連合
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